平成12年10月2日放送

 平成12年度診療報酬改定のポイント

 日母産婦人科医会常務理事 佐々木 繁

 

本年4月1日、診療報酬点数改定が行われましたが、今回の改定は診療報酬体系改革の第一歩と言える内容になっております。本日は、産婦人科に関する主な項目について解説させていただきます。

病院外来機能とかかりつけ機能の明確化をはかり、医療の質の向上と医療提供の効率化を図る目的で、200床以上の病院に対しましては外来診療料を新設し、診療所に患者さんを逆紹介した場合を評価しました。200床未満の病院、診療所に対しましては再診料外来管理加算を52点アップし、患者への継続性のある医学的管理を評価する継続管理加算(初診料を算定しない月に1回、5点)を新設しました。

外来診療料は再診は再診料に代えて簡単な検査、処置などを包括したものであります。

逆紹介では紹介元の診療所でなくてもよく、また、紹介患者さんでなくてもよいことになっております。

継続管理加算では、本加算を算定した月に疾病が治癒し、当月中に新たに初診料を算定した場合においては、先の継続管理加算は算定できます。

今回の改定の最大のポイントは、入院環境料、看護料、入院時医学管理料などを統合、簡素化して入院基本料を新設し、これを医療機関の機能に応じ、病棟等の類型別に10種類を設定、更に機能を区分し1群及び2群の類型を設定、同一類型の入院基本料は、看護配置基準、平均在院日数等により区分したことであります。

改定前は入院後、診療計画書作成により350点が加算されましたが、今回の改定では、診療計画書作成は当然のこととされ、未実施の場合に入院中、1回350点の減算が設定されました。なお、自費入院中の患者さんが保険扱いとなった場合は、保険扱いとなった日より7日以内に作成します。また、院内感染防止対策未実施の場合は1日につき5点減算となり、今回の改定でマイナス点が設定されたのが大きな特徴であります。

次に、医療の質の向上と効率化を図るため、短期滞在手術の環境整備を図りつつ、基本診療料、検査料、画像診断料、麻酔料等の全部又は一部を包括して、短期滞在手術基本料を新設しました。本基本料には1と2がありますが、1に該当する産婦人科対象手術はなく、2が算定できる手術として産婦人科では子宮頸部切除術、子宮鏡下子宮筋腫摘出術、子宮付属器腫瘍摘出術(腹腔鏡によるもの)が対象とされ、入院翌日までに退院した場合、1手術について5000点となります。しかしながら、本基本料は退院からおおむね3日間の患者に対して、自院若しくは提携医療機関による24時間緊急対応が可能であること、常勤の麻酔科標榜医師が複数勤務していること等の施設基準が厳しく、従来どおりの出来高算定が主流と思われます。

手術料につきましては、外科系学会社会保険委員会連合(いわゆる外保連)の試案をもとに、人件費構成、技術難易度等から見て現行点数体系の相関関係の調整、特定の技術の評価を重点的に見直しました。その結果、多くの手術点数は15乃至20%アップとなり、産婦人科で減点となりましたのは腟絨毛性腫瘍摘出術のみであります。

また、産婦人科領域では、子宮鏡下手術として子宮中隔切除術、子宮内腔癒着切除術、有茎粘膜下筋腫切出術、子宮内膜ポリープ切除術及び腹腔鏡下子宮筋腫核出術が新設されました。

複数手術につきましては、適応の拡大と解釈の変更が行われました。これまでの子宮全摘術と3種の手術、腹腔鏡下腟式子宮全摘術と3種の手術、帝王切開術と4種の手術に、今回子宮筋腫核出術(腹式によるもの)と開腹による子宮付属器腫瘍摘出術、子宮外妊娠手術と子宮付属器癒着剥離術、子宮付属器腫瘍摘出術(開腹によるもの、腹腔鏡によるものいずれも可)が追加されました。また、点数の高い手術が主たる手術で、従たる手術(1つのみ)50/100を加算することになりました。なお、主たる手術だけでなく従たる手術についても深夜、休日等の加算が認められますが、従たる手術の所定点数には注による加算は含まれません。

つぎに疾病構造の変化、新薬に係る副作用情報の収集・提供体制などの整備をふまえて、外用薬の一般的な投与期間が7日から14日に、同じく外用薬の長期投与期間が14日又は30日から30日に見直され、長期投与の対象の拡大が行われました。

1回90日分を限度として投与する内服薬疾患については、改正前の「卵巣除去後機能不全」は「処置後卵巣機能不全」に、「その他の卵巣機能不全」は「無月経、過少月経および稀発月経」と「過多月経、頻発月経および不規則月経」に変更され、「閉経期およびその他の閉経周辺期障害」が適応追加となりました。

Icd-10によれば、「過多月経、頻発月経および不規則月経」には機能性子宮出血、不正子宮出血、思春期出血、排卵出血、閉経前過多出血なども含まれます。また、「閉経期及びその他の閉経周辺期障害」には、閉経後出血、閉経期および女性更年期状態、閉経後萎縮性腟炎等に細分されます。なお、除外項目として「骨粗しょう症」があり、骨粗しょう症に90日投与は出来ません。

一般に用いられる更年期障害は閉経期及び女性更年期状態にあたります。この変更により、これらの疾患に適応のある薬剤は1回90日分の投与が可能となりました。

なお、黄体ホルモン剤は適応症として、「無月経」「月経周期異常」があり、今回より90日投与が可能となりましたが、更年期障害は適応とはなりません。

一般の外用薬すでに述べましたように、1回14日分投与が可能となりました。改正後の1回30日分投与可能な疾患として、「処置後卵巣機能不全」と「閉経期およびその他の閉経周辺期障害」が追加されました。これにより、エストラーナ、エストラダームMも1回30日(15枚)投与が可能となりました。

しかしながら、腟坐薬については、14日分の処方は考慮していただきたい。昭和20年代から保険発には「腟坐薬の投与は原則として認められないが、医師の直接処置が困難な事情にある場合は、これを投与することは止むを得ない」とされております。腟炎では腟洗浄後に腟坐薬を挿入するのが基本であります。また、自己挿入を7日以上続けますと基剤が残り、以後の薬が無効になるとも言われております。これらのことを考慮し、萎縮性腟炎や腟部びらんの薬剤は14日分投与も差し支えないと考えられますが、特異性・非特異性腟炎の場合は歩行困難や離島在住など止むを得ない場合のみ、詳記の上処方していただきたいと思います。

つぎに、患者さんへの適切な情報提供として、診療録管理責任者などを配置するなど一定水準以上の診療録の管理体制を確保して、しかも現に患者さんに対し診療情報の提供が行われている医療機関を評価して、入院基本料に診療録管理体制加算(入院初日に30点加算)が新設されました。

生活習慣病への対応としまして、運動療法指導管理料が拡充され、高血圧症に加えて高脂血症、糖尿病が追加されました。

日母では以前から子宮収縮剤使用時に分娩監視装置の適応拡大を要望しておりましたが、今回「異常分娩の経過改善の目的で陣痛促進を行う場合」にも適応追加となりました。なお、全国支部社会保険担当者連絡会におきまして、分娩誘発時の使用も可とするが、原発性微弱陣痛などの傷病名の明記が望ましいとされました。

以上、平成12年度診療報酬改定のポイントについて述べさせていただきました。