20.こっそり教えますOC/LEPからHRTへの移行のコツ

 2022年になりました。オミクロン株でコロナは終息していませんが、このシリーズも20回目になりました。今回は12月に天然型黄体ホルモン製剤を上市したメーカーの広報誌に掲載した内容の簡略版を御紹介しますので、詳しくは、「FUJI Infertility and Menopause News 2021年12月号」をご参照ください。

ちなみに、天然型黄体ホルモン製剤であるエフメノ®カプセルの情報もありますので、担当MRさんにリクエストすれば貰えると思います。エフメノ®カプセルは、眠前投与や周期的投与のみの用法記載があり新規発売なので投与期間制限や薬価も少し気にはなりますが、副作用の観点から将来的にHRTの長期投与において普及するかもしれません。

多くの臨床現場でみられますが、個人的には中高年女性におけるOC/LEPの一律の中止や、一律のHRTへの移行には反対の立場です。① 服薬目的を患者―医師間で明確にする ② 急激な減量や退薬を避けて ③ 医学的に必要と考えられる最低限の用量と服薬期間にとどめる処方に努めることがベターと考えます。

今回執筆の端緒は、OC/LEPガイドライン2015年版において、「40歳以上の未閉経者では慎重投与」というAnswerの文言に反応した一部の臨床医が、一律に40歳代女性のOC/LEP処方を即座に中止させる説明を患者に行う現象が各地で発生したからですが、40歳以上におけるOC/LEP服用は、使用による利益がリスクを上回るとされています(2020年版では表現が改められています)。また、40歳以上の女性は妊孕能が低下しているも効果的な避妊は必要とされおり、45~49歳の人工妊娠中絶数は年間1,300件を上回り微増傾向となっています(表1)。

特に40歳台、周閉経期の重要な2時期におけるOC/LEPからHRTへのシームレスな(切れ目のない)移行の処方例について(図1)に示しました。加えて、最近は原発性卵巣機能不全(POI)や早発卵巣不全(POF)の症例において、エストロゲン・プロゲスチン製剤を投与していることが少なくありませんが、(図1)に示した移行方法をOC/LEPに限らず、同様のアルゴリズムを適用できると考えられます。

 

 移行方法には、いくつかの臨床的なコツが存在します。卵巣摘出術による卵巣欠落症状の頻度や重症度が増加することから、エストロゲン製剤の急激な減量・中止を避けましょう。また、環境温度が高いと卵巣欠落症状は出現しやすいことから、数か月かけて薬剤移行する際には外気温が下降していく秋や冬季の前半に行うと、移行による卵巣欠落症状出現・増悪のデメリットを患者さんは実感しにくいと思います。

 あと、移行の際に筆者が処方する際のHRTは連続投与法を行っていることが多いです。最近ではOC/LEPにおいてフレキシブル投与、延長投与法が普及し始めているのもあり、毎月の消退出血である月経へのこだわりを患者からなくすことは意外と容易な印象です。しかし、何よりも重要なのは移行前後における患者さんとのコミュニケーションであり、服薬目的に対して副作用リスク等をはじめとする負担との兼ね合いについて十分に話し合い、移行中は卵巣欠落症状等に細心の注意を払うことで、ほとんどの症例において問題なく移行可能となります。

性ホルモン製剤投与に関する医事紛争の多くは、乳がんや心血管疾患等の合併症併発そのものが原因ではなく、定期的な評価や説明を行わずに他医の処方も含めて「漫然と」DO処方を長期継続している背景が存在します。シームレスに性ホルモン製剤を用いた治療を長期継続するには、定期的な評価や説明が必須であることに留意して、日常診療で普及されることを願っています。