平成13年12月31日放送

 組織の重要課題-本年を振り返って

 日本産婦人科医会副会長 市川 尚

 

21世紀幕開けの2001年も、もうまもなく終わろうとしています。本年を振り返ってみて、一番大きなことは定款改正が正式に認可され、私達の組織の名称が、日本母性保護産婦人科医会から日本産婦人科医会となったことだと思います。このことは単に名称を変更したということだけではない様に考えております。日本産婦人科医会への名称の変更は既に平成4年の定款検討委員会の答申にあり、その後の折衝の中ではまだ十分理解されず、ひとまず中身の変更を平成10年に行い、今回再度の交渉で監督官庁、日本医師会の理解によりやっとの思いではありますが、平成13年10月19日付で認可されました。本会が母性保護だけでなく、女性保健全般に関わる産婦人科医師の組織する団体であることがより明確になりました。今回改定のもう一つの大きな変更点は、正会員をもって民法上の社員とし、都道府県支部の総会において選出された代議員が総会を組織することにあります。

現在新定款に合わせた細則の変更を検討しています。来年3月の総会に提案する予定でおります。今回の名称変更に伴って現在の日母産婦人科医報は日産婦医会報と会報名を変えることになります。略称の日母という言葉はしばらく通称名で呼ぶことは良いと思いますが、書中などでは日産婦医会と表記し、学会と医会の区別が少し混同し易いかもしれませんが、次第に慣れると思っております。

財団法人「日母おぎゃー献金基金」は歴史もあり、別法人でもありますので、このまま継続と致します。

日母産婦人科大会(通称 日母大会)については本年11月17日開催した「日母大会あり方検討委員会」で、大会の今後のあり方を含め検討しましたが、今後更に検討していくことになります。

これらのことは本年8月に2回開催されました日産婦・日母連絡会以降、新たに両会の業務分担・連携についてのワーキンググループでの協議にも関係するものであります。

9月26日と11月15日と2回にわたってワーキンググループの会合をもちました。

両会より5名ずつの委員がでて協議行って、平成13年度中に一応の方向を示し、平成15年度の両会の事業計画・予算案に反映出来るように平成14年中には答申を出し、両会の常務理事会、理事会にて取り決めようと考えているところです。

日本の産婦人科医療を担う、学会と医会は会員のほとんどが共通の会員を母体にしているわけで、両会の事業内容をそれぞれに検討して、分担して、効率の良い、必要な事業を展開していくことが、これからの両会の発展のためにも必要なことだと認識しています。

大きく分けて考えると日本産婦人科医会は臨床産婦人科医の抱える諸問題について取り組み、産婦人科医療、医業が適正に行われるための活動をしていくことが求められます。そのためには産婦人科専門医の生涯研修に責任をもち、会員の必要とする医療、母子保健、女性保健の諸問題、地域医療におけるがん対策、福祉・介護等の諸問題への対応、産婦人科医療に必要なコ・メディカルに対する研修など、私達の医会の役割はますます必要になると思われます。

学会は産婦人科学の進歩・発展を計るために専門委員会と各種関連学会と調整しながらSub specialityの構築に努力し、又現在行っている学術講演会をとおして学会員の研究・発表を通して産婦人科学の進歩を推進すること、又それに必要な各種事業が求められようと思います。

卒業初期研修事業、専門医資格取得迄の専門医制度中央委員会は現在でも学会・医会が半数の委員を出して行っているわけで、今後も協力して行っていく必要があろうと思っております。

大きな方向はお互いに認識しているわけですが、それではどの様な方法で、どのことより協力事業を分担していくかはこれからの問題ですので、良い方向で協力し合えるよう努力していくことにしたいと思います。

医療の安心・安全を国民に示していくために、各医療機関もリスクマネジメントに取り組んでおられると思いますが、産婦人科診療に限ってみて、産婦人科中小医療機関でおきたインシデントレポートを収集することは、まだどこでも統計的に収集したことはないので、医事紛争対策部では来年3月〜5月までの2ヶ月間で全国的に収集しまとめることにしています。

そのために都道府県支部にお願いして、協力施設の推薦のお願いいを致したところです。

これにより収集できたヒアリ・ハットのインシデントレポートを分析し、産婦人科施設での医療事故防止のためのマニュアルを作成することになろうかと思います。マニュアルが出来たら、これを基にして、全国的に普及・研修のための集会を開いていただく事業を来年度すすめていきたいと考えています。

去る10月18・19日の両日、東京でIAMANEH(国際母性新生児保健連合)の理事会が開催されました。坂元会長が昨年4月1日南アフリカのステレンボッシュで開かれた理事会・総会でIAMANEHの会長に選出されたことから、今回の開催になったわけですが、定款の改正を含め種々のことが協議されて、無事終了しました。発展途上国の母子保健の向上のために活動していくこの会は、森山前日母会長以来、私達の会が日本の受け手の会として重要な役割をはたしているわけで、坂元会長は今後post presidentとして3年間任期終了後後任者として会務を補佐していくことになります。

現在医療界は、医療制度改革の中身について、大変難しい問題に直面して議論されています。9月25日に厚生労働省の試案が発表されたが、これは医療の本質とかけ離れた項目が羅列され、いずれも財政再建の名のもとに、医療費の抑制のみに主眼がおかれております。日本医師会は意見書をもって、厚生労働省の問題点を指摘し、反対しております。日本が世界に誇れる皆保険制度、フリーアクセスの制度を崩壊させないためにも、患者の負担増だけが表にでる、現在の論議は問題が多すぎると思っております。少子高齢社会のなかで、必然的に増加する医療費を抑制することではなく、中長期的に日本の医療制度はどうあるべきかという、本来の目標に向けて、医療提供側の自主的管理を基にした、医療構造改革を推進することこそ、我々医療人にかせられた義務だと思っております。

保険・医療・福祉全般にわたる新しい医療制度を再構築するため、日本医師会と協力して、私達も努力していきたいと考えます。

来年度が日本産婦人科医会としての新しい出発点になるよう、皆様の忌憚のないご意見を頂戴しながら、取り組んで参りたいとぞんじますので、ご支援・ご協力の程よろしくお願い申し上げます。