平成9年9月1日放送

平成9年度日母産婦人科大会のご案内

第24回日母産婦人科大会会長 堀 章一郎

 今年の日母大会は、10月11、12日の2日間中国ブロック担当で岡山市で開催致します。戦後の混乱を克服して、日本母性保護医協会が発足したのが昭和24年4月、以来20年間に亘り開催されました日本産婦人科臨床大会が発展して昭和48年森山豊会長の下で第一回日母大会が、東京で開催されました。今年の岡山大会は第24回になります。日程、プログラム等に就いては今年6月号以降の日母会報誌で再三案内致して居りますが、本日はラジオ短波を通じてご案内申し上げます。

 岡山県日母支部は、大会の開催県に決定した平成7年10月、大会の講演内容の重要さから、全国支部にアンケート調査を致しそれ等を参考に学術研修、教育講演、特別講演及び公開講座の演題を採択致しました。今年度の大会スローガンは「吉備路に集え、日母ファミリー」と決めました。アンケートによりますと楽しい会を望むと云う希望が多数を占めており10月10日体育の日には全国より参加される希望者による親睦ゴルフを予定しています。

 さて、大会第一日の午前は、学術研修として岡山県産婦人科医会が設立し、平成4年12月に岡山県より第2種社会福祉事業の認可を受け発足した特別養子法による「岡山県ベビー救済協会」の5年間の歩みを紹介致します。

 次に有能な弁護土による「医療事故と鑑定医」の問題を予定しており、医療事故での鑑定医の選択は、その後の判決に微妙な影響を及ぼすことがあります。鑑定人は専門家として良心に従って鑑定されている筈ですが、鑑定のあり方次第では更に無用な医事紛争が起こる場合もあることを実証的に紹介されます。

 第三題は産婦人科医に極めて関係が深いテーマであるC.P.を取り上げましたが、長年に亘り研究された演者により新生児脳性麻痺の発生要因に就いて講演頂きます。Anoxia仮死、頭蓋内出血等の病理要因、脳内代謝異常等による要因との関係についても述べられます。大会第1日の午後は中国ブロック内大学産婦人科教授6人による教育講演をして頂きます。取り上げる演題は先刻申し上げましたが、全国の日母各県支部にアンケート調査を基に、希望の多いテーマを採択し各教授に依頼致したもので、何れの演題も日常の診療に役立つ、臨床的主要問題の講演ですから大いに期待いたします。

 当日夜の懇親会は坪井日本医師会長、坂元日母会長、地元選出の橋本総理大臣夫人、永山県医師会長等々のご臨席を得て、ブロック内高校生による神楽の他、胡弓演奏、ビンゴゲーム等々肩の凝らない楽しい夕食会での吟味した岡山の味を賞味して頂きたいと存じます。

 第2日目は特別講演として「陣痛促進剤を考える」と「アメリカの周産期医療」の二題を採択致しました。

 実は2年前、岡山市で大会開催が決った当初より、少しでも大会のマンネリ化を打破し、時代に則した大会の開催をと関係者と検討努力致しました。

 準備委員会としては、日母大会の従来の形式と共に新しい企画を心掛けて、多少のリスクを覚悟の上で「医師、患者及び弁護士の三者による公開討論会」や「分娩と新生児脳性麻痒に就いて」等の議題を準備致しましたが、ご存知の通り医療事故の報道では訴訟した段階で、既に患者は気の毒な被害者であり、医師は常に加害者と言う聊か不本意な一部マスコミの報道、患者の過大な権利意識の主張及び今日の一般世論を考慮して、これら等のテーマの採択を残念ながら断念して「医療事故と鑑定医の選定」に変更しました。また当初「陣痛促進剤の功罪」の演題を選択致しましたが、題名からでも誤解されかねないと云う社会情勢から「陣痛促進剤を考える」と改題して発表されます。これに就いては、日母本部のご協力を得て、主要医療機関の全国調査データ等を検討して講演されます。以上今日の社会事情により残念ですが当初の計画どおりには運ばなかったことは止むをえないとは思います。

 特別講演は、長年に亘り米国カリフォルニア大学の教授として周産期医療をリードされた大阪大学教授の「アメリカの周産期医療」-専門化と多専門的アプローチ-についてのご講演を予定しており、会員に大きな示唆を与えられるものと期待しています。

 大会最後の公開講座としては、来日28年、「人間の死」について社会的活動を多数の論文を発表されている上智大学文学部、ドイツ人教授による「最近の死生学の動向-生と死のユーモア」の講演は、医師と云う専門的観点からではなく哲学者としてのご講演で平易で流暢な日本語で

1)末期患者への対応

2)死の4つの側面と全人的アプローチの効用

3)医療関係者の発想の転換

4)患者、家族や遣族への悲嘆教育

5)末期患者と家族への精神的援助依頼

6)ターミナル・ケアに於けるユーモアの役割

等々に就いて講演されます。日常診療に多忙で聞く機会の少ない会員にとって死生学やターミナル・ケア等の話を聞くことも有意義なことと思います。

 我が国の産婦人科は伝統的に日産婦学会と日母産婦人科医会が「車の両輪」の如く相互に相協力して円滑に運営されて居ります。それにも拘わらず勤務医の方々の中にはとかく日産婦学会を偏重する傾向がある様に思います。日母産婦人科医会は日産婦学会とは別に幅広い活動例えば、社会保険、医療対策、学術及び臨床研究、母子保健、等々について、対外的にも幅広く精力的に活動して、会員の利益擁護をしている実情を再認識して頂きたいと思います。今年の大会スローガンは「吉備路に集え、日母ファミリー」です。ついては今後各地で開かれる日母大会に積極的にご参加頂き、先輩方との意見交換、忌揮のないご意見を頂き将来の産婦人科全体の発展に寄与して頂きたいと念じます。最後に私共は日母支部中国ブロック産婦人科医会又、地元の産婦人科医会関係各方面のご協力と後ろ盾を得て準備致して居ります。心からの多数のご参加をお願い申します。