日産婦医会報(平成16年4月)

対談「オープン・セミオープンシステム」(1) 

県西部浜松医療センター(静岡県) 前田 真 先生
国際親善総合病院(神奈川県) 多和田哲雄 先生
司会 医療対策委員会副委員長 小関 聡
オブザーバー 医療対策委員会委員長 可世木成明


 オープン・セミオープンシステムに期待する声があることも事実ですが、様々な要因から実際に稼動している地域は少ないのが現状です。今回、比較的順調に行われている2カ所のシステムの責任者にその実態、具備すべき条件などについて語っていただきました。

1.貴施設の概要を教えてください。

前 田
全600床ですべて開放型病床です。周産期センターは母体18床、NICU12床、常勤医10名(産5、N5)、助産師24名、看護師17名です。分娩数は1,044件、うち543件がオープンシステムです。
多和田
全300床、産科27床で正式なNICU はありません。常勤4名と研修医2名、助産師20名です。昨年の分娩数は、1,121件、うち46%がセミオープンシステムです。
 

2.現在のシステムを始めたのはいつごろで、当時の周辺の産科医療事情はいかがでしたか。

前 田
名目上は昭和53年で、私が就任した平成6年当時2施設で年間40件ほどでした。平成8年に懇意にしていた先生が近隣で開業する際、今までのやり方を一新しようということでpilot study としてスタートしました。軌道に乗ったのはNICU が完成した平成9年からです。
多和田
平成2年、病院が横浜中心部から現在の郊外への移転に際し始めました。当初から全科が連携を重視する方針をとっています。産科に関しては、地元の開業の先生(関連医と呼んでおります)の多くが分娩取り扱いを中止する時期にあり、その中の代表の先生が取りまとめ、話が順調に進んだことが影響しております。

3.現在のシステムの内容を教えてください。

前 田
開業医は、分娩に立ち会ったり手術の執刀もできますし、それに対する報酬も規定に基づき支払われます。来院できないときはその治療方針を尊重しつつ病院医師が治療等を行います。現在3人の先生がオープンとして、9人が多和田先生のセミオープンに似た形で参加しています。大部分の先生が病院から半径5km以内の方です。自院で分娩を取り扱いながら、部分的に参加も可能です。
 妊婦さんは、low risk ならば妊娠中期に1回来院するだけです。連携室を通して診察日を予約し、事前にカルテを作り、助産師外来で約30分かけて問診を取ります。分娩までに必要な検査は開業医で行います。母親学級は施設見学を兼ねて1回は当院で受けます。産後健診や産後母乳ケアは開業医で、乳児は原則として近隣の小児科で受けます。
多和田
 セミオープンの場合、関連医は分娩等に立ち会うことはできますが、治療の決定権は、入院後は病院医師にあります。報酬の分配は現在ありません。現在15施設が参加し、大部分の施設が半径10km以内にあります。開放型病床の申請は、残念ながら現時点ではできない状態にあります。
 受診方法ですが、初期に関連医が電話で分娩予約をします。妊婦さんは、20週と34週で来院し、中等度以上のriskがあれば以後当院でfollow します。40週以降や夜間休日も当院でみます。母親学級は定員の関係で、保健所で受けることが多いのが現状です。産後1カ月健診は母児共に関連医で受けます。初診の妊婦さんも「逆紹介」という形で、関連医で健診を受けるように方針を変えました。

4.現在までに乗り越えてきた大きな問題点は。

前 田
個人的に振り返ってみても特にありませんでした。
多和田
当初の分娩需要を低く見積もり、産科は13床しかなかったために満床が続きました。関連医の先生から理事長に増床の依頼をしていただき、27床になりました。

(以下次号に続く。ホームページでは近日中に掲載予定)

掲載に当たって 担当常務理事 佐藤 仁

 医療対策委員会では、様々な要因(高齢化、分娩数の減少による採算の悪化、後継者やスタッフ不足など)により分娩を止めた先生方や、新規開業する先生方に対して新たな経営形態の一策として、オープン・セミオープンシステムに関する検討を重ねて参りました。同システムの整備は、分娩を取り扱う既存の有床診療所の活性化と並行して、今後の産婦人科医療形態の1つであるという認識に立って進めております。この掲載を機にさらなるご意見を頂戴し、検討を進めて行きたいと考えております。