日産婦医会報(平成21年3月号)

生活保護妊婦の助産扶助金と助産認定施設損金の調査

日本産婦人科医会医療対策・有床診療所検討委員会委員長 小関 聡


目的

  生活保護法適応者の分娩の際、通常助産制度が適応され、出産扶助金が分娩取り扱い施設に対して支給されるが、その支給額は現状に合わず医療機関の持ち出しとなっているところが多数あるとの指摘があった。その実態について調べた。

対象と方法

 対象は本委員会委員が所属する8都府県の助産制度の指定を受けている37施設(診療所4施設、私的病院9施設、公的病院7施設、国公立病院14施設、大学病院3施設)である。
 調査は医療対策・有床診療所検討委員から各施設の責任者に直接調査用紙を送付・依頼し、日本産婦人科医会本部に回答を送る方法をとった。

結果

 指定施設の入院費用総額の平均は36.9万円(最高50万、最低28万)であった。これに対し扶助金の平均は24.0万円(最高42.0万、最低7.2万)に過ぎず、一部自治体は独自の制度を設け法定外の扶助金を出しているものの、これらを合わせた扶助金総額でも平均31.5万円(最高43万、最低12.5万)であった。37施設中22施設で平均8.3万円(最大26万、最低0.5万)の損金が発生していた(表)。

結論

 以上より生保・助産認定施設への支払いは、著しく低額に抑えられていることが明らかになった。国は妊婦の経済的負担を軽減するため、出産育児一時金の大幅引き上げと妊婦健診補助を14回分行うことになった。しかし、現時点では産科医療補償制度掛け金分の3万円の増額を決定したのみである。今後出産育児一時金の引き上げが確定すれば、その分の上乗せはなされるはずだが、それ以上の生保関係の扶助金の引き上げについては言明されておらず、依然として損金の発生は続く。現行でもその差額は徴収してよいことになっているが、表に示すごとくほとんど支払われていない。扶助金の支給には事前に生活保護の認定と妊娠の届が必要で、未認定者の飛び込み分娩の場合は支払われない(一部の自治体では事後申請を認めている)。
 出産扶助金、助産費用の引き上げに当たっては、受け入れ施設に損金を発生させないよう出産育児一時金とは異なった制度にすることと、事後認定も可とする柔軟な対応を望む。

種類
(施設数)
妊婦
健診料
入院
日数
入院
総額
法定
扶助金
法定外
扶助金
扶助金
合計
自己
負担金
損金 損金有りの
平均
診療所
4施設
4,625 6.1 356,250 235,870 8,467 242,220 7,400 106,630 142,173
    (33〜37.5) (16〜33) (0〜2) (16.5〜33) (0〜3) (0〜18) 3施設
(8.5〜18)
私的病院
9施設
4,987 6.3 384,444 251,487 79,507 330,993 14,222 39,229 70,612
    (33〜48) (12.5〜40) (0〜20.5) (19.3〜43) (0〜10) (0〜21.2) 5施設
(2.5〜21.2)
公的病院
7施設
4,164 5.9 367,571 256,230 26,070 294,829 30,000 42,743 59,840
    (32.5〜43) (17.3〜35) (0〜12.6) (22〜37) (0〜9.5) (0〜8.1) 5施設
(4.2〜8.1)
国公立病院
14施設
4,529 6.3 357,440 225,870 99,673 333,005 0 29,435 66,014
    (28〜43) (7.2〜35) (0〜24.3) (12.5〜43) 0 (-5〜12.5) 7施設
(0.5〜12.5)
大学病院
3施設
3,400 6.0 418,408 267,794 23,070 323,651 0 94,757 142,136
    (28〜50) (24〜29.6) (0〜4.6) (24〜38.9) 0 (0〜26) 2施設
(2.4〜26)
全体
37施設
4,438 6.2 369,412 239,547 70,340 314,866 61,276* 46,714 82,961
    (28〜50) (7.2〜42) (0〜24.3) (12.5〜43) (2.8〜10) (0〜26) 22施設
(0.5〜26)

*自己負担金ありの施設のみの平均値、最高値、最低値である。