1.チョコレート嚢胞患者を高次医療機関へ紹介するタイミング:総論

上皮性卵巣癌の40%を占める漿液性癌はp53、BRCA 1/2 遺伝子変異の合併が多く、短時間で進行がんになるため、検診は有効ではないといわれている。これをタイプ2と呼んでいる。一方、残りの40%を占める類内膜癌、明細胞癌は子宮内膜症からゆっくり癌化し、ほとんどがI期癌として発見され、タイプ1と呼ばれている。タイプ1は子宮内膜症からの発がんの可能性が指摘されており、今回は主にタイプ1について、臨床的な観点から解説する。
海外と異なり、本邦ではタイプ1、すなわち子宮内膜症からの発がんが多いため、我々産婦人科医が丹念にチョコレート嚢胞患者をフォローアップすることにより、ほとんどI期の卵巣癌として発見されるため、予後の改善が期待できる1)2)。そこで、産婦人科医としては、臨床的には以下の点に注意して経過観察することが望ましい。

1.3~6か月ごとに嚢胞のサイズを測定する。
2.嚢胞が徐々に増大したら高次医療機関に紹介する。
3.超音波診断で嚢胞内容液が黒っぽくなったら要注意。
4.サイズにかかわらず隆起性病変が出現すれば連携している病院で造影MRIを撮ってもらう。
5.経腟超音波プローブで隆起性病変が2 cmを超えたら要注意であり、高次医療機関に紹介する。
6.経腟超音波プローブで振動を与えると、新鮮な凝血塊の場合は表面に波動が見えることがある。
7.月経期間中にCA125を測定すると上昇することがあるので、採血しない。
8.癌化してもCA125が上昇しない場合があるので、CA125にばかり過信しない。
9.閉経後にも長期間通院していただくためには、内膜症のフォローのみではなく、女性ヘルスケアの観点から魅力ある診療を行う。

このシリーズではチョコレート嚢胞の癌化を見逃さないコツをシリーズで伝授いたします。

(図左)スリガラス様の内容液が見え、チョコレート嚢胞の典型例である。
(図右)壁在結節・隆起性病変が確認され、悪性が示唆される。MRIによる診断が必要である。

文献
1. Kobayashi H, Sumimoto K, Moniwa N, Imai M, Takakura K, Kuromaki T, Morioka E, Arisawa K, Terao T. Risk of developing ovarian cancer among women with ovarian endometrioma: a cohort study in Shizuoka, Japan. Int J Gynecol Cancer. 2007 Jan-Feb;17(1):37-43.
2. Kobayashi H, Sumimoto K, Kitanaka T, Yamada Y, Sado T, Sakata M, Yoshida S, Kawaguchi R, Kanayama S, Shigetomi H, Haruta S, Tsuji Y, Ueda S, Terao T. Ovarian endometrioma--risks factors of ovarian cancer development. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2008 Jun;138(2):187-93.