日産婦医会報(平成18年04月)

産婦人科有床診療所の方向性
 

日産婦医会有床診療所検討委員会委員長 角田 隆


はじめに

 有床診療所(以下有床診)の48時間規制は、平成15年の厚労省医政局総務課長通知で、医学的に必要な期間の入院は認められたが法的には厳然と存在している。分娩の47%が有床診で行われていることを考慮すると、48時間規制は現状と大きく乖離しており、この撤廃は必然と考えられる。さらに入院基本料は病院に比べ低額なため、経営上の観点より分娩を取りやめる施設が増加している。安全性やアメニティー向上など社会的ニーズに対応するためには、入院基本料の引き上げは必須と考えられる。有床診検討委員会ではこれらの問題を解決すべく、今年度の医療法改正に向け産婦人科有床診の方向性を検討した。

有床診問題に関する議論の推移

 平成17年6月29日の厚労省社会保障審議会医療部会(以下医療部会部会長;鴨下重彦賛育会病院院長)で有床診は地域医療の一端を担っているとの見解を示したが、病床数や機能よりみた診療報酬の差別化を示唆している。7月6日に開催された日医有床診検討委員会(委員長;大道久日本大学教授)の取り決めは以下のごとくである。

  1. 人員配置に応じ病院と同等の入院基本料を求める
  2. 一人医師による自由開業医制を堅持する
  3. 医師数に対しては、診療報酬上の施設基準で対応する
  4. 安全管理や24時間対応確保のための新たな対策を考える
  5. 48時間規制を撤廃する
  6. 基準病床数に算定しない
  7. 機能類型化は法制化しない

 7月8日メディファックスは厚労省が以下のごとき検討を行っているとの記事を掲載した。

1.有床診を以下のごとく類型化する。
  1.病院並みの高機能を持つタイプ、2.一時緊急入院を目的とした従来のタイプ、3.産科、4.療養型。
2.高機能タイプは、基準病床に参入した上で48時間規制撤廃、入院基本料も引き上げる。
3.従来型は基準病床に入れず、施設基準は強化しない。入院基本料も据え置き、48時間規制も撤廃しない。
4.産科は治療目的でなく、産後の入院期間が48時間制限を超えることが大部分のため一般診療科と切り離す。基準病床参入の可否は今後検討する。

 7月30日の全国有床診連絡協議会総会で日医常任理事は以下のごとく回答した。

  1. 48時間規制は撤廃する
  2. 基準病床に算定しない
  3. 高機能とは疾病構造によるもので、医師数により規定しない
  4. 標榜は産科でなく産婦人科とするが、医療安全と24時間体制が必須である
  5. 有床診安全基準は『有床診医療安全評価表』にて評価する

産婦人科有床診の方向性について

 これらの経緯を踏まえ、8月9日に開催された有床診問題に関連する3委員会の合同協議で、産婦人科有床診の方向性を以下のごとく決定した。(ホームページ参照)。

1.不確定要素は多いが、産科の特殊性や周産期医療の危機的状況を考え、産科類型化推進を厚労省に働きかける。
2.受け入れ可能な産科類型化の条件
 1.医師一人の施設でも分娩取り扱いを可とする、2.産科でなく産婦人科有床診とする、3.48時間規制の撤廃、4.基準病床参入は容認しない、 5.入院基本料は他の類型との関連を尊重し施設基準に準じた診療報酬を設定する。
3.産科(産婦人科)有床診の認可基準について
 届出制を堅持し、施設基準は法制化しない。
4.医療安全について
 医療の安全なくして48時間規制撤廃や入院基本料の引き上げなど、国民の理解は得られないと考えられる。分娩は医師の管理下で行うこと、地域における周産期医療システムの充実を図り、診診連携や病診連携を積極的に推進することなど、安全性の向上を図る。

第5次医療法改正案で有床診に関連する事項

 提出された医療法改正案の要旨は以下のごとくである。

  1. 48時間規制は撤廃する
  2. 一般病床は基準病床に算定し、類型化はしない、
  3. 人員配置基準は定めない、
  4. 産婦人科は「救急医療等確保事業」に含まれ、ベッド過剰地域でも都道府県の医療審議会で承認を得れば新規開設が可能となる。

おわりに

 改正案は国会を通過後来年1月より執行となる。今後医療計画の作成は都道府県に委ねられるが、周産期医療の確保に向け、各支部には医療審議会への積極的な働きかけが求められる。

参考 「医療法」改正案の有床診療所に関する要点(PDF)
    厚生労働省 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案