平成14年9月2日放送
 10月より実施の診療報酬新規事項について
 日本産婦人科医会常務理事 亀井 清

 

今晩は。日本産婦人科医会の亀井です。本日は、間近に迫った、この10月から実施される診療報酬新規並びに改定事項について、お話したいと思います。

 御承知の如く、平成14年4月1日から診療報酬点数が改定されました。今回の改定は、賃金・物価の動向や最近の厳しい経済動向などを踏まえ、1.3%ダウンの改定とされました。このため、基本診療料を含めた広範な項目についての合理化が行われるとともに、質の向上などの観点から重点的な評価が行われています。具体的には、その一つとして、効率的な医療提供体制の確保の観点から、基本診療料を含めた、入院医療及び外来医療の評価の見直しが行われています。この10月1日から適用される入院基本料及び特定入院料中、医療安全管理体制未整備減算及び褥瘡対策未実施減算に係る規定並びに老人一般病棟入院医療管理料及び老人性痴呆疾患療養病棟入院料に係る規定は、これに相当するものと言えます。

 厚生労働省より発令された告示「基本診療料の施設基準等」は、以前のものが改定され、本年4月1日より適用となりました。この中の第六に、入院計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制及び褥瘡対策の基準があり、この医療安全管理体制及び褥瘡対策の基準については各々、医療安全管理体制が整備されていること、褥瘡対策につき十分な体制が整備されていること、とあります。また、第八の「入院基本料等加算の施設基準等」の三に、急性期入院加算、これは急性期特定入院加算も含みますが、この施設基準があり、その中で、医療安全管理体制の基準を満たしていることと定められています。ただし、医療安全管理体制の基準に係る規定及び褥瘡対策の基準に係る規定は、本年10月1日から適用となるわけです。

 さて、ではまず入院基本料、特定入院料についてですが、通則にて、厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合、特別入院基本料を含む入院基本料および老人特別入院基本料・老人特定入院基本料を含む老人入院基本料から、次に述べる点数を減算するとなっています。ここで、「厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合」とありますので、基準を満たしていることを示す資料等を整備しておく必要があります。

 今までは減算項目としては、入院診療計画未実施減算、これは入院中1回、マイナス350点で、入院日から7日以内に入院診療計画を文書により交付することが要件とされ、院内感染防止対策未実施減算、これは1日につきマイナス5点で、MRSA等の院内感染防止のための設備・体制を整備することが要件とされる、この二つでしたが、本年10月より新たに、医療安全管理体制未整備減算、これは1日につきマイナス10点となっており、褥瘡対策未実施減算、これは1日につきマイナス5点となっていますが、この2項目が加わったわけです。2項目の減算に関わる内容については後で述べます。

 さて、この医療安全管理及び褥瘡対策に係る体制を整備した上で、本年9月1日から10月16日迄の間に届出をしなければなりませんが、IO月16日までに届出書の提出があり、10月31日までに受理されたものについては10月1日に遡って減算せずに入院料を算定することができます。届出の様式については、別途定められています。

 通則中の「厚生労働大臣が定める基準」において、医療安全管理体制に関する基準については、先に述べた「基本診療料の施設基準等」の他に、「入院基本料等の施設基準等」の中で、次のように詳しく定められています。その内容は、当該保険医療機関において以下の対策が行われていない場合は、入院基本料等より減算となるとしまして、

  1. 安全管理のための指針が整備されていること。安全管理に関する基本的な考え方、医療事故発生時の対応方法等が文書化されていること。
  2. 安全管理のための医療事故等の院内報告制度が整備されていること。院内で発生した医療事故、インシデント等が報告され、その分析を通した改善策が実施される体制が整備されていること。
  3. 安全管理のための委員会が開催されていること。安全管理の責任者等で構成される委員会が月1回程度開催されていること。
  4. 安全管理の体制確保のための職員研修が開催されていること。安全管理のための基本的考え力及び具体的方策について職員に周知才徹底を図ることを目的とするものであり、研修計画に基づき、年2回程度に実施されることが必要である、となっています。

 褥瘡対策に関する基準は、同様に次のように定められています。当該保険医療機関において以下の対策が行われていな場合は、入院基本料等より減算となるとしまして

 

  1. 当該医療保険機関において、褥瘡対策に係る専任の医師、看護職員から構成される褥瘡対策チームが設置されていること。
  2. 当該医療保険機関における日常生活の自立度が低い入院患者につき、別途様式を参考として褥瘡対策に関する診療計画を作成し、褥瘡対策を実施すること。
  3. 患者の状態に応じて、褥瘡対策に必要な外圧分散式マットレス等を適切に選択し使用する体制が整えられていること、となっています。

 次に、入院基本料に係る平均在院日数に関してですが、これもこの10月から改定され一般病棟入院基本料、これは1日につき算定するものですが、この中の平均在院日数28日以内のI群中の一般病棟入院基本料1については、25日以内が21日以内、一般病棟入院基本料2については、28日以内が26日以内となりました。

 さて、次に、入院基本料加算についてですが、冒頭述べましたように、厚労省通知「入院基本料等加算の施設基準等」の中の、第3:急性期入院加算の届出に関する事項の1:急性期入院加算の施設基準の(2)に、医療安全管理体制の基準を満たしていること、ただし、当該規定は平成14年9月30日までの間は適用しない、別途様式に従い届出の必要がある、とあります。

 入院基本料等加算項目の一つ、急性期入院加算、これは155点で、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合している旨、地方社会保険事務局長へ届け出る必要があるものとされています。この要件は、今までは、(1) 紹介率30%以上、(2) 一般病棟の平均在院日数20日以内、(3) 診療録管理体制加算の届出、(4) 医療安全管理体制整備、14日を限度に加算とあったわけですが、この10月以降は、(2) の一般病棟の平均在陰日数20日以内が、17日以内となりました。これも、やはり本年4月の社会保険診療報酬等の改定における効率的な医療提供体制確保の中の、入院医療の評価としてみられるもので、入院基本料・平均在院日数を見直したものと言えます。

 以上、一般病棟入院基本料I群1若しくは2又は急性期入院加算若しくは急性期特定入院加算を算定する医療機関に係る平均在院日数については、本年7月から9月までの3ヶ月間の実績値を届け出ること、但し、本年6月から8月までの3ヶ月の実績により9月中に届出書を提出することも差し支えないとされ、本年10月16日までに届出書の提出があり、10月31日までに受理されたものについては、10月1日に遡って算定することができるとされています。

 なお、その他と致しまして、同じく本年4月の改定中、包括医療の見直しとして、薬剤・検査料等を包括した包括点数の評価の見直し等を行うとしていますが、10月からの改定に、これに該当する老人慢性疾患外来総合診療料(いわゆる外総診)、及び老人慢性疾患外来共同指導料の廃止がもられました。 

 また、医療保険体系と患者負担の関連では、本年10月から、年齢別による保険給付割合の改定、70歳以上老人一部負担金等の改定、70歳未満の一般医療対象者の高額療養費制度、自己負担限度額の改定が行われます。即ち、70歳以上の高齢者の患者も、この10月から、現在は診療所にある定額負担制が廃止されて定率1割に変わり、高所得の高齢者の負担は定率2割に引き上げられ、1ヶ月の負担上限額も上がることになります。

 その他、特に産婦人科関連では、配偶者出産育児一時金の配偶者要件が撤廃され、家族出産育児一時金が創設されます。配偶者に限らず被扶養者の出産に対して一時金を支給するもので、金額は30万円で現行と変わりません。

 以上、本年10月から実施の診療報酬新規並びに改定事項についてのお話でした。