平成12年9月4日放送

 産婦人科勤務医当直に関する他科医師との比較

 日母産婦人科医会常務理事 西島 正博

 

産婦人科医師は他科の医師と比べて、より激務であるとの声が聞かれて久しいものがあります。最近では1998年に、産婦人科業務量と将来像に関する調査の報告が、小冊子として会員に配布されました。その中で産婦人科勤務医の当直回数、オンコール回数が多いことが浮き彫りにされましたが、他科の医師との実際的な比較検討がなされていませんでした。 今回、本当に産婦人科勤務医は他科医師より当直回数が多いのか、また、産婦人科当直、宅直、オンコール業務の実態はどうなっているのかについて調査しました。過去に全科当直表を取り寄せて分析した全国規模の調査は日母にも、日本医師会にもなく、非常に参考になるものと考えられます。

この調査は平成11年12月に日母の全国定点モニター施設、476施設に、平成11年11月分の病院の当直表の提供と、集計の裏付け資料作成のための、質問用紙を依頼送付してまとめられたものです。今回は各科の当直体制を採用していると思われる、大学病院は除外しました。285施設から回答があり、回収率は60%でした。

この調査で明らかになった主要部分をまず述べておきます。産婦人科医の平均当直回数は月間平均4.7回で、全科の中で最も頻回であり、内科及び内科系の2.2倍、外科及び外科系の2倍、小児科の1.4倍でした。そして、産婦人科勤務医自身も、当直体制のある病院では、他科の医師と比較して産婦人科医の当直回数が多いと感じている人が、91%に及んでいました。産婦人科医が毎日当直している病院について、関係の深い小児科と麻酔科の当直医の状況は、小児科医が45%の病院で、また麻酔科医は9%の病院でのみ毎日当直していることが判明しました。夜間の新生児仮死の管理は、過半数の病院で産婦人科医が対応し、オンコール体制がとられている病院もあるとはいえ、夜間の緊急手術の麻酔は、大部分が産婦人科医の手で行われている可能性がうかがわれます。

さて、今回の調査では産婦人科を含む複数の科がある病院では、その53%で産婦人科が毎日当直していました。残りの47%の病院では自宅で待機する宅直体制がとられていました。一方、61の産婦人科だけの単科病院では、59%の施設が当直医をおく体制でした。

毎日当直医がいる施設である当直体制群について、その設立母体別に見ますと国、自治体を含む公的病院の55%で当直制がとられているのに対して、私的120病院では24%のみで当直制が採用されていました。その他は宅直制ということになります。

当直制のとられている病院の産婦人科病床数は、20床以上70床未満のところが、89%を占めています。宅直体制群では10床以上50床未満の施設が、82%を占め、小規模病院で宅直制のところが多い傾向がうかがわれます。

○常勤医師数についてみますと、

当直体制群での産婦人科医師の定員は、3名から6名までの施設が75%を占め、最も定員の多い施設では10名というところが2施設ありました。また、この常勤医師のみで当直をまかなっているのは、25%の施設で、残りの75%の施設では外部から当直医の応援を得ています。

宅直体制群での常勤産婦人科医師数は、1名から4名の施設が93%を占め、その中でも2〜3人のところが66%あり、最も産婦人科医が多いところで6人という施設が3か所ありました。当直体制群より少ない傾向がみられます。宅直制をとっているところでは61%の施設が外部医師の応援を得ていませんでした。残りの39%の施設では外部医師に当直を依頼しているようです。

2〜3人の常勤医だけでも、外部の産婦人科医の協力を得て当直制をとっている病院がある一方、5〜6名の常勤医がいる病院でも宅直制のところもみられます。分娩数、自宅から病院までの移動時間などによって、体制に差が出ることが考えられます。

○外部当直医師手当についてみますと、

当直体制群では75%の施設が外部医師の当直を依頼していますが、その中では3〜4万円台の施設が67%で、96%の施設が7万円未満でありました。一方、宅直体制群では37%の施設が外部医師の応援を得ていましたが、その手当は2〜3万円台の施設が49%で、91%の施設が6万円未満でした。

○常勤医師の当直手当についてみますと、

当直体制群では1〜2万円台の施設が76%で、97%の施設が4万円未満でした。また当直以外の医師の緊急呼出しを受けた場合の手当ては、「なし」の施設が25%で、時間外または時間給の施設が43%ありました。

一方、宅直体制群では緊急呼出しを受けた場合でも、手当が出ない施設が、24%で、時間外あるいは時間給が支払われる施設が43%ありました。

○当直回数の現状についてみますと、

個々の産婦人科医の月間当直回数は、5回の人が46人、19%と最も多く、4回から6回の人が51%と過半数を占めています。3回から7回の間に71%の人が入りますが、8回以上の人も10%認められます。

○適切な当直回数については、

月に4回とする施設が、44%と最も多く、2回から5回までとする施設が89%を占めています。また、現状の当直回数は、他科と比較して多いと感じている施設は、91%に達します。

○適切な常勤医師数については、

当直体制群では5人から8人とする施設が、69%を占め、現状の医師数より2〜3名増員を求めるところが多いようです。

宅直体制群では、2名から5名とする施設が75%にのぼり、現状より1名の増加を求めているようです。

○他科の当直回数について

それぞれの施設の全科の当直表から、その当直状況をみてみますと、脳外科、循環器内科、ICU、救命救急で毎日当直医がいる施設など、その施設の特色によって種々の当直体制がとられているようです。病院全体で産婦人科当直の他には全科当直1名という施設もあります。

産婦人科医が毎日当直している108施設のうち、内科または内科系当直医がいるのが87%、外科医または外科系当直医がいるのが86%の施設となっています。

他科医師との当直回数の比較にあたって、その算出基準として夜間当直を1ポイント、土曜日日直を0.5ポイント、日曜・休日の日直を1ポイントで計算しました。

土曜日と日曜・祝日は内科、外科、小児科、救急、その他諸科とも産婦人科と差がありません。平日は産婦人科医の回数が多く、月平均にしますと内科及び、内科系2.1回、外科及び外科系2.3回、小児科3.4回、その他の科2.1回、救急系3.1回に対し、産婦人科4.7回と最も多くなっていました。

○おわりにあたり、

今回の当直回数からみるかぎり、現状の産婦人科医の勤務状況が過重になっている傾向は否めないようです。当直を減らすことは現状では困難と思われますので、病院内外からの評価及び対策の改善と、引いては産婦人科新入局者の増加につながればと期待いたします。

本調査は、日母勤務医委員会の長田久文委員長を始め「勤務医の待遇に関する検討小委員会」の先生方の努力によるものであります。