【第5回】15.早期母子接触

*各項目推奨のレベルは以下の通りです。

  1. 科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
  2. 科学的根拠があり、行うよう勧められる。
  3. 科学的根拠はないが、行うよう勧められる。

**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的
根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)に基
づいており、同研究班が発行した「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社
2013年)」を参考にしてください。

 出生後ただちにskin to skinで母子の接触をおこなうことは、母子の愛着形成に重要とされています。一方、出生直後の児の体調は不安定であり、特に突然の呼吸停止などのリスクがあるため、早期母子接触は慎重に行う必要があります。早期母子接触がお産の満足度に影響を与えるか調べました。その結果、母親が希望する形で分娩直後に児に面会すると分娩期の満足度が上がり、歩行開始後や翌日からだと、分娩後1時間以内の母子接触に比べ、有意に満足度が下がることがわかりました(図30)。

(図30)

早期母子母子接触が行われている割合は、分娩後1時間以内が8割を超えていましたが(図31)、

(図31)

分娩直後からずっと一緒、あるいは歩行開始後からずっと一緒といった分娩直後からの母子同室は33%に止まっていました(図32)。

(図32)

調査結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。

RQ: 早期母子接触の支援は?

推奨:
 出産、出生後の母子の早期接触、特に早期母子接触(skin to skin contact)は児の体温が低下せず、母の愛着形成を促進して愛着行動を増し、母親の満足感が高く、母乳育児の率を上げ授乳の期間も長くする。母子共に状態が安定している場合、少なくとも出生直後1時間以内は、児の計測も含め母子分離せずに、早期接触を支援する。【B】

 母子の早期接触は衣服を介してではなく、肌と肌の接触により行う。【B】

 母子の早期接触実施の前に、そのメリットとともに、出生直後では早期母子接触の有無にかかわらず、稀に児の疾患や未熟性により突然の呼吸停止や状態の変化を起こすことがあることなど、十分な説明を行い、理解を得ておく。【B】

  母子の早期接触の実施にあたっては、施設ごとの開始および中止の規準を作成し、それに準拠するとともに、実施中は、機械的モニタリングまたは観察項目に基づいた十分な観察を行い、母子の安全性の確保に努める。【B】