Overview(池ノ上 克)

 周産期医療に携わる人々の努力と社会や経済の発展が相まって,わが国の周産期医療に関係する指標は大幅に改善され,先進諸国のなかでもトップクラスの優れた結果が得られるようになった.その背景には1 次診療所を中心に行われてきたわが国の産科医療の特徴にも特筆すべきものがある.
 周産期医療のテーマ別にその近未来を述べるのは,それぞれのスペシャリストの意見を期待することとして,地域の周産期医療のシステムの面から,今後のあるべき姿について宮崎県を例にしてここでは述べる.
 宮崎県の周産期医療システムの原則はローリスク妊娠の管理を1 次診療所で行い,リスクが出現すればその程度に応じて地域または総合周産期医療センターが引き受ける方式を長年続けており,良好な周産期死亡率を維持している.
 その結果,宮崎県の分娩の約80%が1 次の産婦人科診療所を中心に行われている.ハイリスク妊娠としての要素が認められた妊産婦は周産期医療センターへ紹介されているが,その割合は近隣の地域周産期センターに約17%,総合センターである宮崎大学病院が約3 %となっている.
 この診療割合は,プライマリーケアの分野でWhite らおよびGreen らが示している医療のエネルギーバランス,すなわち医療のエコロジーの原則が周産期医療にも当てはまることを示唆しているわけで,今後の周産期医療の地域での診療ネットワークを確立し,その機能を維持していくためには,このような医療のエコロジーを考慮して進めていくことが望まれる(図6).