平成14年6月10日放送
第32回全国支部社会保険担当者連絡会
日本産婦人科医会幹事 秋山 敏夫
 

 本日は、5月26日に行われた、第32回 全国支部社会保険担当者連絡会について、お話致します。この連絡会は、毎年この時期に全国の社会保険審査委員が集まり、審査の上で問題となる点を協議する場であります。
 今回は、京王プラザホテルにおいて、全国より91名の社保担当者、本部役員・社保委員会委員が集い活発な討論が行われました。

 まず青地理事による開会の辞で始まり、坂元会長の挨拶、佐々木担当常務理事、宮本本会社会保険委員会委員長、西島日産婦社保学術委員会 委員長の挨拶がありました。

 連絡・協議事項
(1) 中央情勢報告:佐々木常務理事
 今回の改定は国民 皆保険制度始まって以来のマイナス改定となり、日本医師会選挙にまで多大な影響を及ぼした。坪井会長は医業経営に及ぼす影響を把握するため、緊急レセプト調査に乗り出し、データを収集、早急に中医協の開催を要求していく考えを示したことを述べた。

(2) 平成14年4月診療報酬点数改定とその運用について
 今回の改定では、最近の厳しい経済状況を踏まえ、-2.7%の改定が実施された。
基本診察料を含めた多くの項目についての合理化を考慮し、医療の質の向上等の観点から重点的な評価が行われた。
主な改定内容は

  1. 質の高い急性期 入院医療の評価
     急性期の入院医療の質の向上と効率化を図るため、急性期 入院加算、急性期 特定 入院 加算の施設基準に「診療録 管理体制の整備」「退院指導計画の作成・実施」等が追加された。
  2. 患者の状態に応じた慢性期 入院医療の評価
     医療保険と介護保険の機能分担の明確化を図るため、療養病棟 入院基本料、有床診療所 療養病床 入院基本料について、在院日数による逓減及び包括範囲の見直しが行われた。
  3. 長期入院に係る保険給付の範囲の見直し
     長期入院患者の入院基本料を特定療養費化し、その一部を患者の自己負担とすることにされた。
  4. 医療 安全対策等の評価
     医療 安全管理 体制の整備や褥創対策が行われていない場合に減算されることになった。
  5. 入院基本料の見直し
     平均 在院 日数 要件の見直しや、夜間 看護体制の評価の見直し、有床診療所の看護体制の評価の見直し等が行われた。
  6. 再診料・外来診療の見直し
     基本診察料の改定では、再診料と外来診療の「月内逓減制」が導入された。
  7. 在宅医療の評価
  8. 小児医療の充実
  9. 生活習慣病等への対応
  10. 手術料の体系的な見直しと施設基準の見直し
     ここでは、手術料の各項目の相対関係の評価が見直されると同時に、施設基準が設定され、この基準を満たさない場合は手術点数の70%しか算定できなくなった。
  11. リハビリテーションの評価の適正化
  12. 新規技術の保険導入
     主なものとして、ポジトロン断層撮影等が保険適用となった。
  13. 薬剤投与期間等に係る規制の見直し
     薬剤の長期投与が原則、廃止された。ただし、麻薬及び向精神薬、発売後一年   以内の新薬については投与期間制限が設けられた。
  14. 処方せん料の見直し
     医薬分業の進展、後発医薬品の使用環境整備の観点から、処方せん料の引き下   げと、後発品を含む処方とその他の処方に分けた点数設定がなされた。
  15. 205円ルールの見直し
  16. 特定療養費の見直し、外総診の廃止等

個々の項目

  1. 特定 療養費制度の見直しが行われ、予約診療に係る要件の緩和、薬事法承認後
     保険収載前の医薬品投与の問題、長期入院に係る給付の見直し等があった。
  2. 再診料・外来診療料の評価の見直し
     月内逓減制が導入された。
  3. 入院料について
     入院期間の確認について、退院証明書の発行や当該患者に関する問い合わせに対応できる体制作り等の義務化が示唆された。
  4. 指導管理料では点数のダウンが主となる
     生活習慣 指導管理料が新設された。改正前は運動療法 指導管理料としてあったもの。高脂血症、高血圧症又は糖尿病を主病とする患者の治療において生活習慣に関する総合的な指導及び管理を行った場合算定できる。
     慢性疾患としてこれらの病気が主になる場合であり、妊娠との合併で発症した場合はなじみにくいと考える。
  5. 検査に関する改正点
     検査法の整理と点数のダウンが主なものであった。
  6. 投薬料
     薬剤投与期間等に係る規制の見直しが行われた。
     薬剤の長期投与が原則、廃止された。ただし、麻薬及び向精神薬、発売後一年以内の新薬については投与期間制限が設けられた。
     処方せん料では、後発医薬品を含むか否かによって、点数が異なる。
     注射料では今回、外来 化学療法加算が新設され、外来で化学療法を行った場合に加算点数が認められる。
  7. 処置の項
     術後創傷処置に期間が設けられ、算定期間が術後14日以内とされた。
     また湿布処置は前回までは単独項目であったものが、消炎鎮痛処置の項に整理された。
  8. 産婦人科手術点数の改定
     手術料の大部分はアップした。しかし、使用頻度の高い流産手術が2100点から1910点に減点された。その他では、腟ポリープ切除術が1230点から1040点に、尖圭コンジローム切除術が1230点から1040点に減点された。
     新たな項目では、前に述べたように施設基準が新設された。
     産婦人科領域では、女子外性器悪性腫瘍手術、腟壁悪性腫瘍手術、造腟術の2〜5、卵管鏡下卵管形成術、子宮附属器悪性腫瘍手術が対象となる。

 通知の一部に追加
 「緊急帝王切開術は、選択帝王切開以外であって、経腟分娩を予定していたが、母体及び胎児の状況により緊急に帝王切開になった場合に算定する」とされ、単に手術予定日が早まったなどでは算定できなくなった。

 さらに、手術点数に含まれ、別途算定できなくなった項目がいくつかある。
 一つ目は、注射の手技料。手術当日に手術に関連して行う、注射の手技料は算定できなくなった。
 二つ目は、衛生材料等の中に外皮用殺菌剤が追加され、イソジン等による術創に対する消毒薬が算定できなくなった。


 新生児介補加算が削除された。当会が以前から案内していたように、健康な新生児に対しては、自費の新生児管理保育料で算定されたい。

(3) 平成13年度ブロック社保協議会の質疑事項について

  1. ペンタゾシンとジアゼパム混合静脈内注射に静脈麻酔料の算定の可否
     これらの薬物は静脈麻酔剤ではないので、静脈麻酔料の算定はできない。
  2. 絨毛羊膜炎と切迫早産病名で顆粒球エラスターゼと癌胎児性フィブロネクチンの同時算定の可否
     検査項目が異なるので同一日であっても算定可能、ただし、週一回の算定となる。

(4) 支部提出議題

  1. 腟錠の最大投与量について
     今回の改定で外用薬の投与期間は制限が外され、何日でも処方できるようになった。しかし、腟炎の予見できる治癒までの期間は一般に7日間で十分であると考えられ、又、過剰使用ではかえって悪化をもたらす原因にもなりかねない事を考慮し、従来通り7日間とした。しかし、萎縮性膣炎の場合は14日以上の投与も可とされた。
  2. 総合周産期特定集中治療室管理料を算定できる条件として、分娩前からその施設に入院しているか、または母体搬送であっても分娩前から適応疾患が発生している場合とされた。そのため、分娩後の出血性ショックなどで搬送された場合は、救命救急入院料あるいは特定集中治療室管理料を算定されたい。