平成13年7月9日放送
 日母中央情報室より
 日母産婦人科医会副幹事長 宮崎 亮一郎

 

 本日は、日本母性保護産婦人科医会(以下、日母と略します。)の中央情報室の活動状況について述べさせて頂きます。

 その前に、日母の組織について簡単に説明します。
 日母には中央情報室、献金担当連絡室の2室と総務部をはじめとする9部が存在します。
 この2室と各部には、それぞれ委員会と部会が存在し、委員会は全国から選ばれた委員の先生方で構成されています。また、部会はこの委員会の委員長・副委員長と担当常務理事・担当幹事が集まって、年間事業計画を実行していく組織となっています。
 その中で中央情報室は主に、電子機器と産婦人科医療について検討しているところです。

 以前、この委員会では、FAX・ワープロ等の機器を産婦人科医療でどのように応用してゆくのか?について検討してきました。FAXによる通信医療情報等は、通信回線の発達と機器の進歩が相乗的に働き、あっという間に充実したのは周知の事実です。
 最近では、コンピュータの発達・大容量化にともない画像処理能力のアップ、それに伴う大容量の通信システムの充実・拡張と、今後の医療関係者であれば、このシステムに必然的になじまなければならないような状況にあることを会員の先生方も感じていることでしょう。
 TVコマーシャルにも、遠隔地での画像診断を専門医へ委ね、より良い医療を提供するなど、医療システムそのものの構造改革の波が押し寄せようとしています。
 しかしながら、現実にはなかなかこの波を受け入れにくいのも事実であり、このギャップを考慮した上で、会員へもこのシステムの有用性を理解してもらうとともに、このシステムへなじんでもらえるように努力しています。

 今期から、委員の先生方が若干入れ替わり、委員長に原 量宏(はら かずひろ)先生、副委員長に加藤達夫(かとう たつお)先生がそれぞれ就任され、稲葉淳一(いなば じゅんいち)先生、木戸道子(きど みちこ)先生、永井 進(ながい すすむ)先生、名取道也(なとり みちや)先生、花岡 暉(はなおか ひかる)先生の各委員の先生方にお願いして、今期の事業を推進していくことになりました。

 さて、その活動としては、まず、日母ホームページ(www.jaog.or.jp)を管理・運営しています。
 このホームページ(HP)には、一日約200件のアクセスを、開設以来維持しています。
 日母のHPは、会員の必要とする情報を提供するばかりでなく、非会員つまり一般の方々でもアクセスすることが可能で、本会の活動をよりよく理解してもらうばかりでなく、産婦人科医療の情報提供を、各部と協力して行っています。

 例えば、会員には、
  (1)学会・研修会のお知らせ、
  (2)診療活動の支援として、
    1)日母様式「カルテ」モデル並びに指導票、
    2)母性健康管理指導事項連絡カード、
    3)周産期母子センター一覧並びに連絡先、
    4)文献検索並びに産婦人科関連ページ等のリンク集、
  (3)医学生向けとして、研修指定病院情報
 などを設け、また、一般向けには、
  (1)遺伝相談施設、
  (2)女性健康管理カード、
  (3)不妊相談センター、
  (4)不妊治療 等
 を掲載しています。

 このHPには、今後も各部・各委員会から提出された、役立つ情報を可能な限り掲載していく予定です。
 今年度は、妊娠、分娩等についても検討していく予定です。

 HPだけでなく、電子メールに関しても運用しています。
 現在、日母には、会員向けにメーリングリストを開設しています。
 このメーリングリストは、メールアドレスを持っている会員であれば、日母事務局に連絡してもらい、会員であることを確認でき次第すぐに入会することが可能です。
 この中では、紳士・淑女的に会員間での情報交換が行われています。例えば、日常診療で困ったこと、その処理の仕方、今話題の産婦人科医療の出来事について意見を交換し合い、どのような考え方をしているのかずいぶん会員にとっては有意義な情報交換を行っていると思われます。一寸面白い利用方法としては、里帰りの妊婦さん達の紹介先を探すなどに利用している先生方もいます。
 また、日母本部からは、日母医報への原稿募集、会員間で話し合っている内容がどうも間違っているように伝えられている場合には、担当の常務理事・幹事にお願いして、基本的な考え方をメーリングリストの会員の先生方へ伝えるようにしています。
 これとは逆に、メーリングリスト内での会員間の情報で、アドレスを持っていない会員へも必要な情報であると思われる内容を、日母医報へ紹介するなど、各部との連携を図りながら情報交換を行っています。

 メーリングリストは、このように会員間の情報交換の場だけでなく、各委員会や部会の出欠席、会議が行われる前の資料やその内容を予め検討する場として活用しています。
 本年度は岩手県支部が支部内の会員用メーリングリストのサーバを日母事務局内に設置してもらいたいという要請があり、早々に設置しました。
 他の支部でもこのような活用を望まれる支部には、サーバを設置することが可能です。このような活用のされ方は、中央情報室として大変ありがたい利用方法で、この輪が広がれば、全国の日母会員がこのメーリングリストで連携が図れることと思っています。
 また、産婦人科医療における電子化、ネットワーク化についても検討しています。
 これは、前述した医療システムそのものの構造改革の部分です。実はこの部分が、本委員会の最も重要な部分であり、今後の産婦人科医療の構造が変化する部分であると考えています。
 平成11年度から経済通産省による電子カルテ・ネットワーク化プロジェクトがスタートし、さらに、厚生労働省も診療録の電子化には積極的で、今後、国立病院を中心として電子カルテのプロジェクトが急速に進められる予定です。
 本委員会では、このような機構が確立される以前から、産婦人科医の立場で、会員の先生方が最も使いやすいシステムを確保し構築していけるように、モデル地区を設定し、機構の改変を行いながら検討している状況です。
 例えば、四国の香川県を中心に、周産期医療情報ネットワークが形成され、各病院間で患者個人の周産期医療情報を、ネットワークに加入した医療機関では共有できる状態になっています。このようなシステムは本年度から、石川県、山梨県などでも行われるようになる予定です。
 病院遠隔診断システムは、画像(単純X線、CT、MRI)をはじめ、分娩監視装置の胎児心拍図などにも応用し、遠隔診断を専門医へ委ね、客観的な判断をしてもらう等も現実的に行われています。
 電子カルテ・ネットワーク連携は、実際に診療所用電子カルテを作成し、県域を越えて診療所と中核病院の間で患者の医療情報を共有し、情報交換を可能とするシステムで、四国では4県内で本年度から行われる予定です。
 次世代超高速ネットワークは、全国縦断ギガビット・ネットワークとも呼ばれるもので、インターネットの100〜1000倍の速度で情報交換ができるシステムです。遠隔画像診断は勿論のこと、遠隔病理診断、遠隔会議・講演、手術のリアルタイムの中継など、これらのシステムが登場し始めており、今後益々この方面の充実が図られるものと考えます。

 この他にも、日母事務局内の能率化や日母がこれまでに集積した貴重な資料の管理をどのように電子媒体として、コンパクトに保存するか等についても検討しています。

 最後に、中央情報室では、会員にはできるだけ即時性の情報を提供し、一般には産婦人科の医療の現状、お得な情報を正確に伝達するように今後も努力していきます。

 以上が、日母中央情報室の活動内容です。