平成10年6月15日放送

切迫早産妊婦のストレス軽減への取り組み

 一アンケート調査を通じて一

公立雲南総合病院 3階西病棟 高橋由美子 嘉本明枝

               周藤マサコ 植田辰子

要旨:安静治療を余儀なくされ、基本的ニーズが満たされにくい切迫早産での入院は、心理的・身体的ストレスが大きいと考えられる。そこで切迫早産で入院し、24時間持続点滴をしている妊婦のストレスの内容を調査した。その結果、歩行者にも陰部洗浄を準備する・トイレの段差の解消・パンフレットの作成など検討した。今後も精神面での援助を心掛けたい。

キー・ワード:切迫早産、ストレス

I.はじめに

切迫早産は全妊娠の20%〜30%生じるといわれ、当院においても、切迫早産の診断をうけ入院する妊婦は少なくない。

女性は妊娠するだけでも心理面に大きな影響を受け、ストレス反応を起こしやすくなるといわれている。安静治療を余儀なくされ、墓本的ニーズが満たされにくい切迫早産での入院は、心理的・身体的ストレスがさらに大きくなると考えられる。

そこで私たちは、切迫早産で入院し、安静度を制限され、輸液ポンプによる24時間持続点滴をしている妊婦の入院中のストレスの内容を知り、看護サイドで援助できることはないかと考え、取り組んだのでここに報告する。

II.研究方法

1.対象 平成7年1月1日〜平成8年3月31日までに切迫早産で入院し、塩酸リトドリン持続点滴をしていた妊婦56名

2.期間 平成8年6月27日〜平成8年8月5日

3.方法 郵送によるアンケート調査を行った。

     回収部数44部(初産婦10名・経産婦34名)

     回収率78%

III.結果

入院中ストレスを感じたことがある人は初産婦90%・経産婦91%である。そして入院してから2〜3日までに59%の妊婦がストレスを感じ始めている。実際のストレス内容は、多い順に

  1.清潔に関すること

  2.持続点滴に関すること

  3.自由に動けないこと

  4.排泄に関すること

  5.家との連絡のこと

  6.家族のこと

となっている。

具体的内容では清潔に関して

   1)清拭ではすっきりしない

   2)シャンプーが自由にできない

   3)汗やおりものの臭いが気になる

   4)週3回の清拭では少なかった

   5)自由に着物や下着を変えることができない

と答えている。

持続点滴では

   1)点滴したままトイレに行くのは苦痛だった

   2)刺入部の痛み、腫れが気になる

   3)24時間点滴が入っていて気になる

   4)アラーム音が鳴り、同室者に迷惑をかけるのではと心配だった

となっている。

自由に動けないことでは

   1)毎日が長くて退屈であった

   2)自分では元気だと思うのに動けない

   3)ベルを押して看護婦に頼まなければいけない

などをあげている。

入院中の不安内容は

   1)胎児の発育状態

   2)妊娠の継続がうまくいくか

   3)治療内容

   4)点滴の胎児への影響

   5)点滴の副作用

があがっている。

ストレスの処理方法については

   1)本・テレビなどで気晴らしをした

   2)同じ境遇の人と話し励ましあった

   3)しかたがないとあきらめた

   4)夫・家族と話し合った

   5)看護婦・医師に話を聞いてもらった

の順になっている。

これらのアンケート結果より下記のように検討改善した。

A.ポータブルトイレ使用者だけでなく、ウオシュレットトイレ使用者にも陰部洗浄用石鹸付ハイゼガーゼを使用する。

B.トイレの床マットを取り除き、段差を傾斜面とした。

C.切迫早産での入院時のオリエンテーション用パンフレットを作成した。

IV.考察

今回の調査で、妊婦は入院後早期よりストレスを感じ始めており、入院期間が最初の予定より長くなるケースが多く、さまざまなストレスの中におかれることが明らかになった。

ストレス内容で一番多かったのは清潔面に関することであった。妊婦の要望を検討し、いろいろ試案を出したが、安静の必要性から現状にとどまざるをえないことが多かった。しかし暖房・冷房の調節など、妊婦の身の回りの環境を整えていくことは、私たち看護者にできるストレス軽減の一つと考える。

前述のBについては2〜3kgの輸液ポンプ付点滴スタンドを押してのトイレ歩行時の下腹部の腹圧の軽減と事故防止を目的としてトイレの改善を試みた。これについては妊婦の反応も良く、苦痛の緩和につながったと思われる。

入院していても自覚症状が少ないと安静度に対して不満を持つことになりやすい。安静とはどういうことか、なぜ安静が必要なのか根本的なことが解っていると、入院生活もスムースとなり、ストレスも軽減すると恩われる。入院時からパンフレットを渡し説明していくことは、妊婦が現在の自分自身の状態を把握でき、入院生活を受け入れていく手助けになると考える。

青木らは「入院中の母親の不安は、第一に胎児の健康への不安である。しかし妊娠が進むにつれて、陣痛や分娩知識の不足に対する不安が強くなる。これは症状の安定を待って、分娩準備教育の受講が遅れることから生じる場合が多い」といっている。アンケートにも毎日がたいくつで何かためになる話をして欲しいとの要望があった。現在、切迫早産で入院中の妊婦には、退院前に分娩時の入院指導をしているが、母親教室を受講する機会を逃がしたり、退院できずにそのまま分娩になるケースもある。そこで、母親教室を受講できない入院中の妊婦に対する分娩前教育の検討を今後の課題としたい。

V.おわりに

今回の調査で、切迫早産で入院している妊婦のストレス内容を明確にでき、私たちの毎日の看護をふりかえることにもなった。また、妊婦が胸の中にためていた思いを吐き出せる機会になったことは、よかったのではないかと考える。長期入院者への看護の基本は、特に基本的ニーズが満たされるよう細心の配慮が必要といわれているが、今回あらためてこのことを痛感した。今後も看護婦のなにげない一言でストレスが増したり、声かけや励ましで救われたりする妊婦の精神面での援助を心掛けていきたい。

《引用参考文献》

1)青木康子他:周産期の女性のストレス、母子の心理・社会学、日本看護協会、169-170 1996

2)岩間薫他:切迫流早産妊婦の入院生活に対する調査、第25回日本看護協会集録母性看護、75-77 1994