平成15年6月9日放送
 日本産婦人科医会の経理の将来予測
 日本産婦人科医会常務理事 飯塚 貞男


 産婦人科の臨床医の皆様、本日は“日本産婦人科医会の経理の将来予測”と言うことでしばらく時間をいただき、お話させていただきたいと思います。私は現在、日本産婦人科医会で経理を担当させていただいております常務理事の飯塚と申します。

 御承知のように、医会の収入を、当期収入から見てみますと、その94%から96%が、前期繰越収支差額を加えた総収入から見てみましても81%から82%が、会員からの貴重な会費収入によって成り立っております。ところが、医会の会費収入は、近年、年々減少しておりますのが現況であります。AB会員が一本化し、医会経理の節目の年とされる、平成10年度における当医会の会費収入は4億2,843万4,000円であったものが、平成14年度には4億766万4,000円と、5年間で約2,000万円の減額となっております。 そこで、最近の会費収入の減少の要因1つに、会員数の減少があると考え、平成元年から平成14年度のまでの入会者と退会者平均値より会員数の減少傾向を検討してみたところ、毎年、平均85名の会員の減少があり、近年、漸増(ぜんぞう)傾向があることが認められております。ちなみに、平成14年度は141名の会員減少となっております。しかし、最近それ以上に会費の減少の大きな要因となってきたものとして、会費免除者の著明な増加があります。会費免除者の申請数は、平成9年度までは年間70名から90名を推移しておりましたが、平成10年度には100名を超し、それ以降は、年々増加し、平成13年度には161名、平成14年度205名、15年度は285名となっております。16年度以降はさらに増加することが予測され、16年には291名、17年度に288名、18年度290名、19年度228名。特に、15年度から18年度までは約290名と著明な会費免除者の申請数が予測されております。ちなみに、平成15年3月31日における医会の会員総数は1万2千765名、うち会費免除者は964名、会員総数の約(7.55%≒8%)が会費免除者となっております。

 これに加え、平成16年度より行われる新臨床医師研修制度の導入により、研修期間の2年間、すなわち平成16年度と17年度には、新入会員(準会員)の医会への入会は見込まれず、

16年度は
150名の準会員の減少が予測され、270万円の会費の削減となります。
17年度は
300名の準会員の減少、すなわち540万円の会費の削減となり。
18年度も
150名の準会員の減少、すなわち270万円の会費の削減が予測されることとなります。

 このように、会員の減少や、高齢化会員の増加にともなう会費免除者の増加、平成16年度より行われる新臨床医師研修制度の導入などにともなう、新入医局員の低迷などにより、医会の会費収入は年々減少しており、医会の財政問題も厳しいものがあります。坂元会長は就任以来、現在も事業を含む医会全般の見直しと、改善を施政方針とされております。即ち、社会的経済的環境をふまえると、会費値上げは望めないため、事業の後退にならずに重点主義に徹し、事業費の増加を防ぎ経費の10%削減を図るよう指導されております。
 そのため、医会では従来より、

  1. 医会報の発送業者の変更による年間20万円の削減
  2. .郵便からメール便への変更による年間20万円の削減
  3. 医会報と研修ノートなどの合同発送による年間200万円の削減
  4. 新事務所使用による会議費の年間約350万円の削減
  5. 医会報購読料の値上げに伴う年間100万円の収入アップ

 など、経費の節減や収入のアップに努力してまいりました。しかし、平成15年度会費収入予測額は3億9,370万6,000円となり、前年より751万円の減額、前年比98.1%となることが予測されることなどから、今後の医会の運営に係わる、基本方針について検討がなされました。
 検討事項の骨子は

  1. 行動する医会、show the flagとは
  2. 産婦人科医療のスキルアップ
  3. 産婦人科対外広報活動について
  4. 経費削減、事業のスクラップ&ビルド
  5. 各事業内容の再検討

 などであります。その結果、15年度の予算の作成に関しては、従来の削減策に加えて、さらに、

  1. 事業分担見直し
  2. 産婦人科学会との共同発送事業の実行
  3. 各担当部による協力・自助努力よる節約

 などによる事業費の削減を励行することと致しました。これらに加えて、15年度予算では偶然にも、[隔年ごとの担当者連絡会や、刊行物発行の回数による減額要因]などが加わり、平成15年度の事業費予算は2億3,709万9,000円と前年度予算より、3,144万4,000円の減額、前年度比88.3%と大幅な削減結果となりました。ちなみに、

[事業分担見直し]による減額としては、
従来、医会で行っていた先天異常部の事業が、15年度よりおぎゃー献金基金からの委託事業に移行したことによる先天異常対策費、780万5,000円の減額。経理上では委託料収入の増額となっております。また、産婦人科学会・医会の組織体制改正にともなう倫理委員会の一本化による、委員会の人数、25名から20名への削減額・65万円。また、献金連絡費は、「寄付行為の改正を機に、別法人になった事などにより、15年度からはすべて、財団法人おぎゃー献金基金のほうに移行したためのもので、130万円の削減となっております。
[産婦人科学会との共同発送事業]による削減額は
年間300万円から500万円になると見込んでおります。
[各担当部による協力・自助努力よる事業費の削減]では、
FAXや電子メールの利用よる会議開催の導入、通常経費の削減などにより750万円の削減がなされました。

 このような[事業分担見直し]、[産科婦人科学会との共同発送事業の実行]、[各担当部による協力・自助努力よる節約]などにより、平成15年度の事業費予算、前年度比88.3%と大幅な減額となったものと考えております。このような現況を鑑みて、15年度予算作成後に、医会では、今までとほぼ同等の事業を遂行した時のシュミレーションを再度行った結果、この様な努力にも拘わらず平成20年度には次期繰越金がマイナスとなることが推測されます。収入の減少は動かし難く、15年度予算でも10%の削減をしており、医会では、先ほど申し上げたように、今までも種々削減に努力してまいりましたが、これ以上の削減は事業の縮小につながる恐れが多分にあり、削減も限界にきていると考えております。必要な事業の縮小は出来ません。医会では、更に、少産・少子問題、有床診療所問題、医療安全対策問題、助産師問題、DPC問題など、時代に対応した事業の推進拡大が求められております。また一方では、通常総会は年1回であったものが、二回となるなど、今後の医会では、従来にまして経理基盤を充分に考慮にいれた、健全で安定した運営が求められると考えており、そのためには会員各位、各支部の深いご理解と、ご協力を賜らなくてはならないと考えております。これで、産婦人科医会の“経理の将来予測”を終了させて戴きます。