40.低流速カラードプラ

 微細な末梢血流を描出、評価することができれば、臓器や末梢組織の血流評価、機能評価につながると考えられる。昨今、超音波機器メーカー各社が、この微細血流を描出することを可能にしたカラードプラ法を開発、リリースしている。

 従来のカラードプラでは、微細な血流を表示しようとして流速レンジを下げる(PRFを下げる)と、手振れや血管の拍動の影響などでフラッシュアーチファクト(モーションアーチファクト)が生じてしまうため、微細血流を描出するのには限界があった。

 体動によるモーションアーチファクト

 そこで、手振れや対象の動きによるアーチファクトを軽減するために、wall motion filterという、一定速度以下の動きのある情報を一律にカットしてしまう方法が開発された。しかし、必要な情報である微細な血流情報までカットされてしまうという問題があった。

Wall motion filterの原理

 

 そこで超音波メーカー各社は、なるべくオリジナルの微細血流情報のみを描出できるように、独特のフィルターをかけたり、本当のアーチファクトのみ検出し、削減する機能を開発し、最新機種に搭載されている。例えば、GE Healthcare JapanからはSlowflowHD、Konica Minolta JapanからはSimple clear flow (SCF)、Canon Medical Systems からはSuperb Microvascular Imaging (SMI)がリリースされている。

 いずれの使用方法も、通常のカラードプラモードと同じで、そのボタンを押すことでモードに入り、特別な操作は不要である。

各社の低流速カラードプラの原理

 

低流速カラードプラの活用法

 微細血流を表示できるメリットは、実質臓器末梢の血管走行の評価、腫瘤像の性状評価、良悪性、炎症の鑑別などに役立つ可能性がある。産科診療においては胎児の形態異常の診断に微細血流評価を付加することで、より診断精度の向上に繋がると考える。微細な腎臓や肺の血管構造が表現できており、形態異常がある場合の補助診断として利用できる可能性がある。

SlowFlowによる胎児肺の血管像

SMIによる胎内血管像

 

 また、微細な絨毛血管の集まりである胎盤においては、種々の組織・形態学変化、出血や梗塞、血流変化などの末梢血流の病態評価においても応用可能であると考えられる。正常胎盤を微細血流ドプラで描出したものである。各社、生体内での絨毛構造を末梢までsharpに捉えることができている。微細な血流の有無を評価することができるので、胎盤の評価においては胎盤実質なのか、出血してできた血腫なのか、出血後の梗塞であるのかといった質的な診断にも役立つ。

SCFによる脱落膜内血管像

Slow Flowによる絨毛血管像

SMIによる胎盤血管像