平成10年4月27日放送

平成10年度日母事業計画について

日母産婦人科医会副会長 本多 洋

平成10年度の日母事業計画についてかいつまんでお話しいたします。

この事業計画並びに予算は3月29日の代議員会において承認されたものですが、総予算5億2,800万円余に対し、事業費予算が2億3,900万円余で繰越し金分を除き収入金の約60%が事業費に使われることになっています。もちろん収入の大部分は会員の会費によるものでありますから有効に利用されるように執行部一同常に留意しているところであります。その意味で事業費は会員の福祉の向上を目標として使用されねばなりませんが一方定款にも述べられているように母子のみならず全女性の生命健康の保持増進にも十分に眼を向けたものでなければならないのであります。

日母の事業は7部2室の部局で行われています。従来は13部でしたが一昨年から機構変えを行いスリム化したものです。まず、総務部でありますが、この部は庶務と法制にわかれ、庶務は諸会議の開催、組織強化、支部との連携、日母大会の開催協力さらに日産婦・日母連絡会・生涯研修連絡協議会等を通じて日本産科婦人科学会との連絡・提携など重要な業務を行っていますが、新規事業としては来年の秋に迫った日母50周年記念の日母産婦人科大会を本部で主催するための準備を開始いたします。また法制では母体保護法に関連した内容検討、とくに滅数手術の検討や母体保護法の指定医基準モデルの改定など山積する問題に積極的に取り組むことに努力いたします。次は経理部ですが、本会の事業を効率的に遂行するための予算の適正な組み立てを行いその経理業務を管理いたします。

次の学術研修部では、会員の研修資料を作成することを主目的としています。そのための研修ノートが非常に充実した内容で作成されていることはご承知の通りですが、本年度の会員研修テーマは母体保護法の諸問題のほか産道損傷と思春期のケアの2つで、これらについて研修ノートの作成を行います。また来年度のテーマとして「母体救急疾患」と「高齢女性のケア」の研修ノートの準備にもかかっています。また緊急に対応しなければならないテーマには日母研修ニュースとして日母医報と一緒に速やかに会員の手許に届くようにいたします。さらに日母医報の学術欄にも情報の提供をします。

次は医事紛争対策部でありますが、ここでは増加している産婦人科の紛争事例に対して鑑定人の依頼についての対応、結審事例の検討などの業務のほか本年度は全国支部担当者連絡会を開催するほか関連の医薬品副作用情報の配布、医報の医事紛争シリーズのまとめの小冊子の作成などが計画されています。ここでは脳性麻癖の発生原因に関して「正期産仮死児の調査」を行っていますがこの調査が3年目を迎えて本年で終了し、その結果を日母大会で発表することになっています。

次の医療・医業対策部では、医療対策として日母定点モニター制度を持ち会員のニードを的確に把握していますが、本年は過去10年以内に開業した施設へのアンケート調査をまとめ、開業適正規模の検討を企画したり、病・診連携体制の確保に努め、インフォームド・コンセントを重視した会員向け患者指導用パンフレットの改定・新規作成などを行います。問題に対しては勤務医の待遇についての検討、新入局者の確保対策、さらには増加する女性医師の問題を検討します。産科看護については全国の看護研修学院の内容充実を踏まえて第19回の産婦人科看護研修学院卒後研修会を日母大会に合わせて四日市市文化会館で開催します。社会保険の関係では分娩給付の検討は怠りませんが、産婦人科保険診療報酬の適正化への努力は常に続けて参ります。そして全国委員会の開催、ブロック協議会などを通じて会員の意志統一への努力を続けて参ります。

次に広報部ですが、ご存じのように毎月1回の日母産婦人科医報の作成発行がこの部の最大の事業であります。日母医報の発行は会員への直接惰報の伝達手段として、会員同士のコミュニケーションの場として最も重要な事業との認識のもとに正確迅遠な情報伝達と発行の遅延を極力少なくすることを旨としています。母子保健に関する行政通知なども速やかに会員に周知を要するものは記事として掲載することに努めています。また本年度より記事のデジタル化保存を開始する予定であることも付け加えておきます。

次に地域保健医療部でありますが、ここでは母子保健に関しての事業を主に扱っています。ここの最大の課題は本年度より本格化した母子保健事業の市町村への移譲により混乱を来している実状に対応しいかにこれを円滑に推進するかということであります。また平行して継続的な全国妊産婦死亡登録調査を実施し、これに基づき総合周産期母子医療センターなどの実現に努め、母子の安全性を高めることを目標とした事業を行います。また周産期母子感染症への対応もこの部の目標のひとつであります。先天異常調査も長い歴史を持っていますが、先天異常・外表奇形調査は平成9年度分の結果を国内外に発表いたします。この部のもうひとつの柱は女性保健医療でありますが、この中で女性性器癌対策は大きな転換期を迎えております。それは行政施策の上で癌スクリーニングへの補助金カットが急に決まり、日母の癌検診の方向を左右しかねない事態になったことです。これに備え本年は全国癌対策担当者連絡会を通じて徹底討論がなされる予定であります。一方これからの産婦人科医療が目指すひとつの方向として生涯にわたる女性の健康管理があるわけですが、思春期、中高年期の問題、更年期のHRT、不妊の問題などが山積しているといって過言でありません。STD、低用量ピルの問題もこの部で対応いたします。また具体的には第21回の日母性教育指導セミナーを7月5日に長野市で開催いたします。性の問題はあらゆる課題の基底をなしているわけですからこれにたいする理解は全婦人科医に必須のことといえましょう。

次に中央惰報室の事業についてお話します。ニューメディアはこれからの情報伝達・交換の手段として欠かすことのできないものであります。日母もこれに備えて、インターネットや電子メールなどの機構充実をはかりつつありますが、本年度はとくに重要情報のデジタル化による保存などに力を注ぐ計画をしています。

次の献金担当連絡室ですが、おぎゃー献金が日母での主要事業であることはご存じの通りですがその運営は財団法人「日母おぎゃー献金基金」で行っています。日母ではこの部局によりおぎゃー献金の適切な配分、献金の推進に努めていますが本年はおぎゃー献金発足の35周年にあたりますのでその記念事業を計画しています。すなわち全国心身障害者施設の再調査による一覧表の新規作成、四日市市における日母産婦人科大会に合わせて心身障害研究費による研究成果の発表などが企画されています。研究費の配分・施設への大口・小口の資金提供はもちろん本年度も厳正に行うことになっています。

以上各部の本年度事業計画の概要を述べましたがこれら事業の計画立案・実施のために各部はそれぞれの委員会を持って活動しています。すなわち総務部には中央産婦人科医療強化委員会、法制検討委員会、学術研修部は研修委員会、医事紛争対策部は医事紛争対策委員会、医療・医業対策部は医療対策・勤務医・産科看護の各委員会、社会保険部は社会保険委員会、広報部は広報委員会、地域保健医療部は母子保健医療委員会・先天異常小委員会・がん対策委員会、女性保健医療委員会、中央情報室は惰報処理検討委員会、献金担当連絡室は献金委員会など100名以上の委員の非常な努力によってこの日母事業が支えられていることに付け加えて深くお礼を申し上げまして終わりにいたします。