平成15年6月30日放送
  日本産婦人科医会全国支部社会保険担当者連絡会より
  日本産婦人科医会常務理事 白須 和裕

 

本日は、525日に開催されました第33回全国支部社会保険担当者連絡会の内容について報告させていただきます。

担当役員の紹介に引き続いて佐々木副会長より挨拶があり、「現在の医療をとりまく環境は、経済財政政策を主眼とした医療費抑制策が推し進められており、昨年4月の診療報酬マイナス改定に続く11月の老人医療費負担の増額、さらにこの4月からの被保険者本人の3割負担が加わって、医療機関の収入減少は一層拡大している。このままでは社会保障の理念が崩壊するとの危機感を持っている。」と医療保険を巡る最近の動向に危慎を示しました。また、佐々木副会長は、最近のニュースとして、厚生労働省が健康保険組合と医療機関の個別契約を条件付きながら認めたこと、従来から不合理性が指摘されていた“再診料の月内逓減制”が61日から廃止となったこと、与党3党が体外受精、顕微授精を受けている夫婦に対して年額10万円を2年を限度に支給することを来年度予算の概算要求に盛り込む方針であることを伝達しました。

中央情勢につきましては、私、白須よりお話させていただきました。

内容は、この4月から特定機能病院等82医療機関に導入された入院医療の包括評価について解説しました。3月に閣議決定がされた「医療制度改革の基本方針」の中でも、診療報酬体系については、ドクターフィー的要素、ホスピタルフィー的要素、患者の視点の重視を基本方針としており、入院の包括評価についても検討課題に入っています。今後、一般病院にも入院の包括評価が拡大してゆく可能性がありますので、この話題を取り上げました。

具体的には、DPCと呼ばれる診断群分類に基づいた1日当たりの包括評価、すなわち定額支払い方式が急性期入院に導入されています。包括される範囲は、入院基本料、検査、画像診断、投薬、注射、1000点未満の処置となっており、レセプトに診断群分類番号や分類決定に必要な患者基礎情報の記載欄が設けられています。また、出来高評価の部分も併用されており、入院基本料加算の一部、指導管理、リハビリテーション、精神科専門療法、手術、麻酔、放射線治療、心臓カテーテル法による諸検査、内視鏡検査、診断穿刺・検体採取、1000点以上の処置などが対象となっています。今後、一般病院に拡大されるような場合には、この包括と出来高の範囲の線引きが問題となってくる可能性があります。

診断群分類ごとの1日当たりの点数は、在院日数に応じて3段階の点数が設定されています。入院日数が短い内は平均点数に加算を、その後平均在院日数までは平均点数を、平均在院日数を超えた場合は平均点数より減算で算定することになります。

医療機関別係数と呼ばれる数値が設定されていますが、これは医療機関の機能を評価していた入院基本料加算の一部を係数としたものとその医療機関の前年度実績を担保する調整係数とから決められたものです。従って、同じ診断群分類に属する疾患で入院した場合でも、医療機関ごとに1日当たりの報酬点数が違ってくることになります。

診断群分類は医療資源を最も投入したもの1つに限定されていますので、退院時の分類が入院時のものとは異なるものとなった場合には、差額の精算が必要となります。このため、病院の事務処理機能として、入院ごとの診断群分類の情報の保存、データ登録変更機能、分類毎の包括点数、出来高点数の請求処理機能、請求額の差額を入院毎に調整計算する機能などが求められるので、すぐに一般病院に拡大することはないと思われますが、包括評価の方向は決まっていますので、仕組みについての理解を深めておくことは重要と考えています。

次に、来年に予定される診療報酬改定に向けて要望事項を取りまとめ、日本医師会診療報酬検討委員会に提出しましたので、ご報告します。

  1. 外来補助管理料の新設
     産婦人科の診察に際しては、必ず看護師の立ち会いを必要とします。チーム医療における看護師の診療補助行為を適正に評価するため管理料の新設を要望するものです。従来、産婦人科外来診療加算の新設を要望していましたが、産婦人科単独の加算は実現が厳しく、他科の協調も得られる外来補助管理料の実現を目指したいと考えています。

  2. 特定疾患療養指導料の対象疾患の拡大
     現在、婦人科疾患で特定疾患療養指導料の対象となるものが少ないため、卵巣機能不全と更年期障害を対象疾患とするよう要望するものです。これらの疾患の治療には医師およびコメディカルの計画的な療養上の指導が重要であり、この指導料の主旨に沿うものと考えます。

  3. 処置料の改定
     現行、外来管理加算は
    52点ですが、腟洗浄、創傷処置などを行った場合、却って点数が低くなる不合理が存在します。これを是正するために、少なくとも外来管理加算と同等の点数ヘアップするよう要望するものです。

  4. 産科手術点数の改定
     流産手術は、婦人科特有な手術であり、盲目的手術であるが故の高度な技術も要求される手術でもあります。手術料の大幅なアップを要求します。

  5. 外陰・膣血腫除去術の新設
     分娩時や外傷による外陰・腟腫を手術する際に、適応する手術がありませんので、具体的な手術名として点数設定を要望するものです。

  6. 赤血球不規則抗体検査を算定できる対象手術の拡大
     現在、外科街域では広く認められている赤血球不規則抗体検査ですが、産婦人科嶺域では帝王切開術だけに限られています。婦人科悪性腫瘍手術や子宮筋腫の手術の際にも算定可能とするよう拡大を要望するものです。

  7. 生体検査検査判断料の適応拡大
     分娩監視装置による検査や超音波検査を実施した場合、検査の解釈に判断料の算定を認めるよう要望するものです。

  8. NSTの外来使用
     入院患者に限り算定可能となっている
    NSTを、入院の必要性を判断する重要な検査として外来患者にも算定可能とするよう改定を要望するものです。

  9. 子宮卵管造影時の腔内注入手技料の点数改定
     従来から要望しているものですが、他の注入手技料に比べて点数の設定が低すぎると考えますので、適正な点数ヘアップを要求するものです。

  10. 静脈麻酔時の経皮的動脈血酸素飽和度測定の算定
     産婦人科手術では、静脈麻酔を行う頻度が高いものですが、患者安全の観点から、麻酔中の呼吸心拍監視は十分過ぎて当然のことと考えます。経皮的動脈血酸素飽和度測定の算定が制限されている現況は、医療事故防止の意味からも改善を要望したいと考えます。

 以上10項目を次回改定の重要項目として、関係各位とも協力の上、実現に向けて努力したいと思っています。

 この他にも、社会保険に関連した質疑応答が活発に行われましたが、その一部につきましては医会報6月号に紹介記事が掲載されていますので、ご一読いただきたいと思います。