日産婦医会報(平成13年7月)

産科における患者サービスの実態調査結果(その1)

日母医療対策委員会委員長 可世木 成明


はじめに

 少子化に伴う分娩数の減少・高度医療化・大病院への集約など産科の直面する問題は多いが、妊産婦のニーズの多様化・高級指向化、そして施設間の競争激化のために、良い医療に加えてサービスの向上により患者さんの満足を得ることが重要になってきた。その証拠に平成10年医療対策部で行った「出産・育児についてのアンケート調査」でも、診療設備・検査に対する要求、各種指導、託児施設の希望などが多く寄せられている。
 そこで平成12年2月、日母定点モニター1,017施設を対象として「産科の健診およびサービスに関する調査」を実施した。患者サービスには医療とアメニティーの両側面があることを踏まえて実態を調査し、意見を求めて分析した。回答は800施設から寄せられ、回収率は78.8%であった。結果については、既に日母医報平成13年1月号別冊「医療と医業・特集号」に掲載したが、主立ったデータの報告が中心であった。また、3月には詳細なデータと分析結果を最終報告書として刊行したが、同報告書は日母各支部に配布されたものの数に限りがあり、必ずしも全会員の目に触れないと懸念される。
 今回は7月・8月号の2回に分けて調査結果から問題点を抜粋するとともに、さらにいくつかの分析を加えて報告する。なお、回答の寄せられた800施設のうち、主として分娩を取り扱っている659施設を対象とした。施設群として、国公立病院、一般病院、有床診療所の3群に分けた。

施設の状況

最近数年間の分娩数の増減
 増加は21.3%、減少は51.5%であった。施設群別では国公立・病院・診療所の順に増加・減少が逆転しており、分娩の大病院への集約化が進んでいる。分娩数増減の理由として考えられるのは

増加している施設の理由(136施設、複数回答有り)
 ・医師・助産婦・看護婦の魅力:80
 ・積極的な患者指導・各種サービス:74
 ・施設の増改築:71、地域の社会へのとけ込み:58
 ・最新の器械やシステムの導入:40

減少の理由(329施設、複数回答有り)
 ・近くに強力な競争相手ができた:209
 ・施設の老朽化:140 ・スタッフの高齢化:62

分娩費用(入院分娩に関する総費用:個室割増料金を除く)
 20万円以下:6(国公立4、病院1、診療所1)
 30万円以下:177、40万円以下:402
 50万円以下:26、50万円超:1(病院)

小児科医との連携は(院内において)
 国公立の91.6%、一般病院の80.3%に小児科医がいる(常勤+非常勤)。それに対して診療所では24%であり、非常時に呼ぶ小児科医のないと答えた施設が49.5%を占めた。各地区で非常時の新生児搬送システム整備がされていると思われる。

産科外来における患者サービス

マタニティービクス
 指導は24.8%(院内が92.5%)。単科の病院では約半数と多かった。妊婦水泳指導しているのは9.3%。

患者さん用の託児施設
 患者さんからの要望は多いが、有りは3.5%にすぎない。

母親教室
 国公立・一般病院の最頻値は4回であったのに比して診療所の最頻値は2回で、診療所が有意に少なく、特に病床数が少ないグループで回数が少ない。母親教室の夫参加は約80%が認めていた。

エコーの写真・ビデオテープの提供
 エコーの写真を提供する:94.8%
 ビデオを提供する:39.2%
 ビデオの提供は病院・診療所に比して総合病院・特に国公立では低かった。提供は医事紛争との関連を危惧する意見も多いが、カルテ開示の時代に当然である、情報提供はできるだけすべきである、とする意見も少なくなかった。

胎児の性別告知
 全例に告知:4.7%
 聞かれれば:84.4%
 しない:10.9% であった。
 告知しないのは国公立がやや多い。

分娩の家族立ち会い
 認める:83.0%、
 認めない:13.7% であった。
 国公立をはじめ総合病院ではやや低かった。認めると答えた施設のうち54.7%が母親教室などでの教育を行っている。

(以下次号に続く)