平成12年6月19日

 全国支部社会保険担当者連絡会

 日母産婦人科医会幹事 秋山 敏夫

 

 本日は、5月14日に行われました。第30回日母全国支部社会保険担当者連絡会についてお話致します。当日は全国支部より51名の社会保険担当者をはじめ 日母役員、社会保険委員会委員の出席のもと活発な連絡・協議が行われました。

 前原副会長は中央情勢報告の中で、平成12年4月に改定されました診療報酬点数改定の歴史的経緯、今回改定の特徴、プライマリーケアができる医師の養成の必要性、医療機関の特性を考えた経営の必要性を話されました。

 また、白須常務理事から、医療保険審議会の検討内容の具体化により今後の対応が必要であること、今回の診療報酬改定のポイントは物と技術の適正評価が更に進んだ点にあること、日母社保部の本年度事業計画のうち、分娩の療養給付のあり方に関しての小委員会の設置についての報告がありました。

 診療報酬点数改定とその運用について。

1、産科手術点数の改定では

 緊急帝王切開術、選択帝王切開術、骨盤位娩出術、吸引娩出術・低位鉗子術、

 中位鉗子術、子宮頚管縫縮術、

 その他、多くの産科手術が増点となりました。

2、婦人科手術点数の改定では

 子宮内膜掻爬術、子宮付属器腫瘍摘出術、子宮全摘術、子宮筋腫核出術、

 子宮悪性腫瘍手術、子宮附属器悪性腫瘍手術等の点数が増点となりました。

3、婦人科手術点数の新設では

 子宮鏡下子宮中隔切除術、癒着剥離術を含む子宮内腔癒着切除術が1万500点 

 腹腔鏡下子宮筋腫核出術が2万5300点

 子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切除術、子宮内膜ポリープ切除術が4730点

 バルトリン腺嚢胞造袋術は本手術とバルトリン腺嚢胞摘出術の名称併記に変更され  2760点になりました。

4、分娩監視装置の適応拡大は以前からの要望であり、陣痛促進剤使用時に本検査の適応拡大を要望していましたが、今回「異常分娩の経過改善の目的で陣痛促進を行なう場合」にも適応追加となりました。なお、今回の協議において分娩誘発時の使用も可と

されましたが、原発性微弱陣痛等の傷病名の明記が望ましいと考えられます。

5、他の科と共通項目での主な変更点では

 初診料は病院・診療所とも6歳未満で増点数となりました。

 再診料では今回、病院が200床で区分されました。200床以上では外来診察料の名目で200床未満と比して増点数となりましたが、尿一般、血液一般等の19項目の検査及び腟洗浄、消炎鎮痛処置、創傷処置・術後創傷処置・皮膚科軟膏処置の一部が含まれ別途算定できなくなりました。

 外来診療料は従来の特定機能病院外来診療料の対象が拡大されたものであります。

これにより、従来の特定機能病院では再診料が90点から70点に減点されました。

 継続管理加算(5点)は200床未満の施設で、治療計画に基づき継続して再診を行なった場合、初診料の算定月を除き、1月に1回を限度として算定できます。

 なお、月上旬まで治療し、下旬に治癒した場合、例えば卵巣機能不全で治療中、下旬に切迫流産となり、初診が発生した場合でも、算定が可能となります。

 外来管理加算(52点)は従来より10点加算されました。腟洗浄は42点のままであり、平成8年の改定時同様、腟洗浄を行なった場合10点の減点となり、産婦人科外来診療の方法に一考を要すると考えられます。

 検査料は概ね減点となりました。生化学的検査ではLH検査が検査法によらず同点数になり、検査法と点数間の疑問が解消されました。

なお、超音波検査等の項目に残尿測定検査(50点)、骨塩定量検査に超音波法(80点)が新設されました。

 画像診断料では、CT及びMRI検査が単純と特殊等に変更されました。なお、時間外 緊急 院内 画像診断 加算は110点に減算されました。

 処置料では、熱傷処置の一部が変更された以外に変更点はありません。

 手術料は前に述べましたように増点数が多数を占めましたが、併施手術に適応の拡大と解釈の変更が行われました。これによりますと子宮筋腫核出術と子宮外妊娠手術が新たに追加され、点数の高いものが主なる手術とされました。また短期滞在手術基本料が算定できる手術として、産婦人科では子宮頸部切除術、子宮鏡下子宮筋腫摘出術、腹腔鏡による子宮附属器腫瘍摘出術が対象とされました。

 新生児介補加算の一部が変更され、有床診療所の場合、沍Q入院基本料一及び二の場合381点、入院基本料三及び群の場合310点となりました。

6、長期投与薬剤の適応拡大について

一回90日分を限度として投与する内服薬及び疾患として、「処置後卵巣機能不全(症)」「無月経、過少月経および希発月経」「過多月経、頻発月経および不規則月経」「閉経期およびその他の閉経周辺期障害」が適応追加となりました。

また、一回30日分を限度として投与する外用薬及び疾患として、「処置後卵巣機能不全(症)」と「閉経期およびその他の閉経周辺期障害」が追加されました。

7、入院診療計画未実施減算について

 改定前は入院後、診療計画書作成により350点が加算されましたが、今回の改定では、診療計画書を作成することが社会の趨勢とされ、未実施に350点の減算が設定されました。

なお入院診療計画の起算は自費入院中であれば、保険診療が開始された日から7日以内となります。

 今回の改定では、入院診療計画未実施と院内感染防止対策未実施(5点減算)にマイナス点が設定されたことが特徴であります。

 支部提出議題について。

(1) 卵巣過剰刺激症候群でのアルブミン製剤の使用について

 入院治療で低Al血症を呈する症例には使用が可となります。

(2) 双胎二児共死亡例に総合周産期特定集中治療管理料の算定の可否について

 死胎児症候群の発症が予測される例では算定が可となります。

(3) 不妊症、無排卵症でhCGのみ使用時の超音波検査の回数は 1〜2回となります。

(4) 骨粗鬆症治療中の骨吸収マーカー検査の可否について

 既に治療中の場合は算定不可、新規使用時と薬剤効果判定時に可となります。

(5) 子宮筋腫に対する動脈塞栓術の算定について

 現在研究中の技術であり、保険診療の給付外であります。

(6) 手術時血栓症予防のヘパリンの使用について

 適応は「手術中・術後の血栓塞栓症等の治療及び予防」となっており、術後使用の算定は可であります。

 平成11年度ブロック社保協議会の質疑事項について。

(1) 胎児不整脈病名でのUCG検査について

 胎児疾患は原則として認められません。

(2) 「子宮腟部異形成」病名による悪性腫瘍特異物質治療管理料の算定について

 未だ悪性腫瘍にはなっておらず、算定は不可となります。

(3) 「子宮腟部びらん」に対する子宮腟部薬物焼灼法の回数について

 初診から1か月は週1回程度、その後は2週間に1回程度が適当と思われます。

(4) 子宮内膜掻爬術と腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術の併施について

 術野が異なるため、両者の合計点数で算定可となります。

(5) 性器ヘルペス症に対するゾビラックス内服とアラセナA軟膏の併用について

 ゾビラックスは一般名アシクロビル、アラセナAは一般名ビダラビンであります。

作用機序が異なるため必要な症例には併用は可となります。

しかし、ゾビラックスの内服と軟膏の併用は作用機序が同様であり、一方のみとなります。

(6) 500ml未満の溶液にウテメリンを溶解した場合に精密持続点滴加算は認められるかについて、

 注射の通則によれば、「注射の手技料を包括する点数を算定した場合には、精密持続点滴注射加算は算定できない」とされます。入院料には注射の手技料(基本診療料に含まれる)が包括されており、入院中、500ml/日未満の点滴注射の場合は精密持続点滴注射加算は算定できません。

 

 以上、第30回、全国支部社会保険担当者連絡会について、お話致しました。

なお、医報6月号には本日のお話と長期投薬に関する社保の頁を掲載しています。

一度、お読み下さい。