30.ジャンプアップ6(胎児機能評価)

1. 判読してください(図1)

 41歳、1妊0産。妊娠41週。予定日を経過し、過期妊娠予防のために入院した。吸湿性頸管拡張材を使用した翌日のNSTである。心拍数基線は120bpmで、基線細変動は保たれているが、朝から2時間程度この状態が続いている。
 胎動の自覚はわずかにあるが、一過性頻脈がない。NSTでは心拍数波形のレベル分類は用いず、non-reactive patternとなる。

2. 胎児機能評価(図2)

 こうした場合、まず、胎児機能評価である。
 超音波を交えたBiophysical Profile Score(BPS)が標準的であろうか。胎動をビジュアル化し、胎児循環動態の指標に羊水量を確認する点はすぐれた検査だが、一方で、精度に疑問の声もある。
 超音波パルスドプラ法による胎児の血流計測が行われることもある。血流計測では慢性的な低酸素状態(低酸素血症)の存在を確認する。一般的には、臍帯動脈と中大脳動脈の血管抵抗(Resistance Indexなど)から、血流再分配(脳血管抵抗減弱と末梢血管抵抗増加)を判断する。また、下大静脈波形、静脈管、臍帯静脈など静脈系の波形から、うっ血性心不全などを評価する。BPS同様、こちらにも再現性の低さという問題がある。

3. 胎児評価ツールの組合せ(図3)

 これら胎児機能評価ツールの組合せについて、私の考え方の道筋を示す。
 妊娠週数にもよるが、基本的には胎児心拍数モニターが優先される。次がBPSである。これらで、判断がつく場合はそのまま急速遂娩となるが、CTGレベル2、3、あるいはBPS8、6あたりは悩ましい。
 こうした場合、血流計測を付加し胎児評価に厚みを増すようにしている。わずかな血流再分配では経過を見ることもあるが、静脈系にまで影響が及ぶ場合は予断を許さない。

4. CST(図4)

 そして、もう一つの方法が、contraction stress test(CST)である。ただし前述の胎児評価検査とは少し用途が違う。CSTは経腟分娩に耐えるだけの体力が、胎児や胎盤(胎児胎盤系)に残されているかどうかを問うもので、純粋な胎児評価とは異なる。
 方法は簡単である。詳細は成書やガイドラインを参照していただきたいが、通常の分娩誘発に使用するオキシトシン開始量の半量程度からスタートすれば良い。
 今回提示した症例は、分娩誘発中であり、CSTが採用された。そして、思わぬ結果となった。オキシトシンにより発生した子宮収縮の半数以上に遅発一過性徐脈が出現し、CST陽性と判断されたのだ。本人、家族に経腟分娩困難である旨ICの後、帝王切開が行われた。

 評価法の使い分け、ご理解いただけたであろうか。