平成17年4月25日放送
  平成17年度 社団法人日本産婦人科医会事業計画
  社団法人日本産婦人科医会副会長 清川 尚


 平成17年の事業計画を含めた医会の取り組みを述べさせて頂きます。昨年は内外における自然災害の多発が地球レベルの悲劇となりました。一方で、アテネオリンピックでは史上最高数のメダルを獲得し、紀宮様の納采の儀など明るい話題もありましてホッとしたところです。

 医療界では、まず、昨年4月にスタートしました臨床研修制度は、マッチングもほぼ順調に経緯してきましたが、一般病院で研修を希望する医師が今年も増加し、一般病院が臨床研修に果たす役割は一層重要になってきております。研修医が少なくなった大学病院における医療機能維持のため医師引き上げ問題は、小児科、産婦人科、麻酔科などの医師不足に代表されるように、地域の医療機関の医師確保が困難となり、地域医療に大きな混乱を来たし社会問題にも発展しています。我々産婦人科医会は女性一生の健康支援を担う立場として医療の質、安全、グローバル化を常に念頭において行動をしています。さらに産婦人科医療の変革を予測、見通す中で、来年に迫った医療制度改革も視野に入れた事業計画を策定しました。本年3月に開催されました社団法人日本産婦人科医会の第59回総会でご承認頂きました平成17年度事業計画をお話させて頂きます。
 厳しい財政状況の中、会員のための、産婦人科医療のための、社会の一員としての事業計画が発表されました。事業計画を遂行するにあたっては14部門で夫々の事業計画と予算が策定されています。

 まず「総務部」からお話し致します。総務部は庶務、対外広報・渉外、法制・倫理を担当します。庶務は総会、理事会等の各種会議の開催。財政問題等に関する検討委員会の設置、学術集会への支援、国際協力、研修シールの作成発行を行いますが、とくに財政問題等検討会では、難航する保助看法に関する対策を最優先とする委員会を設置予定と致します。対外広報・渉外ではマスコミ対応活動を行います。法制・倫理は母体保護法の適切な運用のための会員指導、産婦人科関連法規について関係当局との折衝等があります。
 「経理部」は無駄のない会計経理業務の管理、公認会計士の指導・監査の実施をお願いしてあります。
 「学術研修部」は会員の生涯研修を重視し、今年度の研修テーマの「妊娠初期の超音波検査」と「痛みの診断と治療」という研修ノート、CD-ROMを作成・配布します。また平成18年度の研修テーマは「妊娠中期後期の超音波検査」「婦人科における東洋医学」です。
 「医療安全・紛争対策部」としては、「医療事故・過誤防止事業」の推進、医療事故防止のための研修資料作成、医事紛争事例の対応、無過失補償制度の検討、学会との連携で「鑑定人候補者リスト」の整備を行います。
 「医療対策部」では、医会報に「医療と医業」の連載を行います。さらに有床診療所問題についての検討、情報伝達方法の検討、会員意識調査、定点モニター制度の有効利用を従来と同様に実施予定です。産科医療・看護に関するコ・メディカル対策としましては看護に於ける産科業務の対応、産婦人科看護研修学院への直接関与の全面廃止、および全国支部に於けるコ・メディカル研修会への補助金交付を予定。研修会の開催等を行います。
 「勤務医部」は「JAOG Information」の発行、待遇問題、増加している女性医師の有する諸問題を検討、産婦人科医師増加対策、ブロック勤務医担当者座談会の計画などを実施します。
 「社会保険部」は診療報酬点数改定に向けての対応と要望事項の作成。疑義解釈についての解説指導伝達、ブロックあるいは支部との連携、会員への研修伝達の徹底などを実施予定です。
 「広報部」は本会の方針・事業を伝達する大切な役割を担当しています。対外広報と連携をとり、情報伝達に努めたいと思います。
 「女性保健部」は、福岡での第28回性教育指導セミナーの開催、学校医、学校協力医へのアプローチを勧めます。また全国的な女性専門外来の開設増加につき、その実態、あり方ついても追跡調査、提言等を行う予定です。さらには「生活習慣病マニュアル」の作成、最近の知見を踏まえたH R Tの指針の策定に取りかかります。また、「産婦人科医のための介護保険入門」テキストブックの積極的な活用を勧めます。
 「母子保健部」は、国の「健やか親子21」事業への積極的関与、新生児蘇生技術の習得にむけてのプログラムの検討に取り組みます。またプレネイタルビジットの推進を従来にも増して勧めていきます。また継続してNIC Uに関する実態調査を行います。小規模事業所の母性健康管理に関する電話相談事業の積極的推進を支部を通してお願いする次第です。
 「先天異常部」では外表奇形等の調査・分析の継続、横浜市立大学に設置されています国際クリアリングハウスモニタリングセンター事業への協力を継続して行います。先天異常の発生因子および予防に関するマニュアルの作成を予定しています。また風疹ワクチン接種の推進、葉酸摂取の重要性の啓発を行います。
 「がん対策部」では、国の子宮がん検診のあり方にさらなる検討提言を行い、またマンモグラフィー検診精度管理中央委員会との連携をはかり、遺漏無き検診精度の確立に努力します。その他がん検診に関しては、婦人の健康第一のための検診精度の必要性をアピール致します。
 「情報システム部」は、昨年試験的に行いました電子会議を実現できるように努力致します。また会員専用ホームページの内容充実、非会員への情報公開、対外広報活動との協力関係の構築、電子メールの有効活用、メーリングリストの会員の紳士的活用の期待、セキュリティーについての検討、個人情報保護法を踏まえた本会の情報管理、ウイルスチェックの保守、産婦人科医療における電子化、ネットワーク化の推進やWeb版周産期電子カルテへの開発や事務運営の能率化を検討致します。
 「献金担当連絡室」は、伝統ある日母おぎゃー献金事業をますます推進すべく努力致します。少子社会に対応したおぎゃー献金事業の推進を行います。先天異常事業部に積極的サポートを行います。また先天異常の治療に関するパンフレットを作成し社会への啓発運動を行います。献金額の目標設置を試みて、会員の献金への積極的加担をお願いするつもりです。一般社会へのおぎゃー献金運動のPRをさらに勧めます。また継続的事業として献金の施設配分、研究配分に関する事業を行います。

 以上平成17年度の各部の事業計画を述べさせて頂きました。しかし私ども日本産婦人科医会は定款に定められています母子の生命健康を保護するとともに、女性の健康を保持・増進し、もって国民の保健の向上に寄与することを目的とすると謳われています。そして本会はその日的達成のため、

  1. 母体保護法の適正なる運営と実施の推進
  2. 女性保健に関する啓発
  3. 母子保健に関する調査研究
  4. 先天異常対策
  5. 会員の学術研修
  6. 会員の品位向上と福祉の推進
  7. その他

本会の目的達成に必要な事業が挙げられています。それぞれの目的達成のために本部支部役員が先頭となり、取り組んでいますが、社会は生き物、医療も生き物、政治も行政も生き物、関連団体も生き物ですので、会員の皆様方の積極的発言・提言が必要なことはいわずもがなです。本年度も何卒よろしくお願い申し上げます。