日産婦医会報(平成16年5月)

対談「オープン・セミオープンシステム」(2) 

県西部浜松医療センター(静岡県) 前田 真 先生
国際親善総合病院(神奈川県) 多和田哲雄 先生
司会 医療対策委員会副委員長 小関 聡
オブザーバー 医療対策委員会委員長 可世木成明


5.このようなシステムに対する反応はいかがですか。

(1)分娩取り扱いを中止した施設

前 田 ・ 多和田
大変喜ばれました。現在も変わりません。

(2)分娩取り扱い中の施設

前 田
名目上は昭和53年で、私が就任した平成6年当時2施設で年間40件ほどでした。平成8年に懇意にしていた先生が近隣で開業する際、今までのやり方を一新しようということでpilot study としてスタートしました。軌道に乗ったのはNICU が完成した平成9年からです。
多和田
平成2年、病院が横浜中心部から現在の郊外への移転に際し始めました。当初から全科が連携を重視する方針をとっています。産科に関しては、地元の開業の先生(関連医と呼んでおります)の多くが分娩取り扱いを中止する時期にあり、その中の代表の先生が取りまとめ、話が順調に進んだことが影響しております。

(3)産科医師

前 田
外来の負担が減り、喜ばれました。
多和田
忙しいと時々辛そうな顔をされますが、システムを理解し、大変協力的です。励ましながらやっています。

(4)小児科医師

前 田
当院の特徴ですが、新生児科(NICU)は産科の医師が担当します。従って、直接の影響はありませんでした。
多和田
やはり業務量は増え大変でした。しかし、その実績から小児科医の増員が認められました。

(5)麻酔科

前 田
常勤5名です。中央手術室での緊急以外に、病棟内(分娩室)での超緊急帝切が年間20件ほどあります。当初産科分娩室での手術を嫌がりましたが、医療訴訟のことを強く主張したところ、そのようなことはなくなりました。
多和田
突然の帝切で、ひと悶着起こることもあります。

(6)助産師

前 田
当初は暇でしたが、現在は働き甲斐のある職場と思われています。以前は送られて来るといやな顔をする者もおりましたが、現在はそのようなこともなくなりました。
多和田
一番大切ですね。よく理解してもらわないと。

(7)妊婦さん

前 田
当初から健診と分娩の施設を変わることに対する不安はなかったようです。苦情のほとんどは説明不足による勘違いです。時々満床で他の病棟に移っていただかざるを得ないことがありまして、そのようなときに厳しい内容の投書がはいります。
多和田
当初は不安があったようです。現在は地域に広く知れ渡り、当院での分娩を希望する目的で最初から関連医を受診する方が大勢います。昨年、アンケートをとったのですが、8割くらいが良いシステムだと回答していました。

6.現在抱えている問題点は。

前 田
やはりベッド不足です。それと術前検査が、オペを行う施設でなければならないと社保の方からクレームがつきまして。開放型の認可があれば問題ないはずなのですが。
多和田
関連医の先生にもっと病棟を訪れてほしいことです。頻回に病棟を訪れ、回診する先生もいるのですが、先生によって熱の入れ方に差があるようです。回診を受けた患者さんは非常に喜ぶのですが 。

7.将来このシステムを始めたいという病院や開業医のグループがある場合、どのような条件が必要ですか。

前 田・多和田
  1. あくまでも主役は妊婦さんであるということ。「自分は診療所と病院に二重に守られている」という意識をもっていただくこと。
  2. 病院の産科責任者が熱意をもって推進すること。部下の医師は自分自身にも有益であるという意識を持つこと。
  3. 開業医側にもリーダーシップをとる医師がいること。
  4. 両システムとも実施可能な医療圏(距離)にある程度の制約があるが、現在のわれわれの方式は参考例であって、病院と医師会が地域ごとの事情に応じて最もよいシステムを構築することが大切。
  5. 今後とも有床診療所での分娩が必要とされる地域も数多くある。個人で分娩を取り扱う先生がいればそれを支援し、様々な事情で中止せざるを得ないときにはそれを受け入れる。病院が地元の医師、医師会から単に必要とされるに留まらず、愛着をもたれることが重要。
     

小 関 本日はありがとうございました。