平成9年4月7日放送

最近の周産期統計より

日母広報委員会副委員長 石井 明治

 本日は、厚生省統計情報部から発表された人口動態調査結果をもとに次の6点についてお話します。

 第1点は、合計特殊出生率につて

 第2点は、妊婦死亡率と周産期死亡率について

 第3点は、白然および人工死産について

 第4点は、児の出生体重と身長について

 第5点は、複産すなわち多胎について

 第6点は、婚姻件数と離婚件数について

であります。

 まず第1点の合計特殊出生率についてです。日本の総人口は明治初期には3500万人にも満たなかったのですが、その後増加し、大正をへて、昭和元年には6000万人を越えました。その後、第2次世界大戦の影響もあって増加率はにぶりました。しかし、戦後のべビーブームといわれた、昭和25年すなちわち、1950年には、人口増加率は過去最高の2.9%を示しました。人口総数としては、昭和42年、1967年7月に1億人の大台に乗り、昭和59年、1984年に1億2000万人を超えました。

 さて、厚生省統計情報部から発表された人口動態調査の平成7年確定数によりますと、出生数はl l 8万7064件で、前年の平成6年に較べて、約5万1000人の減少で、女性が生涯何人の子供を産むかを表す合計特殊出生率は1.42と史上最低を示しました。しかし、このたび発表された平成8年度の概況では、出生数120万3000とわずかではありますが、増加に転じました。一方、出生数は人口千対9.6と不変なので、平成8年度も依然として、

低出生率時代が続くものと思われます。

 次に、第2点の妊婦死亡率と周産期死亡率についてお話いたします。

 妊産婦死亡率の従来の定義は、年間出生数l 0万についての妊産婦死亡数のことであ

りますが、我が国の死亡率は平成元年より10を下回り、平成6年では6.1で、我が国より妊産婦死亡率の低い国は、カナダ、スウェーデン、オーストラリア、スイスの4か国だけとなっています。

 1980年の妊産婦死亡率は20.5、1994年に6.1ですから、14年間で約1/3に減少したことになります。しかし直接産科的死亡は1980年も1994年も全妊産婦死亡数の90%を占めております。妊産婦死亡の原因としては、1980年で高血圧すなわち妊娠中毒症が22.6%、これに分娩後異常出血、分娩前出血が続いております。l994年には単独で一番高い死亡原因は産科的肺塞栓症の23.7%で、これに分娩後異常出血と分娩前出血が続き、出血の合計32.9%でありました。したがつて、出血と産科的肺塞栓症による死亡にする対策がこれからの最大の問題点となります。

 平成7年度の妊産婦死亡は90件で、前年の76件に対し、14件の増加を示しております。

 次に周産期死亡についてですが、我が国での周産期死亡率の改善はめざましくl980年には11.7となって、46.6であつた1950年の1/4に減少しました。さらに1985年には10を割って8.0となり、世界のトップレベルになったのであります。

 死亡原因としましては、児側の原因として呼吸障害、未熟、感染、頭蓋内出血、また母体側の原因としては、妊娠中毒症、胎位異常(とくに骨盤位ですが)、胎盤早期剥離、前置胎盤、高年初産、羊水過多、多胎妊娠、その他の妊娠合併症などがあげられます。

 今回の報告では、周産期死亡は8,412件で、その内訳は妊娠22週以後の死産6,580件、

生後1週未満の新生児死亡1,832件で、前年より85件の減少でありました。乳児死亡

も同様に207件で着実な減少を示しています。

 第3点は自然および人工死産についてです。平成7年の死産数は39,403件で対前年度比で約3,600件の減少ですが、なかでも人工死産の約2,000件の減少が目立ちます。しかし、平成8年度は約4万件と推定され微増と考えられております。

 第4点は出生体重と身長についてであります。

 今回の発表では、出生時の体重と身長の平均値が新しく示されております。平成7年度では男児平均出生体重は3.l l kg、女児は3.03kgでした。また身長は男児平均49.3cm、女児は48.8cmと示されております。出生体重については、ここl 0年間低下傾向が続いております出生体重の減少傾向の原因としましては、産科外来での厳重な栄養指導、妊婦の出産年齢の高齢化、出産頻度の低下により第1子が多くなったことや、多胎妊娠の増加にともなう早産頻度の増加なども考えられます。

 第5点は複産すなわち多胎についてであります。

 Hellinの法則によりますと、双胎は80の分娩に1回、3胎は80の二乗の分娩に1回とわれてます。しかし、現在では、補助生殖医療の進歩により多胎妊娠の頻度が著しく増加してきております。厚生省心身障害研究斑の、平成6年度研究報告によりますと、1980年前半から、多胎妊娠が増加し、1984年から10年間で多胎の発生頻度が、双胎で1.2倍、3胎で2.7倍、4胎で6.7倍、5胎で4.2倍になったといわれます。

 最近行われました、複産調査によりますと、三胎以上の多胎が、平成7年には分娩件数l 0万対30.5で、昭和49年の6.2に比較して約5倍に増加していることが明らかになりました。

 第6点は婚姻件数・離婚件数についてであります。

 婚姻件数は79万4000組で、平成7年より2,000組の増加ですが、人口千対の婚姻率は6.4で変化はありませんでした。一方、離婚件数は20万6000組で、平成7年度より7,000組の増加、人工千対の離婚率は1.65と組数・率ともに過去最高でした。

 以上のマトメとしまして、妊産婦死亡および周産期死亡の低下が報告されていますが、一方、出生数の大きな増加はみられておりません。若い人たちが結婚出来るような、また妊娠して分娩、育児が出来るような社会ならびに経済環境の確立にむけて、行政も本腰を入れて取り組まねばならない時期にきているとおもわれます。