平成17年6月13日放送
  平成17年度 第35回全国支部社会保険担当者連絡会
  社団法人日本産婦人科医会常務理事 秋山 敏夫


 初夏を感じさせる陽気の5月22日、東京京王プラザホテルにおいて、第35回全国支部社会保険担当者連絡会が開催された。青地理事の開会の挨拶に始まり、佐々木副会長は来年度の診療報酬点数改定、妊婦健診、出産費用の保険給付化問題、医療法改正に伴う有床診療所のあり方など、産婦人科が抱える諸問題を提示した。

 中央情勢報告はまず、平成16年度事業報告および平成17年度事業計画を解説。
 事業報告書はブロック社保協議会での質疑事項がその大半を占めるが、提出議題のみで回答は記載しないことになっているので、回答については今回の資料であるブロック社保質疑事項を参考にして戴きたい。
 医会報の掲載記事は6月号に第34回のこの会の記事、7月号より診療報酬点数改定のポイントを、3月号には平成16年度社保の動きを掲載した。その他厚生労働省に対し風疹罹患妊娠女性における風疹抗体価についての要望書、日本医師会に対し妊娠・分娩の給付のあり方に関する要望書を提出した。社会保険委貞会を4回、社会保険部会を10回開催した。
 事業計画では診療報酬点数改定に向けての要望事項作成と関係諸団体との連携を深め、当局に実現に向けての働きかけをすることをメインに疑義解釈の解説や伝達、ブロック及び支部への連携及び会員への研修・伝達の一層の充実を図りたいと思っている。

 中央情勢報告の2番目は、厚生労働省との協議会について
 厚生労働省保険局医療課との医科診療報酬点数表及び関連通知等の項目総点検に関する協議会が平成17年3月23日厚生労働省審理室にて保険局医療課は麦谷課長、太田および中谷課長補佐が出席、日本産科婦人科学会社保学術委員会は前委員長の植木教授、委員の稲葉教授、外保連の松田先生、当会の西井副幹事長と私の5名が出席した。
 麦谷医療課長より、趣旨説明があり、医科診療報酬点数表及び関連通知等の項目の内、既に現場の実態を適切に反映していないと思われる項目等について、次回の診療報酬改定において整理したいと考えており、その間題点である医科診療報酬点数表及び関連通知の算定要件や施設基準の内容、表現等の総点検を各学会に呼びかけ行っている。次回の診療報酬点数改定ではこれらを加味し、点数設定したいとのことであった。 内容は

  1. 時間外加算の算定要件の明確化
  2. 妊婦の風疹診断における風疹HI抗体価と風疹IgM抗体価の併施
  3. 細胞診検査における婦人科材料の範囲の明確化
  4. 緊急帝王切開と選択帝王切開における文言の変更または点数の増額
  5. ボロー手術の点数の適正化
  6. 子宮破裂手術の点数の適正化
  7. 複数手術に係る費用の算出法として、子宮筋腫核出術時の子宮附属器癒着剥離の併施と子宮附属器悪性腫瘍手術と小腸、結腸、直腸切除の併施について
  8. 外来診療科算定時、高点数尿検体検査の通知の一部削除
  9. 腹腔鏡下腹式子宮全摘術の悪性疾患への適応

医科点数表の点数に関する要望

  1. 外来管理加算と腟洗浄の点数の不公平
  2. 婦人科悪性腫瘍手術の増額
  3. 流産手術の増額
  4. 腹式子宮筋腫核出術の増額
  5. 外陰・腟血腫除去術の新設ほか、外保連から提出されている手術の新設
  6. 外来におけるNSTの算定
  7. 骨盤位娩出術の増額
  8. 子宮附属器癒着剥離と子宮附属器摘出術の点数において、開腹手術と腹腔鏡手術で逆点の訂正

点数表からの削除・整理項目では、殆ど使用されない処置や手術の項

  1. 卵管内薬液注入法の削除
  2. 子宮頸管拡張及び分娩誘発法のうち頸管ブジー法の削除
  3. 処女膜切開術、処女膜切除術を輪状処女膜切除術に統合
  4. 腟絨毛性腫瘍摘出術の削除
  5. 腟中隔切除術の不全隔と全中隔を全中隔に統一
  6. クレニッヒ手術の削除
  7. アレキサンダー手術の削除

厚生労働省からは胎児医療についてと体外受精の保険適応についての質問があった。

平成18年度診療報酬点数改定に関する産婦人科の要望について

  1. 外来補助管理料の新設
  2. 特定疾患療養指導料の適応疾患の拡大、(1)卵巣機能不全、(2)更年期障害
  3. 腟洗浄、創傷処置等の処置料の改定
  4. 流産手術点数の改定
  5. 外陰・腟血腫除去術の新設
  6. 生体検査判断料の適応拡大、(1)分娩監視装置、(2)超音波検査
  7. NSTの外来使用
  8. 子宮卵管造影時の腔内注入手技料の点数改定
  9. エストロジェンレセプターとプロジエステロンレセプターの個別算定
  10. 子宮内膜症の診断のためのCA125精密測定

このうち1から8までは従来の要望事項の内、積み残し分であり、9,10は追加項目である。
以上を日産婦学会と共同で日本医師会に要望した。

その他の報告事項
 メサルモンF錠の供給停止の経緯と、風疹疑い妊婦の風疹HI抗体価と風疹IgM抗体価の併施の要望(白須常務理事)
 出産費用の保険給付化について、最近の動向と医会の対応について(佐々木副会長)

平成16年度ブロック社保協議会の質疑事項について

  • 胎児ジストレスに対し酸素投与し、吸引分娩した場合の酸素吸入の算定について手術に関連したものではなく、胎児蘇生に使用した場合は算定可。
  • 術後硬膜外麻酔の持続注入の期間について
    原則2〜3日、程度により4〜5日も可ですが、傾向的なものは不可となる。
  • 初妊婦への赤血球不規則抗体検査の算定について
    当該妊娠が妊娠歴にあたるかどうかであるが、今回の妊娠中に感作されている可能性もあり、初妊婦も可としたい。

支部提出議題について

  • 性同一障害の病名でのホルモン投与について
     性同一障害の診断は保険で可能。手術やホルモン投与は自費となるが、性別の変わった保険証があれば、保険診療が可となる。この場合、性腺機能不全等の病名がついている事が望ましいと考えられる。
  • 子宮内胎児死亡の疑いや他の方法で胎児心音聴取不能の病名による超音波検査の回数について 月1回まで。
  • 子宮内胎児死亡の症例で、母体が特に緊急を要する状況にない、吸引分娩や骨盤位娩出術等の産科手術や会陰裂創縫合術の算定の可否 原則的には不可、娩出時にやむなく大きな裂創ができた場合は保険適応となる。
  • 帝王切開術後に子宮全摘術を行った場合の手術点数の算定法について
    前述のように、厚生労働省の保険局医療科との協議会の序で、帝王切開を行い、その後出血多量等で子宮を摘出した場合、本来、緊急帝切の17800点と子宮全摘術の17600点を加えた35400点以上であって然るべきでるが、ボローの手術はそのいずれより低い、13200点は不合理である。として点数の改定を要望している。
    現時点では同一視野や同一皮切の手術の場合はどれか一つ一番高い点数のみの算定になる。
  • 子宮卵管造影剤として消化管造影剤のウログラフイン、尿路系造影剤であるオムニパーク、イオパミロンの可否について適応病名がなく算定はできない。
  • 産褥期の胎盤遺残で超音波検査の可否について
    超音波の算定はできない。
  • 腹腔鏡下手術で使用されるピトレシンの算定の可否について
    研修ノート71の82頁にも記載されているが、この薬剤に適応はない。

 以上、協議内容は多岐にわたり、検査や治療の保険適応の範囲が地区ごとに対応が違うケースもあり、白熱の論議が続いた。冒頭の佐々木副会長の挨拶にもあったように、産婦人科医療は経営的にも崩壊の危機に面している。現在の診療報酬点数表や保険制度には現場の医師として、明らかに不合理で矛盾を抱えたものもあり、今度の改定が医療安全や少子化対策や将来産婦人科を目指すものへの希望となる方向に進むよう出席者一同願いつつ、小村理事の挨拶で閉会となった。