日産婦医会報(平成12年9月)

都市部における最近の開業形態について
 アンケート調査の結果から

日本産婦人科医会医療対策委員会委員 森田 良子


 平成9年に実施した「過去十年間の新規開業施設の実態調査」(医報平成10年4・5・6月号掲載)に基づき、今回は対象を都市部に限定し、最近の開業形態を追加調査したので報告する。

対象と方法

 東京都、大阪府、愛知県、福岡県、横浜市の前回の調査期間以降の開業75施設に無記名で回答を依頼し、73%の回答を得た。このうち法人化、両親からの継承などにより、対象期間における新規開業に相当しないものを除いた47施設につき集計した。

開設者

 個人43、法人3、無回答1、性別は男性31、女性7、無回答9。開業時の年齢は、20歳代はなく、30歳代8、40歳代22、50歳代11、60歳以上6と40・50歳代が7割を占めた。女性医師は15%で前回調査の9%に比べて多い。女性医師が増加している可能性と都市部に女性医師の開業が集中した可能性とが考えられる。事前に市場調査を行った施設は半数弱の21でそのまた半数が専門家に依頼していた。

施設の規模

 ビル開業が21、専用建物26と、いわゆるビル診が45%を占める。前回調査でのビル診は21%であり、やはり都市部ではビル開業が多いと言える。ビル開業で分娩を取り扱っているのは2施設であった。稼動ベッド数はゼロ床が12、1床1、-3床12、-19床22、20床以上ゼロで、3床以下の小規模施設と、19床未満の診療所とに二分される。
 施設の広さは、-30坪が8、-50坪が11、-70坪が4、-100坪が6、100坪以上が18であった。分娩を扱っている施設では3分の2が100坪以上で、駐車場も全施設が用意している。

診療時間

 日曜診療、休日診療はそれぞれ2施設が実施しているに過ぎない。夕方診療(午後6時以降)は33が行っている。うち、週4回が22、週5回が6と多数回実施しており、都市部の診療形態に重要な意味を持っている。予約診療は行っていないが24、予約制を取り入れているものは一部予約17、全部予約四の21(45%)で、これまでの産婦人科診療からみると高率と言える。

診療内容

 妊婦健診はほとんどが行っている(92%)。
 分娩を取り扱っている施設は24(51%)。分娩を取り扱っていない施設23のうち、65%は決まった連携施設を確保している。
 母体保護法の指定医は37、指定医でない者9。一人を除き日産婦の認定医であった。その他の有資格者には産業医4、細胞診指導医3、麻酔科標榜医3などがある。産婦人科以外の標榜併科名ありは21(45%)で、内科15、小児科4など。
 力を入れている診療内容は回答の多い順に、一般婦人科、更年期、不妊症、がん検診が半数以上で、他に思春期外来、東洋医学、妊婦健診、産科診療など。体外受精を実施しているのは九施設であった(19%)。貴院のセールスポイントは?という設問に対して、分娩取り扱い施設においてはLDR、個室、食事、くつろぎ重視、自然分娩などの患者さんに快適さを提供する意欲が強く見られる。全般的にはICの充実、一人ひとり丁寧に接する、時間をかけて説明するなど、患者さんの話をよく聞き、良好な関係を築く努力を挙げている者が多い。IVF施設では、高度ART、最新の技術、最高の治療成績を挙げている。

開業資金

 自己資金はゼロ%8、-20%16、-40%11、-60%3、-80%2、-100%4、無回答3であった。今回の調査では、金額についての回答は求めなかった。分娩取り扱い施設では自己資金40%以下が20施設(83%)で、初期投資が高額なため借入金が多くなるものと考えられる。

まとめ

 ビル開業、女性医師の占める割合が多いことは、予想どおりと言えるが、都市部でも分娩を目的とした新規開業が半数を超えたことは心強いことである。開業前に知っておけばよかったこととして、保険請求や税務などの知識、職員採用や労務の問題が多く挙げられるが、開始して初めて分かることも多いようである。開業して日も浅いことでもあり、それぞれに奮闘中の様子がうかがわれる。
 極めて多忙な中でアンケートにご協力いただいた会員各位に厚く御礼申し上げる次第である。