23. ステップアップ11(分娩監視の実際)

分娩監視装置の使用法(図1) 産婦人科診療ガイドライン産科編2014では、妊婦が陣痛で入院した際のCTG装着を下記のように推奨している。推奨レベルはBだが、これらはminimum requirementと認識していただきたい。

  • 分娩第1期には分娩監視装置を一定時間(20分以上)使用する。
  • 正常胎児心拍数パターンであれば、その後6時間は間欠的心拍数聴取(15-90分ごと)でもよい。

 ローリスク妊婦では入院時、20分間以上モニターを着けて異常なければ、その後6時間程度は間欠的児心拍聴取でよいことになる。これは、連続モニターは周産期死亡を減少させるが、帝王切開率や器械分娩を増加させ、周産期死亡率全体に影響を与えないと報告されているためである。モニター装着は分娩中の妊婦の行動を制限し、決して快適なものではない。しかし、状況に応じCTGの有益性が、妊婦の快適性を上回ることもある。

2.連続モニタリングが必要になる時(図2)

 間欠的聴取で心拍数に異常(徐脈・頻脈)がある場合は、当たり前だが、破水時や羊水の性状に異常がある時も、連続モニターが必要になる。

 また、母体や胎児に合併症がある場合は連続モニタリングが求められる。ガイドラインでは、母体側要因として、糖尿病合併、高血圧症候群などに加え、脳性麻痺、子癇などの既往症や子宮切開手術の既往をあげている。同様に胎児側要因として体位異常、胎児発育不全、多胎妊娠、低置胎盤があげられる。

 快適な分娩は安全な分娩でなくてはならない。上述のサインを見逃すと、極めて深刻な結果を招く恐れがある。対象者の背景を見極め、連続モニタリングの必要性を検討していただきたい。

3.何を疑う?(図3)

 羊水混濁は10%以上で観察され、38週以前では少なく、42週を越えると20-30%に増加するとされる。かつて、羊水混濁は胎児機能不全の兆候とされていたが、生理的な成熟や、臍帯圧迫による迷走神経反射に関連すると推察されている。迷走神経刺激は腸管の蠕動運動を亢進させる。いずれにしろ、羊水混濁を見た時は、CTGで確認しておきたい。

 血性羊水は重篤な疾患のサインである。もちろん、分娩中に頸管や腟壁に裂傷などが生じ、羊水に血液が混ざることがある。しかし、そうした産道異常がない場合、常位胎盤早期剥離、子宮破裂、臍帯断裂など緊急対応を要する疾患が疑われ、モニター装着はもとより、早急な対応が求められる。頻度から言えば、常位胎盤早期剥離を疑うべきだ。

 羊水混濁は圧変化に伴い発生し、血性羊水では常位胎盤早期剥離を想起しなければならない