【第5回】14.母乳育児支援

*各項目推奨のレベルは以下の通りです。

  1. 科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
  2. 科学的根拠があり、行うよう勧められる。
  3. 科学的根拠はないが、行うよう勧められる。

**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的
根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)に基
づいており、同研究班が発行した「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社
2013年)」を参考にしてください。

 母乳育児は、栄養、免疫、アレルギーなどの他、母子の愛着形成に有用であると考えられ、母子双方にメリットがあるとされます。一方、母乳育児が順調に確立されないと、それが母親のストレスになることも知られています。そうしたことから、母乳育児の支援は重要ですが、実際、母親の満足度にどのように影響しているか。調べました。その結果、産後1か月の段階で母乳栄養が確立されていると満足度があがりますが、乳房トラブルがあったり、母乳量に関する不安があったりすると、満足度が下がることが分かりました(図26)。

(図26)

母乳哺育はできるだけ早く開始した方が母子の愛着形成によいとされていますが、出産当日中の開始が2/3、特に1時間以内開始が半数でした(図27)。

(図27)

また、入院中、母乳のみで足りているのは約20%であり、多くの母親が何らかの乳補足を必要としていました。補足に用いられるものは、以前は糖水が多かったのですが、現在はミルクを用いる割合が多くなっています(図28)。

(図28)

産後1か月の段階での栄養法は、母乳のみ あるいは母乳主の混合が8割以上を占め、ミルクのみの割合は2%で、減少傾向にありました(図29)。

(図29)

調査結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。

RQ: 母乳育児の支援は?

推奨:
 母乳育児の支援には、出産前からの母親への母乳育児の利点とその方法に関する情報提供と産後の母乳相談プログラムなどの継続的ケアが重要である。出産/出生直後の早期母子接触 (Skin to Skin Contact)と引き続いての授乳の開始、以後の母子同室による自律授乳、地域の子育てグループなど非医療者のピアサポートが必要である。【B】

 母親が自身の疾患や薬剤投与によって授乳できない場合にも、十分な説明と支援が必要である。そのためのシステムを、施設の授乳支援の中に組み込む。【B】

 児が他院や自院のNICUに入院し、母子分離の状態になった場合でも、母親に母乳育児を勧め、母乳分泌の維持や搾乳法、搾乳した母乳の保存および搬送方法について、説明し、サポートする。【B】