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低用量経口避妊薬(OC)について(速報)

日母医報 第51巻第7号NO.592(平成11年7月1日発行)

 低用量経口避妊薬(OC)が認可されるにあたり、厚生省より「医師向け情報提供資料」が出されました。本会でもこれを入手しましたので、会員諸先生にまず知っておいていただきたい部分のみを速報として、学術欄をお借りして掲載します。詳細は8月に研修ニュースを発刊する予定にしておりますのでご参照下さい。なお、研修ノート46「経口避妊薬」(平成5年2月発刊)、日母医報平成8年3月号学術欄「低用量ピル」も参考にして下さい。


問 OCが認可になりましたが、どのような種類のOCの発売が予定されていますか。また、初回服用開始日で注意すべき点はありますか。

 表に示したような種類のOCが厚生省に申請されています。しかし、これらすべてのOCが発売されるのかや、申請時の会社と販売会社が同じかどうかも、現時点でははっきりしていません。
 なお、sundayスタートピル(月経開始後最初の日曜日から服用を開始する)を処方する際には、服用開始してから1週間は他の避妊法を併用することが勧められています。

問 いつ頃発売される見通しでしょうか。

 発売開始は本年9月2日頃になるとの情報があります。しかし、すべてのOCが同時には発売されない可能性もあります。

問 初回OC処方時にはどのような検査が必要とされていますか。

 まず問診で絶対的禁忌や相対的禁忌の有無をチェックします(29項目に亘る問診のチェックリストの例が示されています)。
 問診で危険因子がないと思われる場合でも以下の検査を行います。すなわち、全身の理学的診察として血圧・身長・体重測定などの他に、特に甲状腺腫の有無、心肥大・心雑音の有無、肝腫大の有無等に注意します。同時に検尿、血液学的検査も行います。また、婦人科的検査では乳房の触診、内診等にて妊娠の有無や子宮筋腫・子宮内膜症の有無をチェックし、さらに子宮頚部細胞診を行います。性感染症(STD)検査としてはHIV、梅毒、性器ヘルペス、淋病、クラミジア感染症、尖形コンジローム、腟トリコモナス症、B型肝炎などを服用者と十分に相談して選択し、同意を得た後行うことになっています。なお、このSTD検査は必要ならパートナーに対しても行います。

問 血症の発症を防止するためには、どのような点に注意したらいいでしょうか。

 血症発生の可能性が高いハイリスク群には当然ながらOC投与を避けるべきですが、その可能性が疑われるときには血液凝固系検査をし、もし異常があれば投与を避けます。現実的に実施可能と思われる血症関連検査としては、凝固系のスクリーニングまたは総合検査として活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、プロトロンビン時間(PT)、フィブリノーゲン測定が、トロンビン生成の検査として可溶性フィブリンモノマー複合体測定(SMFC)が、凝固抑制物質としてトロンビン・アンチトロンビンV複合体(TAT)測定が、線溶系検査としてフィブリン/フィブリノーゲン分解産物(FDP)とフィブリン分解産物(Dダイマー)測定が例示されています。

問 定期的検査にはどのようなものがあり、どの位の間隔で行うとされていますか。

 服用開始1カ月後と3カ月後および以後3カ月ごとに、保健指導および服用状況のチェックと問診、血圧測定、さらに体重測定を行います。服用開始6カ月後および以後6カ月ごとには前記の他に身体的診察、婦人科的診察、乳房検診、血液学的検査、血液生化学検査、STD検査(クラミジアなど)と血液凝固系検査(血症のリスクが高いとき)を行うとされています。服用開始後1年および以後1年ごとに子宮頚部細胞診を追加します。

問 OCの絶対的禁忌と相対的禁忌には、どのような疾患が挙げられていますか。

 まず絶対的禁忌には、OCの成分に対して過敏性素因がある女性、エストロゲン依存性腫瘍や、子宮頚がんおよびその疑いのある患者など17項目が、相対的禁忌には40歳以上の女性、喫煙者など12項目が列挙されています。

問 OC処方時、服用希望者に説明すべき内容にはどのようなものがありますか。

 まずOCはSTDを予防するものではなく、STD予防のためにはコンドーム使用が有効であることをよく説明し、さらに定期的な検査の必要性を説明して検査を受けるよう勧めることとなっています。
 次いで、OCの副作用と副効用並びにOCの正しい服用法について説明し、さらにOCを中止すべきとき、服用を忘れたとき、他の薬剤と併用するとき、下痢や嘔吐が起きたときなどの対処法について説明します。
 当然ながら、OC服用時に起きる種々の症状(悪心、嘔吐、頭痛、不正性器出血、乳房緊満、体重増加等)や消退出血が発来しない場合の注意等についても話します。

問 OCを処方する際には服用希望者からインフォームド・コンセントを得る必要がありますか。

 「医師向け情報提供資料」を読む限りにおいては、インフォームド・コンセントは義務付けられてはいません(前述のように特にSTD検査を行う際には必要です)。

問 OC処方の間隔・期間に関して何か指示されていますか。

 OCを服用していても妊娠する可能性があること、また副作用を早期に発見して重篤な合併症を予防するためにも、初回の処方は1カ月分、次回は2カ月分、それ以降は3カ月ごととすることが望ましいとされています。

問 OCはどの位の値段になると予想されていますか。

 OCは要指示薬であり、医師の処方箋が必要です。しかし、保険には収載されませんので自費であり、したがって初診・再診料、診察、検査等すべて自費になります。
 いわゆる「薬価」として「1シート当たりいくら」という形式で希望者より徴収する場合には、薬剤そのものの値段ばかりではなく、われわれ専門医の技術料も含まれていると解釈すべきと考えます(私見)。

問 厚生省より示された「低用量経口避妊薬(OC)の医師向け情報提供資料」は、どのようにしたら読むことができますか。また、服用希望者に配布する資料はありませんか。

 「低用量経口避妊薬(OC)の医師向け情報提供資料」は、インターネットの本会ホームページで読むことが可能です。なお、この資料はOCを処方する医師には製薬メーカーを通して、発売時に配布される予定になっています。
 また、医師向けの資料以外には、「服用者向け情報提供資料」(それぞれの薬剤に関するいわゆる添付文書)とともに、Q&A形式(54項目)でできているその「解説編」が処方する医師に配布され、医師はそれらを服用希望者に渡して、それを用いて服用希望者に説明するよう勧められています。

   (予防医学・介護担当常務理事 田辺 清男)

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