平成15年1月13日放送
 日産婦医会・学会ワーキンググループ活動状況について
 日本産婦人科医会常務理事 川端 正清


 本日は、日本産婦人科医会と学会ワーキンググループの活動状況について、ご説明いたします。

 多くの産婦人科医が日産婦医会と学会に所属する共通の会員です。もちろん、両会は別組織であり、目的とするところも違っていますが、業務の内容を検証しますと重複や、棲み分けができていないところも見られます。会員のために効率よく事業を行うことは、両会に課せられた責務でしょう。また、産婦人科入局希望者の減少や高齢化による会費免除会員の増加は、今後、両会の経理を圧迫していくのは明らかです。直近では、新医師臨床研修制度が始まる平成16年から2年間は新入医局員がいなくなります。このような背景から、学会・医会の強い要請により合同ワーキンググループが立ち上がりました。

従いまして、このワーキンググループの目的は、両会が抱える直近の問題並びに中・長期的な問題に対して協議を行い、医会と学会双方の役割分担の明確化、さらに経費節減のために両会が協力し、機能連携をすることにより効率化、活性化を図ることにあります。

 ワーキンググループは、平成13年9月に第1回が開催され、平成14年12月までに10回の会議を持ちました。またその間、平成14年12月4日付けで「中間答申」が出されました。

 ワーキンググループでは、学会・医会の業務を幅広く検証し協議を行ってきました。

 その主なものは、両会が発行している刊行事業の連携・分担、倫理委員会や社会保険関連委員会など専門委員会の連携、医事紛争業務の提携、また中期目標として特に学術・研修のあり方を取り上げ、卒後研修・生涯研修の運営・役割分担と学術集会の共同運営について検討しました。それぞれについて、解説致します。

 先ず、刊行事業の連携についてです。はじめに申しましたように、学会と医会には両会に所属する共通会員が多くいます。従来は、学会・医会ともそれぞれの会員に別々に送付してまいりましたが、会員に対して一体感を示す上でも、事務の効率化を図り、併せて経費節減の面からも、共通会員には共同発送が望ましいとの結論に達しまして、今年1月から両会の刊行物が同封されることになった次第です。なお、3月までは共同発送のテスト期間とし、正式運用は4月からです。共同発送による経費削減は、両会それぞれ500万円以上と試算されています。

 2番目に、専門委員会の連携が検討されています。倫理に関する委員会として、学会には「倫理委員会」と「倫理審議会」があります。医会には法制・倫理委員会があります。倫理問題に関する両会の役割を検討しました。その結果、学会には生命倫理など医学的倫理問題を扱うための「倫理委員会」を置き、一方医会においては、会員のモラルを扱ういわば「会員倫理委員会」を設置し会員指導を行うという棲み分けが合意され、この方向で次年度以降の実施に向けて検討を開始しました。
 また、社会保険事業に関する委員会としては、学会には「社会保険学術委員会」があります。一方、医会には「社会保険委員会」があります。社保業務について検討した結果、会員への社会保険の適正な運用を長年指導してきた医会が、引き続き会員指導をするだけでなく、学術的にも対応するため、機能を拡充するのが望ましいという結論になりました。一方、学会においては、学術的な検証を行う他にも、行政・外保連・内保連との窓口としての意義は大きいので、委員会として縮小はするものの、機能としては残す方向で検討を行うことになりました。

 3番目に、医事紛争業務の提携について検討されました。従来、医事紛争において鑑定人推薦の依頼に対しては、医会が支部との連携のもと、迅速に対応できるシステムを構築してまいりました。裁判の迅速化を図るため、平成13年7月、最高裁に鑑定人を選定をするための「医事関係訴訟委員会」が設置されました。このことにより、鑑定人の選定は関連各学会に依頼がいくことになり、産婦人科では日産婦学会が窓口となりました。
 最高裁からの依頼を受け、学会と医会は協力して180名から成る「鑑定人候補者リスト」を作成しました。今後は、学会が窓口となり、両会の委員からなる「鑑定人推薦委員会」を立ち上げることになりました。

 最後に、学術・研修のあり方についての、協議をご紹介します。
 研修は、専門医取得前の卒後研修は学会で行い、その後の生涯研修は医会が行うという分担が行われてきました。その役割分担に沿った形で、学会は卒後研修のため、日産婦誌に「研修コーナー」を連載し、医会は生涯研修のため、一年に2,3冊の「研修ノート」を発行し全国支部では研修会を開催して参りました。一方、学会が主催する「日本産婦人科学会学術集会」では生涯研修のための講演が開催されています。
 昨今、学会では学術集会会場の固定化が検討されています。また、医会では今まで「日母大会」と呼ばれていました集会を、昨年の熊本から「日本産婦人科医会学術集会」と改め、新たに学問的にも意義ある集会とする方向性を打ち出しました。

 これらの動きを踏まえ、研修の一本化や、分担のあり方、また連携、協調について検討がなされています。研修の問題は両会にとって重要課題であり、継続して検討していくことになっています。

 最近の重要課題としては、平成16年度からの「新医師臨床研修制度」があります。すべての研修医は産婦人科を研修することになりました。これを受けて、学会・医会ワーキング・グループは専門医制度委員会の協力を得て、「スーパーローテートにおけるカリキュラム」を作成しました。さらに、産婦人科のスーパーローテートには「スーパーローテート・マニュアル」の作成が必須と考え、その作成を提案しました。
 このように、研修一つとっても、卒後研修、生涯研修という問題にとどまらず、スーパーローテート、専門医試験、学術集会のあり方まで、多角的な検討が必要です。難題は山積していますが、学会と医会が「相互に連携して協力的に行う」ことにより、効率良く運営し、会員のメリットとなるよう、検討し、実現に向けて努力をする所存です。

 両会の会員先生方の、更なるご支援・ご理解をお願いいたしまして、本日の放送を終えます。