38.ジャンプアップ14(微妙なCTG)

 微妙なCTGをご覧いただく(図説CTGテキスト アドバンス,メジカルビュー社から引用)。CTGマイスターへの登竜門だ。

1.判読してください(図1)

 28歳、3妊2産。妊娠39週、上段は破水感と腹緊を訴え、来院した際のCTGである。子宮口は1cm開大で、既に破水している。

 下段はそれから約3時間を経過した時点のCTGである。

 判読してください。

2.判読結果(図2)

 上段の入院時のものは、30秒未満の経過で急速に心拍数が低下しているが、回復に時間を要し、軽度遷延一過性徐脈と言うことになる(レベル3)。

 連続して装着されたCTGでは3時間の間、下段のような波形が断続的に出現した。やはり急速に心拍数が低下し、徐脈前後に頻脈(ショルダー↓)があり、典型的な軽度変動一過性徐脈である(レベル2)。上段の波形を含め、原因は臍帯圧迫と推察される。

 助産師は医師に連絡し、監視の強化と保存的処置(体位変換と補液)を実施していた。連絡を受けた産婦人科医師は、原因検索のため超音波検査を行ったが、羊水量は正常で、臍帯に巻絡や器質的異常は認めなかった。

3.一過性徐脈が持続する(図3)

 その後、図1、2の下段のような軽度変動一過性徐脈が散発していたが、5時間(入院から8時間)を経過した時点で、少し変化が出た(図3)。助産師の内診では子宮口は4cm開大で、SP+1。陣痛は弱いが、少しずつ分娩が進行しだしたようである。

 実はこの波形、私にはあまり深刻に見えないのだが、なぜであろう。

4.深刻に見えないレベル4(図4)

 まず、基本的な判読をしよう。心拍数基線は150bpmで正常脈、基線細変動は10bpmで正常範囲、軽度(左)と高度(右)遷延一過性徐脈が認められる(レベル4)。子宮収縮と同期せず、原因は、やはり、臍帯圧迫と推察される。

 不安な要因は2つ。レベル4の波形が出現いるのに静観できるのかという点と、まだ、陣痛が本格的にならないうちから、軽い収縮でこのような臍帯圧迫が出現している点である。

 圧変化による一過性徐脈が明らかであっても、程度や頻度により児は低酸素血症に陥ることがある。そうした場合は、躊躇なく急速遂娩を考慮すべきである。

 では、このケースはどうであろう。見極めのひとつのポイントはイベント前後の心拍数基線と基線細変動の変化である(↑)。低酸素状態あるいは低酸素血症では、心拍数が増加するか、基線細変動が増加、ないしは減少する。しかし、このCTGではイベント前後を比較しても大きな変化がない。

5.実際の経過

 現場の医師は急速遂娩を検討したが、分娩は速やかに進行し、10分後に自然分娩で、3210gの女児を出産した。アプガースコアー1分8点、5分9点、pH 7.218で、羊水、臍帯、胎盤に異常所見は認めなかった。

 全分娩経過を通じ、圧変化による変動一過性徐脈が散発したケースだが、基線細変動は常に正常範囲を推移し、低酸素状態を想起する所見は認めなかった。経過観察とした対応に、異論はない。分娩進行は順調で、明らかな臍帯因子もない、なんとも「微妙」なCTGであった。