子宮内膜症について教えてください

子宮内膜症について教えてください

 子宮内膜症は、子宮内膜あるいはその類似組織が子宮外で発育・増殖する疾患です。本来は子宮内腔に存在するはずの内膜組織が、子宮外の骨盤腔などで増殖・浸潤し、周囲組織と強固な癒着を形成します。 子宮内膜症の病変としては、腹膜病変、卵巣チョコレート囊胞、深部子宮内膜症 などがあります。また希少部位子宮内膜症という、胸腔、尿管・膀胱、腸管および臍などの性器外にできる内膜症もあります。 主な症状は、下腹痛、腰痛などの月経時疼痛であり、およそ9 割の患者さんに認められます。特徴として続発性であること、年齢とともに増悪傾向を示すことです。月経時以外にも腹痛や排便痛や性交痛を訴えることも多いです。また子宮内膜症患者さんの約半数が不妊症を合併し、原因不明不妊症患者さんの約50 %に内膜症が存在すると言われています。
 診断は腹腔鏡検査あるいは開腹手術による肉眼所見によって診断されますが、全事例で行われるわけではなく、日常診療では自覚症状、診察および血液や画像検査所見から総合的に診断された場合を臨床的子宮内膜症として取り扱います。 治療の目的は、①月経困難症・慢性骨盤痛の緩和、②不妊症に対する妊孕性改善、③卵巣チョコレート囊胞の破裂、感染、癌化の予防です。 治療方法は、治療目的、病巣部位(特に卵巣チョコレート囊胞の有無や大きさ)、年齢、挙児希望の有無、妊孕性温存の要否などで決定されます。
 現在用いられている治療方法は、①対症療法:鎮痛薬や漢方薬、②内分泌療法:ピル、黄体ホルモン、LNG-IUS(子宮内放出システム)、GnRH アゴニストなど、③手術療法:卵巣チョコレート囊胞摘出術、付属器摘出術、子宮内膜症病巣摘出、癒着剝離術などがあり、近年は大部分が腹腔鏡手術で行われています。