平成12年6月26日放送

老人保健事業第4次計画

厚生省老人保健福祉局老人保健課 則安 俊昭

 

 本日は、住民検診を代表する老人保健事業とその関連事業である乳がん検診についてご紹介いたします。

 老人保健事業は、昭和58年に施行された老人保健法に基づき、壮年期からの健康づくりを推進するため、医療等以外の保健事業(いわゆるヘルス事業)として実施されているものです。住民検診として知られる基本健康診査の他に、老人医療受給者の方は全員が持っておられる健康手帳の交付、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導がヘルス事業のメニューに含まれるものです。実施するのは市町村ですが、費用は国、都道府県、市町村がそれぞれ1/3ずつ負担することになっています。

 この、ヘルス事業は、昭和58年からスタートした第1次計画に始まって、平成12年3月で第3次計画までが終了いたしました。その間、がん、心臓病、脳卒中のいわゆる3大成人病全体として、また、胃がん、子宮がんの高齢化による影響を除いて計算した壮年期での死亡率が、ある程度の低下傾向となるなどの一定の成果をあげることができています。

 さて、わが国は、世界に他に類を見ないスピードで高齢化が進行しており、2015年頃には4人に1人が65歳以上のいわゆる高齢者という超高齢社会を迎えようとしています。平成12年4月、つまり、今年度からスタートする第4次計画では、その超高齢社会を、明るく活力ある社会に築き上げていくため、一人ひとりの高齢者が社会参加をしながら健康で生きがいをもって過ごせるよう支援してゆくことが重要であるという観点から、壮年期死亡の減少及び痴呆若しくは寝たきりにならない状態で生活できる期間、いわゆる健康寿命の延伸を目標として、生活習慣病などの疾病の予防や介護を要する状態に陥ることをできる限り予防することに重点をおくことにしています。

 保健事業第4次計画は、平成12年度から平成16年度までの5か年間です。

 この第4次計画の中で重点的に取り組む疾患として、第一に、死亡や生活の質の低下をもたらすがん、脳卒中、心臓病及び糖尿病とし、第二に、脳卒中及び心臓病の危険因子である高血圧及び高脂血症とし、第三に、高齢期の生活の質に深くかかわる、痴呆、骨粗鬆症及び歯周疾患としています。

 これらの疾患を予防するためには、疾患やその危険因子を早期に発見することと併せ、生活習慣の改善を図ることが重要です。このため、例えば、これまでは集団で行っていた健康教育についても、対象者と指導者が1対1で約半年にわたって行う個別健康教育の導入するなど、食事及び栄養、運動、ストレス、喫煙、飲酒等について、一人ひとりの対象者が自らの生活習慣改善に向けて行う努力をきめ細かく支援することにいたしました。この個別健康教育は、第4次計画において新たに取り入れたもので、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙について、今後の5年間で全国の全市町村で取り組みがなされるよう計画しております。

 また、介護保険制度の実施を背景として、寝たきり、痴呆などにより介護を要する状態となることを予防することがますます重要となることから、脳卒中や骨粗鬆症の予防を推進するとともに、転倒や閉じこもりその他の原因による社会的活動の低下、運動機能の低下などに着目した効果的な予防対策の推進を図ることとしています。

 また、併せて、介護を担う家族等の健康管理を支援するために、介護を担っていらっしゃる方を対象とした訪問健康診査なども、新たに取組むこととしています。

 保健事業第4次計画において導入された健康度評価事業についてご紹介します。この事業は、疾病又は介護を要する状態に陥る危険性や、これらの予防のためのサービスの必要性を把握および評価し、利用者による適切なサービスの選択を支援するためのものです。老人保健事業の対象者となる地域の40歳以上の方に、健康教育や健康相談で来所された際や健康手帳の配布する際など、さまざまな機会をとらえて、質問票により、生活習慣や、日頃の社会活動や社会参加状況、生活環境などについて、可能な限り幅広く情報をいただき、これに基本健康診査の結果等をあわせて、対象者一人ひとりの健康について総合的にきめ細かく評価させていただき、最もふさわしい保健サービスの提供をさせていただくことを目的とするものです。

 次に、第4次計画の関連施策について、ご紹介します。

 まず、介護を要する状態になるのを予防するためには、たとえば脳卒中に罹った患者さんが適切な時期に適切なリハビリテーションサービスが受けられるようにすることが大切です。同時に、地域においてもバリアフリーにつながるような正しい住宅改造や福祉用具の使用の普及や、患者の会や家族の会などの自助グループ活動の促進も重要です。これらを推進するために、都道府県にリハビリテーションについて協議する場を設け、また、地域のリハビリテーションについての中核的施設にこれらの役割を担っていただくべく、都道府県を実施主体として、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業を実施してきております。

 次に、がん検診についてですが、平成10年度から一般財源化され、国の補助事業ではなく市町村の判断により実施されることになっています。ここで、誤解のないように申し添えますが、がん検診には効果がない、あるいは効果があるかどうかわからないといった誤解を招くような報道が一部でなされましたが、そういったことではなく、地方自治体に根付いた事業として、地方分権推進の観点から一般財源化されたものです。

 がんの予防対策を推進する上で、がん検診やがんに関する健康教育は極めて重要で、保健事業第4次計画においても喫煙者個別健康教育などとも関連させながら、積極的に推進してゆくこととしています。

 その中で、乳がん検診については、40から49歳までの方は今までどおり、年1回の問診と視触診によって実施しますが、50歳以上の者に対しては、問診、視触診に加え、乳房エックス線撮影(マンモグラフィ))を併用した検診を取組み可能な地域から導入してゆくこととしています。また、乳房エックス線撮影を併用した方法であれば2年に1回の検診受診でよいこととしています。

 このマンモグラフィを併用した乳がん検診では、精度管理が重要で、撮影や読影についてのマニュアルを国としても先般作成し、都道府県、指定都市、中核市などに配布したところです。

 また、これまで実施されてきた胃がん、肺がん、子宮がん、大腸がん検診についても、有効性についての検討も行った結果、従来の方法での実施を推進することとしています。

 このがん検診については、一般財源化に伴い、厳密な意味では老人保健事業ではなくなったということになっていますが、今後とも、新たながん検診の手法の開発も含め、がん検診の有効性に関する評価や情報提供、がん検診の精度管理の在り方等については、国としても積極的に取り組んで行くこととしています。

 そのほか、機能訓練や訪問指導も、介護保険法の施行により、従来とは若干役割が変わってきていますが、閉じこもりや転倒の予防、日常生活の自立の支援など、介護を要する状態となることの予防を目的とした取り組みとして、あるいは生活習慣病の予防や保健・医療・福祉サービスの活用方法に関する調整等に重点をおく取り組みとして実施することとしています。

 ここまで、老人保健事業、保健事業第4次計画について簡単にご紹介させていただきましたが、この趣旨を医師会や学会等の関係団体の皆様にご理解いただきまた、ご協力いただき、同時に、国民の皆様のご理解と積極的なご参加をいただきまして、はじめて、きたる超高齢社会を明るく活力ある社会とすることができるものです。この場をお借りしまして皆様方によろしくお願いする次第です。