日産婦医会報(平成21年4月号)

岐阜県の産科医療の再生について

日本産婦人科医会医療対策・有床診療所検討委員会委員 岩砂 眞一


  全国的に産婦人科医師不足による産科医療の崩壊が始まっている。この状況の打開策を検討するにあたり、平成17〜20年のデータを収集し、それを本年度『医療と医業特集号』に掲載した。この調査から、分娩の取扱がない婦人科医師の産科医療復帰への可能性について検討を試みた。

表1 岐阜県内5地域の数値(平成19年)

  岐阜 西濃 中濃 東濃 飛騨
人口 80万人 39万人 39万人 35万人 16万人
年間出生数 8,400人 3,600人 2,100人 3,600人 1,300人
分娩取扱病院常勤医師数 40名 7名 7名 6名 5名
分娩取扱診療所常勤医師数 25名 9名 4名 9名 1名
病院常勤医師一人当たりの年間分娩取扱数 78人 68人 145人 140人 165人
診療所常勤医師一人当たりの年間分娩取扱数 195人 283人 355人 314人 302人

 人口約209万人の岐阜県は5地域からなり、平成19年の年間出生数は19,100人である。平成19年の岐阜県の全産婦人科施設は105、分娩取扱施設は59(病院22 診療所37)である。
 産婦人科常勤医師総数160名、そのうち分娩取扱常勤医師116名(病院64 診療所52)、婦人科常勤医師44名(病院5 診療所39)である。
 分娩を取扱う常勤医師数の多い地域は病院、診療所共に岐阜で、最低数は飛騨である。平成19年の病院での年間平均分娩取扱数は98.4人である。表1から岐阜と西濃のみが平均数を下回り、飛騨は常勤医師一人が取扱う分娩数が最も多く、岐阜と比べ2.1倍もの開きがあることが分かる。また診療所の年間平均分娩取扱数は246.8人で、平均数以下は岐阜のみであった。これらの数からも分かるように人口が多い地域ほど医師数も多く、一人当たりの仕事量は少ない。地方では医師数は少なく、一人の仕事量は増大している傾向にある。
 アンケート調査からは、病院医師の欠員補充は非常に困難、そして退職しても医療に係わりを持ちたいという意向があることが分かった。
 年齢より婦人科常勤医師の産科医療への復帰の可能性を検討した。分娩の取扱を行わない婦人科46施設(病院8診療所38)の常勤医師数は44名(病院5 診療所39)で、60代以上は35名と岐阜県婦人科常勤医師の80%に当たり、高齢化がかなり進んでいる。

表2 岐阜県の産科・婦人科常勤医師の年齢分布(平成19年)

    20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 90代
分娩取扱あり 病 院 4 23 16 12 7 2 0 0
診療所 0 3 17 13 12 5 2 0
分娩取扱なし 病 院 0 0 1 1 1 2 0 0
診療所 0 1 1 5 13 12 6 1

 表2から、将来を担う20代産科常勤医師は4名と少なく、逆に60代以上は28名で、これは岐阜県産科常勤医師の24%に当たることが分かった。この事実からも産科医師の増員が無い限り、今後の産科医療が益々深刻になると思われる。分娩取扱のない病院を再開に導くにあたり常勤医師2名以上の配置を条件とした場合、分娩取扱を行っていない診療所30〜60代医師の地域医療への協力が考えられる。これらの医師が分娩を休止している病院に関与できれば、分娩取扱再開の可能性が生まれる。または既に地域中核をなす分娩取扱病院の仕事量の軽減にも寄与できるのではないかと考えられる。これらを可能にするには、条件の検討と整備が必要だと思われる。

まとめ

 岐阜県の産科医療の再生について、今後の対応策として下記の事柄が考えられる。

  1.  産科医師不足が最大の問題であり、大学医学部に産婦人科医師が増え、しかも県下に留まる対策を打ち出す必要がある。

  2. 分娩取扱病院の常勤医師の定年退職年齢65歳の引き上げ、そして退職後も病院にかかわっていける対策が必要である。

  3. 中核をなす分娩取扱病院に、その地域の婦人科診療医師が産科医師として病院にかかわっていける対策が必要である。

  4. 地域住民とのコンセンサスを得、さらなる病院の集約化を検討し進める必要がある。