日産婦医会報(平成16年6月)

テレビ会議システム

香川大学医学部附属病院医療情報部教授 原 量宏


【はじめに】

 平成16年4月5日、世界最先端のIT国家実現を目指すわが国のIT戦略となる「e-Japan 戦略II」を加速するため、IT戦略本部(第24回)が総理大臣官邸で開催されました。このようにIT化が政治施策としても重要視されています。そこで、今回はITの会議ツールとも言える「テレビ会議システム」について紹介します。

【テレビ会議システムとは】

 テレビ会議システムとは、公衆回線や専用線などを利用して、遠隔地にいる相手と顔を見ながらリアルタイムに会話ができるコミュニケーションツールです。企業や教育の場等で利用されていますが、通信衛星を利用した大がかりな装置を特別な場所に設置する、高価なわりに画質・音質が悪く実用的ではないといったイメージのためか、それ程浸透していないのも事実です。しかし、低価格化やブロードバンドの普及に伴う高速アクセス回線や安価な常時接続環境の整備によって、導入のハードルが低くなりました。また、あたかも普段の会議を行っているかのような印象を持てるレベルまで進化したことにより、パーソナルコミュニケーションツールとしての利用が広がっています。

【テレビ会議システムの利用例】

 身近な使用目的として、出張や外出などのコストや移動時間の削減はもちろんのこと、通常の電話とは違い、お互いの顔を見て話をすることで、より深いコミュニケーションを図れます。そのため、正確かつ迅速な意思決定を行うことが可能になります。また単なるコミュニケーションツールとしてだけでなく、例えば遠隔教育など、さらにハイレベルな情報のやりとりが要求される場面などでも活用されています。
 テレビ会議システムは、パソコン画面上の電子ボード(ホワイトボード)内で表や写真、あるいはキーボードから入力された文字など、さまざまなコミュニケーションツールとして活用できる機能、Word やExcel ファイル等の共有、インストールされていないアプリケーションの利用等の機能を有します。また、画面分割して同時に複数の画面表示や同時に何人もの発言やチャットも可能です。
 さらに授業やセミナーなどの場合、配信される映像を映像ファイル形式に蓄積しておくことで、汎用的なビューアであるWindows Media Player、QuickTime、Real One などで再生することも可能です。

【テレビ会議システムの利点】

 会議等のため相手方への訪問回数が減る、緊急時に素早く通信し、話し合いができる、電話に比べてきめ細やかなコミュニケーションが可能であるなどが挙げられます。

【安価になったテレビ会議システム】

 現在、市販されているテレビ会議システムを大きく分けると、テレビ会議専用のハードウエアを導入する専用端末タイプと、既に存在しているサーバやパソコンにテレビ会議用のソフトウエアをインストールするパソコン利用タイプの2種類があります。さらに、パソコン利用タイプはパソコンに専用のアプリケーションソフトをインストールするタイプとブラウザを利用するタイプに分けられます。
 テレビ会議サーバMCU(multipoint control unit 多地点接続装置)は、規模によっては数千万円にもなる高価な装置であること、設置場所の問題、管理者が必要になります。そこで、自社でMCU を設置せず、通信業者がASP(Application Service Provider インターネット技術サービスを提供する事業者)として提供する「テレビ会議多地点接続サービス」を利用するケースも増えてきました。
 最近取り上げられる会議システムでは、パソコンを使用してのテレビ会議システムが注目を浴びています。参加者側は、小型カメラ(USB 対応の数千円程度)によって映し出されるお互いの映像を見ながら、ヘッドセット(ヘッドフォンとマイク一体型のもので数千円程度)のマイクを通して、音声による会話も同時に可能にしたものを利用しています。

【まとめ】

 近年、パソコンおよび周辺機器の質的向上、価格低下、ブロードバンドの普及により、テレビ会議システムも一層利用しやすくなりました。会議の多い医会においてもテレビ会議システムのシミュレーションを考える時代も到来しつつあると思います。