平成12年11月20日放送

 平成12年度全国支部がん対策担当者連絡会より

 日母産婦人科医会幹事 大村 峯夫

 

 本日は去る11月12日に東京の京王プラザホテルにおいて行われました、平成12年度全国支部がん対策担当者連絡会についてお伝えいたします。

 この連絡会は全国支部のがん対策担当者の先生方に年一回お集まりいただき、婦人科がん検診に関わる諸問題を支部間、あるいは支部・本部間でご協議いただき、支部からの要望を伝え、また本部よりの伝達事項を支部の会員にお伝えいただくために開催されております。また、婦人科がん検診に関連の深い講師をお招きして、その時々の新鮮な話題について講演していただく企画も、例年実施しております。

 支部がん対策担当者の先生方のうちの多くは、前日開かれた、第9回婦人科がん検診学会にも出席され、最近の話題について熱いディスカッションをしておられました。

 本年度の婦人科がん検診学会は、前の日母がん対策委員長の利部岩手医大教授が会長で、子宮がん検診や卵巣がん検診に関する話題の他に、日母からの要望もあって、「乳がん検診−マンモグラフィ導入に対する取り組み」と題し、ワークショップが行われました。

 今年3月に厚生省老人保健課長通達があったことを受けて、本格的に乳がん検診においてマンモグラフィ導入に取り組むことになりましたが、各自治体や医師会などでどのように取り組み始めているのかを、現場からの生の報告という形で発表していただきました。

 まだ地域毎の事情もあり、模索中である支部が大部分ですが、精度を高めてがんを減らそうと積極的に取り組む姿勢が強く感じられました。来年度にはその成果が報告されるものと思われます。

 そのほか、古くて新しい話題の「新しい受診者の“掘り起こし”」や、「がん検診における婦人科細胞診精度管理の動向」に関するシンポジウムなど、実地医家に関連の深い議論が行われました。

 会員の先生方にはすでにご存じのことと思いますが、本年もがん検診に関する新しい動きが見られました。先に述べましたように、3月31日付で、国が乳がん検診にマンモグラフィーの導入を決定し、具体的なガイドラインを提示してきたことです。

 これらの問題を中心に、連絡会では5時間にわたり、熱心な協議が行われました。

出席者は前原副会長をはじめ74名で、連絡会は前原副会長の開会の辞と挨拶で始まり、この中で前原副会長は、健康日本21のことにも触れ、検診者の健康教育も同時に行うべきであると結びました。続いて永井がん対策担当常務理事、長谷川がん対策委員会委員長、関谷日産婦学会婦人科腫瘍委員会副委員長の挨拶がありました。

 次に報告事項がありました。永井常務理事は中央情勢報告の中で、日母方式子宮がん検診に関する確認事項を説明しました。また、乳がん検診には視触診に加えてマンモグラフィー併用のガイドラインが提示されたこと、また今後はがん検診の有効性評価は、きちんとした疫学的手法をふまえた、説得力のあるものとしなければならないことを説明されました。また一般日母会員に、各種情報が正しく十分に伝達されていないとのクレームがあることを話し、この連絡会を有効にするためにも、各支部より派遣されたがん対策専門家である担当者の先生方は、その点を十分注意の上、支部への伝達をと要請しました。

 引き続き、土橋副委員長より「乳がん検診のためのマンモグラム読影研修会」報告が行われました。この中で土橋副委員長は、4回の研修会で延べ172名の受講者があり、その成績はA評価が5名、B−1+B−2が59名、Cが67名、Dが41名であったと報告しました。評価基準について簡単に説明いたしますと、A評価の方は指導的立場に立てる読影力を持っているといって良いでしょう。B評価の方は、一応一人でマンモグラムを読影して良い力量といえます。C評価の方はA評価の方と共同で読影する事になり、D評価の方は今後一層の研修・研鑽が必要です。

 もちろんD評価の方がマンモグラフィ読影をしてはいけないわけではなく、システム上必ず専門家による二次読影が行われることになりますので、見落とし事故の可能性はまずありませんが、視触診の際に、読影力のある方が読影しながら行うのが、最も精度が高くなるというデータがありますので、できるだけ読影力をつけていただくのが望ましい形となります。

 このように、ほとんどの受講者はマンモグラム読影経験がないにも関わらず、研修会終了後はほぼ80%の先生が読影可能で、40%近くが単独で読影できると評価されました。

 このように研修会の有効性が認められましたが、いくつかの問題点も指摘されました。一つはあまりにも高密度・長時間の内容のため、受講者の疲労が特に年輩の先生方に強かったこと、また、一度獲得した読影力が、読影を持続し続けなければ維持できないのではないかということでした。こういったことをふまえて、今後も研修会を継続して行きたいと述べました。

 この後大村幹事より例年行っている、婦人科がん検診料金に関する、各支部のアンケート調査結果の報告が行われましたが、本年度は平成12年度の料金を調査し、併せて、1.各支部の成人病検診管理指導協議会の、乳がん部会に産婦人科医が参加されているか、2.支部や医師会、自治体の婦人科がん検診事業

に対する取り組み方、3.乳がん検診数の逐年変化の印象C産婦人科とそれ以外の科の乳がん検診数の対比D婦人科診療所におけるマンモグラフィ所有数などを調査報告いたしました。

 婦人科がん検診料金はほぼ例年並でしたし、予想通り、多くの支部で成人病検診管理指導協議会乳がん部会に、日母会員が参加されていることがわかりましたが、協議会そのものがあまり活発に活動していない、もしくは予算を減らされて休眠状態であるとの声も聞かれました。また乳がん検診数は多くの支部で平成10年、11年ともやや減少との印象を持っておられるようです。産婦人科と他科の乳がん検診数は約4:6となりましたが、これは支部によってかなりのばらつきがあり、産婦人科が過半数というところも少なくありません。マンモグラフィの所有は回答のあった31支部の平均では1支部あたり2.5台とこれも予想通り少ない数字が出ております。

 午後は特別講演が行われましたが、はじめの演者は日本医師会の桜井常任理事で、まず日医が独自に全国3,000以上の市区町村を対象に行った、がん検診に関するアンケート調査結果を話されました。結果は厚生省の発表とほぼ同じで、一般財源化後も検診数等には大きな変化は起こっていないというものでした。続いて、特に乳がん検診についての日医の方針、考え方について述べられました。これによりますと日医は同時併用のB方式、すなわちマンモグラフィは別の施設でとった上で、それを持ってかかりつけ医を受診し、読影しながら視触診するやり方が精度が高く、これを推奨している事、しかも妊娠や疾病等のない婦人が産婦人科医を受診することとなり、かかりつけ医として選ばれる良い機会であるとも説明されました。

 また読影する事による見落としを恐れる声に対しては、もちろん読影力がある方が良いことは間違いないが、必ず経験を積んだ読影医が二次読影をするシステムとなるので、それを恐れず、積極的に体制づくりをし、参加されるように、医師会は研修会などの機会を提供することでバックアップしたいと話されました。

 この後、厚生省老人保健課の規安課長補佐が講演されました。この中で、保健事業第4次計画の概要と、特に今回ガイドラインが通達された中のがん検診に係わる部分を詳しく説明されましたが、乳がん検診については、各自治体の裁量範囲で努力されることを要請されました。

 続いて支部提出議題に関する協議に移りましたが、やはりマンモグラフィ導入に関するものが多く、兵庫支部からはアンケート調査の結果報告がありました。また国の補助金復活などに関する質問もありましたが、厚生省からは、復活はほぼあり得ない、との回答でした。しかしながら日医桜井常任理事は、医師会はこれからも予算復活をねばり強く要望し続けていく、と話されました。また支部から、卵巣がんや子宮体がん検診を積極的に取り入れていきたい、との発言もありました。

 がん検診に関しては非常に厳しい状況が続いておりますが、各支部とも熱心に取り組み、いままで築いてきたがん検診を縮小しない、精度を落とさない、との熱い決意が感じられました。また、日医の桜井常任理事の、かかりつけ医として認められる良い機会だ、医師会は強力にバックアップするとのお話が、心強く感じられました。

 今回も大変内容のある連絡会となりましたが、会員の皆様にも、がんの撲滅に向けて、さらなる努力をお願い申しあげます。