27. 癒着胎盤

胎盤は、子宮腔内の脱落膜(子宮内膜)の上に着床した受精卵より形成される絨毛膜の一部が厚く成長することでつくられる。この時、脱落膜は絨毛の子宮筋層内への侵入を適度に食い止める働きをする。何らかの原因で子宮の脱落膜が欠損しているとき(子宮手術既往などが多い)、胎盤は直接子宮筋層内に侵入して癒着胎盤となる場合がある。

癒着胎盤は、子宮筋層(矢印)に胎盤が浸潤している状態であるので、それが直接超音波で描出できた場合、子宮筋層の菲薄化(▲)として描出される。しかし、実際には穿通胎盤のように程度の大きいものを除いて帝王切開前に確定診断できるのはそれほど多くない。また、癒着胎盤では脱落膜を欠くため、胎盤母体面の脱落膜領域に見られるlow echoicな線状のclear zoneが描出できない場合は、癒着胎盤との関連があることが知られている。しかし、そもそも薄いこの所見の判断自体が難しい場合も少なくない。

癒着胎盤は、子宮手術の既往の無い妊婦で分娩前に診断されることは極めて少ないため、全妊婦に対してこれらの所見を確認するのは現実的ではない。分娩前に癒着胎盤が疑われるのは、子宮手術の既往例がほとんどであることから、そのような既往歴がある場合、前回帝王切開の創部や、子宮筋腫核出術の創部を詳しく、癒着胎盤がないか精査する。前回帝王切開創部上に付着する胎盤では、その3割に癒着胎盤がある。

MRI検査においても、超音波検査と同様の癒着胎盤を疑う所見を描出できる場合があるが、診断精度は後壁付着で超音波検査では描出しづらい場合を除いて、超音波検査と変わらない。いずれにせよ分娩前に確定診断には至らない場合が多いので、簡便性を考慮すれば、超音波での診断で十分である。

前置胎盤は、脱落膜の薄い子宮下部に胎盤が付着しているため、癒着胎盤になりやすい(前置癒着胎盤)。とくに既往帝王切開の回数が多いほどその可能性は高い。前置胎盤では、癒着胎盤を疑う何らかの超音波異常所見が無かった場合でも、癒着胎盤の合併の可能性を念頭において検査、手術に臨む。