平成12年7月17日放送

 第99回日本産科婦人科学会関東連合地方部会総会

 順天堂大学助教授 吉田 幸洋

 

 第99回日本産科婦人科学会関東連合地方部会総会は、去る平成12年6月10日から11日の2日間を会期として、新装なりました千代田区平河町の日本都市センター会館において開催されました。当日はあいにくの雨模様でありましたが、参加者数は1000名を越え、盛会裡に開催することができました。

 私ども順天堂大学医学部産婦人科学教室と致しましては、担当校として、今回の第99回関東連合地方部会総会が会員の皆様にとりまして実りある会になりますように、約1年前から教室ならびに同窓会が一丸となって鋭意準備を進めて参りました。残念なことに、会期を2日間にするなど本学会の新しい形での開催に大変意欲的に取り組んでこられました桑原慶紀教授が、学会の開催を待たずに他界するという大きな不幸がありましたが、会員の皆様のお陰で、一般演題には197題という多数の応募を戴き、故桑原慶紀教授の意志に沿った形での開催が可能となりました。心から感謝申し上げます。

 学会は、6月10日(土曜日)の14時より、5会場同時に、一般演題から開始致しました。今回、初めて会期を2日間とさせていただいた結果、発表時間に余裕ができ、一般演題はすべて口演で行っていただくことにしましたが、会場数は6月10日と11日の二日間ともに5会場におさえることができました。その結果、周産期・腫瘍・生殖内分泌等の同じsubspcialtyに関心をおもちの会員の方々が、別々の会場に分散しなかった結果、各会場ともにホットなディスカッションが戦わされておりました。

 学会初日の18時からは、会場を隣接する赤坂プリンスホテルに移し、会員懇親会が行われました。

 懇親会では、担当校から、三橋教授、上野産婦人科学教室同窓会長によるお迎えの挨拶に引き続き、ご来賓の荒木日本産科婦人科学会副会長のご挨拶を頂き、その後、坂元日本母性保護産婦人科医会会長のご発声で乾杯となりました。これまで、関東連合地方部会総会の懇親会には、時間の関係で参加することができなかった会員の方々が多かったように思いますが、今回は2日間の会期の中間でしたので、比較的多くの会員の方々に懇親会にご参加いただけたのではなかったかと思っております。懇親会のアトラクションとしましては、故桑原慶紀教授が関東連合地方部会総会の懇親会では是非にとお願いしてありましたサロンドリベルテの美海さんによる美しく楽しいシャンソンを会員一同堪能いたしました。

 学会2日目の6月11日(日)は、朝の8時45分から10時30分まで、初日に引き続き一般演題のご発表をいただいた後、聖路加国際病院理事長の日野原重明先生による「医のこころ」と題する特別講演を拝聴いたしました。本講演は、故桑原慶紀教授が日野原先生に、特に若い産婦人科医師を対象にお話いただきたいとお願いし、実現したものであります。

 西暦2000年という新しいミレニアムが始まる本年は、特にテクノロジーの分野におきまして多大な進歩発展のあった20世紀最後の年でもあります。振り返ってみますと、医師である我々も、ともすれば技術としての医療に頼りがちとなり、医師として最も大事であるはずの患者さんを「癒す」という気持ちを忘れがちになっているのではないかと思います。日野原先生には、医療の本質としての、病むもの、すなわち患者を「癒す」とはどのようなことなのかについて、これまで先生が、医師のみならず看護婦その他のパラメディカルに対する幅広い教育にたずさわられたご経験と、医学から芸術に及ぶ幅広い知識をもとに歴史的に解説を頂き、未来を見据えた、感動的な、こころにしみるお話を頂きました。

 昼の評議員会の間には、一般会員のために、最近の学会では恒例となりましたが、ランチョンセミナーをメーカー4社と共催で企画・開催いたしました。それぞれの内容としましては「子宮内膜症、子宮筋腫におけるエストロゲン抑制の意義」と題して、帝京大学の森教授にご講演頂きました。また、University Texas Southwestern Medical Center のColeman教授には「Ovarian Cancer Chemotherapy-as First Line and Second Line-」と題して、タキソール、タキソテールの有用性と限界についてご講演頂きました。また、「低用量OCの現況と服用管理のポイント」について、東京女子医科大学の安達助教授には「低用量OC処方アンケ−ト調査について」また、徳島大学の苛原講師には「若年女性への服用管理」に関してご講演頂きました。さらには、「多手法を併用した超音波診断」と題して日本医科大学の石原教授に、最近の超音波診断におけるsonohysterography、三次元表示法、パノラマ表示法、超音波造影剤といった新しい手法についてご講演を頂きました。

 演者はいずれも、第一線で活躍されている先生方であり、大変わかりやすくまた非常にup to dateなお話であったと思います。

 午後は、総会に引き続き、周産期、腫瘍、生殖の分野から臨床的な3つの話題に関しまして「ディベート」をおこなって頂きました。

 「急速遂娩・鉗子か吸引か」に関しましては、自治医科大学の佐藤教授の座長により、吸引分娩の立場から日本医科大学の鈴木先生に、鉗子分娩の立場から埼玉医科大学総合医療センターの竹田先生に講演とディスカッションを行って頂きました。施設によってどちらか一方の方法しか行われていなかったり、また両方の教育をうけることの困難な我が国の現状についての指摘もありましたが、鉗子と吸引それぞれの適応とメリット・デメリットを考慮した棲み分けを確認することができたと思いました。この会場ではフロアに押しボタン式のアナライザが設置され、随時フロアの意見を聴取しながらデェスカッションをすすめるという新しい試みがなされ、従来にない活発なディスカッションが行われたものと思っております。

 「子宮体癌のスクリーニング・細胞診か経腟超音波か」に関しましては、信州大学の小西教授の座長により、細胞診の立場から慶応義塾大学の進先生に、経腟超音波の立場から順天堂大学の古堅先生に講演とディスカッションを行っていただきました。老健法による子宮体癌のスクリーニングが子宮内膜細胞診によっておこなわれている我が国におきましては、細胞診の正診率が非常に高く、その有用性は明らかではありますが、子宮内膜細胞診は超音波に比較すれば侵襲的な検査でもありますので、一次スクリーニングとしての経腟超音波の有用性も確認できたのではないかと思います。

 「若年子宮内膜症の取り扱い・内科的治療か外科的治療か」に関しましては、東京大学分院の堤教授の座長により、内科的治療の立場から、群馬大学の関先生に、外科的治療の立場から東京医大の井坂先生に講演とディスカッションを行っていただきました。近年、腹腔鏡下手術により従来に比較して格段に少ない手術侵襲で外科的治療が行えるようになりましたが、若年女性では妊孕性の温存と回復が重要であり、この点をポイントにディスカッションが行われました。

 いずれも結論をだすことの難しいテーマであったかと思いますが、ディスカッションを行うなかで、いろいろな問題点が整理できたと同時に、それぞれ逆の立場のメリット・デメリットが認識できたということで非常に有意義な内容であったと思っております。

 今回は、関東連合地方部会総会としましては初の試みとして会期を2日間とさせて戴きましたが、第2日目も午後3時までにはすべてのプログラムを終了できました。遠方からの会員の方々には東京で一泊していただかなくてはならないというご不便があったかと思いますが、最後まで参加されても、ゆっくりお帰りになることができたものと思います。

 今後も、会期二日制が採用されるかどうかはわかりませんが、関東連合地方部会総会の一つのあり方が示せたものと思っております。

 最後に、本総会の企画のほとんどは、故桑原慶紀教授が行ったものでありますことを申し添えますとともに、故桑原慶紀教授の逝去後も開催に向けてご指導・ご協力を戴きました皆様に心より感謝申し上げます。