第2回 オンライン診療の定義、分類(種類)、目的

 前回は、実際の外来でよく遭遇すると思われる、機能性月経困難症のLEP投薬の再来患者さんをモデルに、オンライン診療をおこなうには何が必要かということを記載した。今回からは、そのために実際に必要な知識や機器について解説する。

 まずは、オンライン診療の定義についてである。主に厚労省のオンライン診療の適切な実施に関する指針(https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf)5ページから10ページ、総務省の遠隔医療モデル参考書(https://www.soumu.go.jp/main_content/000688635.pdf)の4ページから10ページ、の記載や、厚労省の研修だと「オンライン診療の基本的理解とオンライン診療に関する諸制度」のところででてくる。そちらを成書として、こちらをチラチラみていただければ幸いである。また、オンライン診療はあくまでも医学的な観点から分類した定義であり、保険診療かそうでないかを問うものではない。

1.オンライン診療の定義

 オンライン診療とは、遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムで行う行為をいう。遠隔医療とは、情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為、と定義されている。つまりオンライン診療を規定するのは、情報通信機器の使用、医師患者間、リアルタイム、個別の医学的判断に基づく診断治療の4つの要件ということになる(図1)。また、オンライン診療は、視覚・聴覚情報を必要とするため、ビデオ通話が必須となる。つまり普段の対面診療と同じことをICT技術により非対面で行うのがオンライン診療ということである。

2.オンライン診療、遠隔医療の種類、分類

 遠隔医療の中でも、医師-患者以外の間で行われるものや、医師-患者間の間でも診療行為をリアルタイムで行っていないものはオンライン診療ではないということになる。医師-患者間以外の間の遠隔医療とは、医療従事者(医師とは限らない)間で行われるものである。基本的には医師-医師間のD to D(Doctor to Doctor)で、情報通信機器を通じて診療上の相談(いわゆるコンサルト)を行う診療支援、病理画像や放射線画像のデータを送って診断を依頼するような診断支援、カンファレンスや講義などを情報通信機器により行う指導・教育がこれにあたる。なお、医師が患者を診療していない状態で看護師等を遠隔で支援・指導する場合であれば、D to N(Doctor to Nurse)となり、看護師間であればN to N(Nurse to Nurse)となる。

 リアルタイムで診察して疑われる疾患等を判断して疾患名を列挙し、受診すべき診療科を選択選択するなど、一定の医学的判断を伝達診断を行うするものはオンライン受診勧奨と定義される。オンライン受診勧奨の場合もオンライン診療同様、ビデオ通話が必須である。

 また、患者さんと情報通信機器を通じて、必ずしもリアルタイムではなく一般的な助言をするのが遠隔健康医療相談である。遠隔健康医療相談は医師が患者個人の心身の状態に応じた医学的助言を行う場合と、医師以外の医療従事者によって一般的な医学的な情報の提供や受診勧奨のみを行う場合とに分類され、いずれもオンライン診療の適切な実施に関する指針(厚労省)の適用外である。もちろん指針の適用とならないから、何をしてもよいというわけではないが、相談者に対して診断などの医学的判断を伴う行為が含まれないよう、指針を参考にし、オンライン診療やオンライン受診勧奨との線引きを把握することが望ましい。

 オンライン診療時に医療従事者が介在する場合がある。主治医等の医師といる場合はD to P with D (Doctor to Patient with Doctor)、患者が看護師等といる場合のオンライン診療であるD to P with N(Doctor to Patient with Nurse)も存在するが、専門医へのコンサルトや定期的な訪問診療を想定したものであり、本稿では存在を紹介するのみにとどめる。

オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚労省)には、それぞれで実施可能な行為が添付表(同指針より引用)のとおり示されている。

3.オンライン診療の目的

 オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚労省)では、オンライン診療の目的を以下の3つを挙げている

  1. 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと
  2. 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やすこと
  3. 患者が治療に能動的に参画することにより治療の効果を最大化すること

 これらは、医療法第1条の「医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与すること」に資するものとしている。
 また、遠隔医療モデル参考書では「ICT を活用し、医師と患者が離れた場所でありながら、患者の状態を把握し、診療を行うものであり、患者の外来通院あるいは医師の訪問診療など、対面による診療行為と適切に組み合わせながら、これを補完するもの」と位置付けている。オンライン診療を行う際は、これらの基本理念に基づいて、診療を行うことが求められるが、医師の持つ姿勢としては対面診療と大きく異なるものではない。