日産婦医会報(平成19年03月)

オープン・セミオープンシステムで出産した妊婦の意識調査
(自由意見欄より)

医療対策委員会副委員長 小関 聡


はじめに

 日本産婦人科医会医療対策委員会では、全国で行われている産科オープン・セミオープンシステムの実態を調べる目的で、平成18年4月〜7月に全国調査を行った。その結果は、平成19年1月号付録医療と医業特集号に、「産科オープン・セミオープンシステム実施医療機関の実態と同システムにて出産した妊婦の意識調査」として掲載した。
 同調査によると、両システムに対する総合評価として、回答者195名中48.2%が「診療所と病院の便利さをもったこのようなシステムがよい」と積極的に評価し、29.2%が「産科医の減少を考えると止むを得ない」と現状是認の形で評価していることが判明した。両者を合わせ77.4%が同システムを支持していると考えた。
 調査では、「今回オープン・セミオープンシステムでお産をされて、感じたことやご意見を何でもお書きください」との趣旨の自由意見欄を設け、選択式回答では得られない生の声も聞いた。以下に診療所、病院別に、意見を類別化し、多い順に掲載した。但し同一回答者が2種以上の意見を記載した場合(近くて便利・説明が丁寧など)は2件として計上した。また、多数意見ではないが、ぜひ紹介しておきたい意見も載せた。なお、自由意見欄の回答率は診療所、病院それぞれ129名(66.2%)、127名(65.1%)であった。

診療所に対して

 診療所に対する意見で最も多かったのは「きめ細かで丁寧」が23件、次いで「気軽で話し易い」が19件、「安心」が17件、「待ち時間が短い」17件、「近くて便利」13件、「入院中病院にきてくれた」8件と続く。待ち時間に関しては逆に長いが6件あったが、「長くてもそれでも通いたい所です」という意見も1件あった。連携に関しては「よい」が6件に対し、「うまくいっているのか?」が11件あった。「出来れば同じ施設で健診と分娩をしたかった」が7件あった。

病院に対して

 病院に対する意見では「安心」が最も多く33件であった。次いで「きめ細かで丁寧」が30件、「設備やスタッフが充実している」が25件、「待ち時間が長い」が18件、「流れ作業的、雑である」が13件であった。6位以下になると「連携はうまくいっているのか?」が8件、「入院してからはよかった(外来は少々難あり)」が6件と続く。「同じ施設で健診と分娩をしたかった」は1件であった。

両者を見渡して

 診療所、病院どちらに対しても「連携」の面で不安を訴えた記述が比較的多くあった。異常時は病院が診てくれるという安心感がある一方、本システムの場合診療所で健診した夜に病院にかかることもあるわけで、そのような時に検査結果のみならず、診察所見などが病院医師に伝わっていないと不満が残るのだと考えられる。この解決には、ネットワークでのデータの共有化が第一である。
 「同じ施設で健診と分娩を希望」が診療所の欄に7件書かれていた(病院欄では1件だけだった)。主に診療所で健診を受け、何事もなく出産を終えた褥婦にとっては、居心地のよい気心の知れた診療所での分娩を望む気持ちが捨てきれないという心境が読み取れた。
 料金に関しては、国や自治体に対する別の自由意見欄に「健診料・分娩料の補助、無料化を求む」という形で多数書かれており、診療所や病院欄にはほとんど書かれていなかった。なお、同設問はオープン・セミオープンに限定していないので、その分析結果は本稿では割愛する。

おわりに

 自由意見で最も多く書かれた言葉は「安心」であった。なぜか「安全」という表現は一言もなかった。われわれが「安全」を提供すべく努力していることは、患者側から受け取れば「安心」と受け取られているようだ。
 ところで、分析していて困ったことがある。自由意見欄では厳しい指摘を記載していながらも、総合評価(選択肢)ではこのようなシステムがよいとしている意見が少なからずあったことである。システムの将来を思い遣る貴重な意見と受け取りたい。
 発展途上のこのシステムには、乗り越える問題は山程ある。日々の診療の中でよりよい方向を求めて一つひとつ解決し、よりよいシステムを求めて行くことを期待する。