平成12年3月20日放送

 日母中央情報室より

 日母情報処理検討委員会委員長 大橋克洋

 

 日本母性保護産婦人科医会、通称「日母」の中央情報室に設置された「情報処理検討委員会」において、今年度検討された事項をご報告させて頂きます。

 主なものは「インターネットなどネットワークの利用」「周産期医療でのコンピュータの利用」「日母事務のOA化」などです。

○インターネットの「ホームページ」

 日母では会員の方々への情報伝達の手段として、「日母医報」を毎月発行してきました。しかしこのようなメデイアは、本部から会員への一方通行になりがちです。また、緊急に伝達したい事項があっても、次の発行日まで待たねばなりません。号外を出したにしても、必ずしもタイムリーに伝えられるとは限りません。

 また、紙面をコンパクトに保たないと読んでもらえないので、詳細な情報提供には適さないということもあります。

 さらに、一般の方々にも広く情報サービスをすることも必要ですが、これには多額の経費を要し、実現が困難でした。

 これらを一挙に解決するのが、インターネットによる World Wide Web、いわゆるホームページや電子メールの利用です。

 このようなことから、平成10年4月からインターネット上に「日母のホームページ」を公開しました。アクセス件数は1日300件を越え、先に述べたような特性を裏書きしております。

 他のホームページの中には、パスワード(いわゆる暗証番号)を設けているところもありますが、本来 World Wide web は完全にオープンであるのが原則です。日母のページは「会員に限定せず、一般の方々が誰でも自由に見られる」、すなわち完全にオープンというポリシーで公開しております。

 現在公開されている内容としては、低用量ピル、遺伝相談施設、不妊相談センター、母性健康管理、母体保護法改正の問題点など、一般向けの情報。

 また、日母医報の目次、研修指定病院案内、カルテモデルならびに指導票、研修ノート一覧、会員研修テーマなど、会員向けの情報が公開されております。

 本日のこのご報告も、日母のホームページで公開予定です。

○電子メールによるメーリングリスト

 従来運用されていたパソコン通信による「日母ネット」を、平成11年度からインターネット上のメーリングリストへ移行しましたが、移行は混乱もなく大変スムーズでした。インターネットはパソコン通信より自由度が高いので、より広い範囲の利用が可能となります。

 ホームページでは、公開した側から受手側への一方通行が主になります。これに対し、逆方向への情報の流れ、あるいは会員同志でデイスカッションする手段として、会員間での電子メールによるメーリングリストがあります。

 メーリングリストというのは、一通の電子メールを投函すると、それがセンターの参加者リストを元に、参加者全員へ転送される仕組みです。

 これを使いますと、メンバーの誰かの発言が全てのメンバーへ届き、それに対するコメントが再び全員に届くというように、パソコン通信の電子掲示版と同様のことができます。

 現在は、勤務医の方の発言が多いようですが、かなり活発な意見が交わされ、日常診療に大変役立ちます。

 話題としては、習慣性流産、高齢出産、助産院での分娩、ピル、トリプルマーカー、癌の告知などで多岐にわたっております。

 本年2月末現在で登録メンバーは478名ほどですが、毎月増加しつつあります。全会員に占める割合はまだ4%程度で、年齢層としては40代が36%、20代と50代がそれぞれ20%前後を占めております。

 全会員の2割以上が参加するようになれば有用性も高まり、全体としての経費節減効果も明かになってくるでしょう。

○周産期医療情報のネットワーク化

 厚生省で進める「周産期医療のシステム化」プロジェクトでは、人口100万人に対し中心的に機能する総合周産期母子医療センターと、それに準ずる複数の施設を設置し、地域の医療機関と有機的に連携できる体勢をめざしています。

 そのためには、医療情報の標準化、ネットワーク化が不可欠ですが、これを進めやすくするため、厚生省は昨年の春、「電子媒体による診療録の保存」を認める通達をだしました。まだ現実には問題はあるものの、これで「電子カルテ」実用化のための障害がひとつ取り除かれたことになります。

 また通産省も「電子カルテ開発のみならず、医療情報のネットワーク化が国民医療に不可欠」という観点から、平成11年度より5年間をめどに、西日本を中心とした実証実験を予定しております。

 このような状況の中で、当委員会の原委員の所属する香川県では、「香川健康福祉情報ネットワーク」の構築を行っています。これは香川医大を中心とし、これを瀬戸内海の島を含む4つの病院と結び、周産期管理システムが、常時接続のISDN回線を使って運用されています。

○各支部における現状調査

 各支部でのコンピュータ利用では、医師会のコンピュータ利用を含め、全支部の68%で利用可能となっています。メーリングリストには74%が参加希望でした。電子メールを何らかの形で利用できる会員は60%に達していますので、メーリングリスト参加者の数はまだまだ増えるでしょう。

 日母ホームページを見ている会員は、30%とまだ少なめのようです。

○ 日母事務局内のOA化

 World Wide Web や電子メールのサーバについては、Apple 社のMacintoshを使っています。最初の設定は業者に委託しましたが、その後の運用やホームページの作成などについては、すべて日母事務局で行っています。業者委託のシステムに比べますと、かなり低い経費で維持できているのが特徴です。

 事務局内のマシーンは、ほとんど Macintosh で、相互にイーサネットで接続されております。毎年少しずつマシーンを増やし、ようやく各職員一台を達成しました。

 同時に古いものでは機能が落ちてきますので、毎年少しずつ新しいものに置き換えています。最近は機械の価格も下がりましたので、今後もこのような形での新陳代謝は必要と思われます。

 このようなことで、ほぼ当初めざした環境を整備することができました。各職員の端末から、電子メールも使えるようになりましたので、今後はむしろ日母役員における利用率の向上が目標となってまいりました。

 情報処理検討委員会では、かなり前からメーリングリストにより委員会業務の一部を処理してきました。このような形が、日母本部や各支部に行き渡れば、かなりの事務能率化と経費削減がはかれるものと思います。

○まとめ

 すでに一般社会においては企業が、長引く不況の中で経費削減のため、ホームページや電子メールを積極的に導入し、これを使いこなす人が珍しくなくなってきました。

 今後ますます厳しくなる医業経営や、社会への広い情報提供のためにも、われわれ医師こそ積極的にこのような情報機器の利用に取り組むべき時代に入ったことをお伝えし、今年度のご報告とさせていただきます。