平成13年8月20日放送
 おぎゃー献金だより
 日母産婦人科医会常務理事 力武 義之

 

 日本母性保護産婦人科医会、会員の皆様、そして心身障害児のために、おぎゃー献金に協力をいただいた、お母さん、お父さん、そしてこの運動を理解し協力くださった多くの方々の暖かい心に感謝申し上げます。

 皆様のご協力により、昨年度、平成12年度は全国から143,150,000円のおぎゃー献金をいただきました。
 昨年、おぎゃー献金基金に、84の心身障害児施設と心身障害の予防、治療に関する研究から補助金要望の申請がありました。
 厳重な審査によって、全国の71の心身障害時施設と心身障害の予防、治療等に関する研究に124,316,157円が補助金として贈られ、4月から全国で贈呈式が行われています。

 昭和39年7月1日、東大分院講堂において『おぎゃー献金全国運動発足の集い』が開催されてから、満37年が終わり、38年目を迎えました。
 しかしながら、今日の社会情勢の中で、企業や団体が社会活動として、貢献してきた社会弱者への福祉活動、スポーツ振興により国民を励ます活動、文化振興のために国民を啓発する活動の中から、当初の目的を継続できずに社会運動から撤退していく傾向が出てきています。
 おぎゃー献金運動は、発足当初の姿勢を変えずに、今日も活動を続けることができます。
 おぎゃー献金が、日本の産婦人科医と日本の母親たちの心の財産となるよう、今後も息長く継続されることを願ってやみません。

 しかし、このおぎゃー献金運動が、37年の間、全く問題がなく順風満帆できたわけではありません。1年に1度、全国各都道府県のおぎゃー献金担当者が全員集まり、今後の展開につき検討をする会議が、毎年開かれます。
 去る7月29日、東京、ホテル国際観光において、第29回 全国支部献金担当者連絡会が開催されました。
 全国支部において、おぎゃー献金運動の先頭にたって努力されている方々と役員76名が一堂に会して、おぎゃー献金の発展について、全国の事情・問題点を1年に1度持ち寄り、次への発展のために意見の交換をする場であります。
 日本母性保護産婦人科医会にとっておぎゃー献金の事業は重点事業でありますから、この全国支部献金担当者連絡会は、大変重要な会議であります。

 本日は、その全国支部献金担当者連絡会の冒頭の挨拶で、坂元正一会長が話された三つの点についてお話します。

 第一に、このおぎゃー献金は、昭和39年の日母代議員会で満場一致、日本の産婦人科医の総意で始まったものでありますが、近年では、日母会員の全部がこの運動に協力されているわけではありません。
 全体の20%ぐらいであろうと考えています。あとの80%は未協力、それでも、37年間これだけの事業が行われているのですから、この運動の中心となって活動を続けている各支部で担当され、中心になる先生方の努力がいかに大変なものであるか、いつかはお礼を申し上げたいと考えていました。と述べ、集まった献金担当者に日ごろのおぎゃー献金活動に対して礼を述べられました。
 おぎゃー献金への協力医がこれから5%増え、10%増えればもっといろいろなことができると考えます。
 おぎゃー献金の原資と成る基本財産の生む果実(利息)は今日の我が国の経済状況からすると非常に少なくなっていますが、基本財産が生み出した利息を使って、いろいろなところへのPR、特にそのムードを作り上げることが大事ではないでしょうか。
 担当されている方は、いつもおぎゃー献金について、よく考えておられますが、そうでない方はうっかりすると、これも、日母のひとつの大きな誇りうる事業なのだということを忘れがちになります。こういったことは、どこかで感動を与えるようなものをPRしないと、人は感動によって、行動を起こすことがよくあることはご存知のとおりであります。何も感心せずに、“お願いします”ではうまくいきません。
 献金に協力してくれる婦長さんや看護婦さん、事務の方々に、お礼の感謝状などの感謝の気持ちを伝える方法を、考えないといけません。

 第二には、何かを行おうと思えば、いつも心の中で祈るような気持ちで考え続けていなければ実行できないものです。
 臨床家であるならば、生にも死にも、哀れな死にも遭い、且つ又障害者に遭うことあります。
 そういった時に、突然では、その人を慰めたり、喜ぶような激励もできません。例えば、死に臨んで、“本当は家族と伴に居て、最後に本当のことを話し、分かりあえる。”そう言う別れをしたいときに、治療を優先して、家族を部屋の外に出し、ふたたび家族を部屋に呼び入れたときには患者はチューブをやたら付けられ、いわゆるスパゲッティ現象でものも言えない状態であったりします。
 人の聴力は最後まで残っているものですから、死の淵に居て、“家族と医師の話が全部わかっている。”そうゆう別れのあり方について、苦しんでいる患者への本当思いやりはどうゆうことであるかということを臨床家として、常々考える必要があります。
 それから又、いろいろ障害のある人に、いろいろ気にしている状態のときに、頑張れよ、頑張れよと言っても、“何を頑張ってよいのか判らない。”そういうこともあります。
 こういったことは普段から考えていなければ、臨床家として、自分がぶつかったときには深刻に考えるでしょうが、普段考えていないことはできません。
 そういったことをどうか周りの先生方にも、そしてともに働いてくれる助産婦さん、看護婦さんたち、臨床を扱う皆さんに、“いつもそういったことを考えていようよ。”ということをいって欲しいわけです。
 それによって、事故、医療事故というよりも訴訟につながらないという、医療現場がいい方向に向くようになるのではないかと思います。
 心の持ち方で、おぎゃー献金運動も又、暖かくお母さん方に伝わっていきます。さらにその家族に伝わっていきます。そして又、今、増えてきたようにいろいろなロータリーであるとか、ライオンズクラブであるとかの寄付につながってくるのではないでしょうか。
 そういった生の声でのPRというのが本当は非常に大事な事であろうと考えています。

 第三に、献金の配分の仕方の中で、いろいろ大学から学術研究のためのサプライがあります。
 これは、事実その大変さは、私自身もイヤというほど経験しましたのでわかりますが、最近、国の研究費補助の方針というものが、効果的な研究をやろうということになり、プロジェクト研究という風に変わってまいりました。テーマにより応募させて、試験をして、口頭試問をして、そして、その方の論文発表まで聞いて決めます。最後に23人までに絞って、それを3人に絞って、たった1人に対して3億円の予算がつくと言う選考の方法です。事実それが決まりました。
 そういった風な方法で、大きなプロジェクトで持っていこうと考えています。それは、かつての文部省の場合は科研費、 科学技術庁、経済産業省であるとか、厚生労働省もプロジェクト研究に方向を変えてきました。
 日本は今、何に重点を置くべきかテーマを選ぶ。
 という風に今までのように、研究費をもらって、チョコチョコ思い付きで、どこかの外国の文献を読んで、それをやらせるからお金を集めるということで、やるようなことはできなくなってきました。
 これは非常に教室を主催するものとしては苦労します。いい研究をしなければだめですし、それを認めてくれなければお金を集められなくなります。
 米国が厳しい審査をするために大変な額。コレハという研究には、思いっきりバサット出ます。
 日本ではそうではなく、まあまあ、ナァナァムードがあった訳ですが、そうは言っていられなくなってしまった。ということであります。
 そうしますと、おぎゃー献金を全然協力しないところからでも研究費補助の要望が出てまいります。申請書が、チャントまともに書いてあれば、年間200万円かける3年間600万円の研究費をおぎゃー献金から補助されるわけですから、各県支部で、地元の大学をごらんになって、それが、心身障害の予防、治療に関し、有意義な研究であるならば、支部で一丸となって、おぎゃー献金の運動を大学でも勧めてもらい、支部の先生方の応援を得て、立派な仕事にして、お母さん方の善意の祈りにフィードバックできるよう応援して欲しいのです。
 地方で研究費に恵まれない大学に、お母さん方の善意によるお金を使ってもらって、心身障害の予防、治療の発展に役立てていただきたいと思います。
 厚生労働省も働く女性の心と体を考える。いろいろな役所が、日本のインターナショナルで遅れているところ。本当の男女平等の世界で、その女性の能力を買って、いろいろな不具合が女性のほうに残らないようにという努力を一生懸命にやり始めました。
 そういったことを国全体として、そういう意味の構造改革をやらざるを得ないだろうと思います。
 そういった意味で、おぎゃー献金というものはよく考えてみれば、女性と子どもの健康を守り、さらには家族の健康また地域の健全さを願う産科・婦人科の医師にとって大変大事な事業であります。
 おぎゃー献金は全国のお母さん方や家族、おぎゃー献金運動に賛同された人々からの貴重な浄財です。そのお金を、日本母性保護産婦人科の医師全体が、全国で管理保証しているものです。
 どうか、我々みんなが注意して、おぎゃー献金の配分を考えてあげようではありませんか。
 心身障害児施設の大きな施設は補助の対象としてリストにあがって来やすいのですが、私的なボランティアなどで世話をしているような小さな施設はなかなかリストに上がってきません。
 しかし、そういった所こそ、本当におもちゃ一つにも困っているというならば、そういう所にこそ、なにかしてあげたいと思います。
 本日、ご出席の支部担当の先生方には、支部の大学の研究、各県にあるなかなか光の届きにくい施設の力になっていただきたいという思いに耐えません。

 と、坂元会長は、おぎゃー献金の、三つのポイントをあげて、日本母性保護産婦人科医会の会員にとっての重要な事業であり、願わくば、会員全員一丸となって行う日母の重点事業である事を強調されました。