日産婦医会報(平成17年09月)

病診連携に対する満足度調査
 患者の満足度よりみた病診連携の問題点

日本産婦人科医会医療対策委員会委員 角田 隆


はじめに

 病診連携に対する満足度調査で医療、患者サイドの双方とも満足度は高く、病診連携が社会的に受け入れられていることを平成17年1月発行の日産婦医会報「医療と医業・特集号」に掲載した。この中で紹介時の疾患を6群に分類したが、そのうち患者の医師に対する満足度が比較的低かった妊娠管理・分娩依頼、周産期救急の問題点を検討した。

1.妊娠管理・分娩依頼に対する問題点

 紹介元医師に対する満足度は100%、紹介先医師に対しては86%であった。“紹介先の設備が充実している”、“治療には満足している”など全体として良好であったが、紹介先医師に対する不満を自由記載欄のコメントより抽出し、妊娠管理・分娩依頼時の問題点を検討した。

(1) 診療時の医師に対する不満

 “混んでいて不親切”、“態度が事務的で流れ作業的”、“質問に対する対応が冷たい”、“異常が発見されたときの説明が不十分”などであった。医師と患者が対等の立場でコミュニケーションを図り、医師は患者が十分納得できる姿勢で接するよう努力するべきと考えられる。

(2) 診療体制に対する不満

 “予約時間が守られていない”、“待ち時間が長い”、“予診や診察時のプライバシーが守られていない”、“経腟超音波による診察時、多数の医師に対して講義が始まり苦痛だった”などであった。待ち時間に関しては分娩を扱わない施設に比べ患者が集中する可能性が高く、説明を丁寧に行えば行うほど診察時間は長くなると思われる。止むを得ない面も考えられるが、受付から診察、検査、投薬、会計に至る流れを簡素化する努力や、待ち時間を有効利用できるシステム作りを構築すべきと考えられる。個人情報保護法が施行されたことで、プライバシー保護が厳守される診療体制に改善されると考えられるが、医育機関での医師の教育との兼ね合いは今後に残された課題である。

(3) その他

 “出産時、若い医師で不安だった”、“紹介元医師の説明とズレを感じた”との記載がみられた。紹介元医師は紹介施設の医師の構成や診療体制を把握し、患者に提供することが大切である。さらに、紹介に至る妊娠経過や説明内容を紹介状に記載することで問題の解消は可能である。

2.周産期救急に対する問題点

 紹介先医師に対する満足度は92%、紹介元医師に対する満足度は86%であった。記載されたコメントより周産期救急の問題点を検討した。

(1) 紹介元医師の問題点

 “病名に対する説明が十分でなかった”、“検査結果が出てから搬送までの時間がかかりすぎた”、“紹介先への診療情報が十分でない”、“紹介する時期が遅い”、“健診時の質問に対する対応が悪い”との記述がみられた。これらのコメントは救急搬送される患者の心理状態を反映していると思われる。受診をしている施設で異常が発見され、その施設で対応不能の場合は、適切な説明と速な対応、搬送先に十分な診療情報の提供を行うのは当然と思われる。

(2) 紹介先医師の問題点

 “処置や緊急手術時に対する精神面のケアが不十分だった”、“他の病院から搬送されても、差別せず診てほしい”などの記載がみられた。予期せぬ搬送による動揺、搬送先 医師との信頼関係が構築されていないことに対する不安感を表していると思われる。

まとめ

 患者は、妊娠管理・分娩依頼での紹介時にはアメニティーを、周産期救急では安全性を求める。この差がコメントに表現されていると思われる。診療所での分娩は47%を占めるが、小規模施設でも安全性に配慮しつつアメニティー向上に努力した結果である。オープン・セミオープンシステムでの分娩が推進されつつあるが、妊娠管理・分娩依頼を受ける施設は、社会的ニーズを受け止め患者の医療への参加を奨励することで、アットホームな医療を心掛けるべきである。周産期救急では、周産期救急システムの構築、ローリスク・ハイリスク群分類のガイドライン作成を早急に行い、それに沿った病診連携に努めることで、患者の不安を取り除く努力が必要と考えられる。