【第2回】4.家族の立会い

*各項目推奨のレベルは以下の通りです。

  1. 科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
  2. 科学的根拠があり、行うよう勧められる。
  3. 科学的根拠はないが、行うよう勧められる。

**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的
根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)に基
づいており、同研究班が発行した「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社
2013年)」を参考にしてください。

 我が国では、1960年代以降、夫立会い分娩が広まってきました。医療従事者が立ち会うことができない場合にも産婦がひとりにならないですみ、また最も身近な存在である夫が分娩という人生の大事業に一緒に取り組むということは、産婦の不安や緊張を和らげる効果に加え、その後の夫婦の人生にも大きな影響を与えると考えられます。また、最近は夫だけでなく、生まれてくる児の兄弟が立ち会う施設も増えてきており、こうしたことの妊婦満足度への影響を調べました。

           (図11)

図11に示す通り、夫立会いは妊婦満足度に影響を与えませんでした。現在では夫立会いをほとんどの施設が容認している考えられ、夫立会いは当然のことととらえる産婦が増えてきているとも考えられます。一方、上の子供の立会いは満足度を有意に上げていました。こどもの分娩立ち合いは、感染予防の観点から難しい側面がありますが、分娩の満足度を上げるには極めて有効な方法と考えられました。興味深いことに、親の立会いは満足度を有意に下げていました。親はお子さんの分娩が心配で、立ち合いを希望することがあると考えられますが、お産をする産婦側からは必ずしも歓迎されていないことがわかりました。この結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。

RQ 分娩期に医療者以外の付添い(立会い)が居るか?  

推奨
 分娩期に医療者以外の夫などによる付添いや立会分娩では、体位や産痛緩和、早期接触・授乳などのケアが多く提供され、鎮痛剤の使用など医療介入が少ない。また、分娩中の女性を独りにしないことにより満足度が上がる。
 従って、産婦が希望すれば夫や家族が、どの施設においても立ち会い分娩を受け入れ、心身共に安楽で満足な出産を母子で迎えられるよう出産環境を整えるのが望ましい。その結果、母子接触・早期授乳、1か月時の母乳哺育率にも有益である。【B】