3.内分泌異常

(1)黄体機能不全(図1)

○卵巣の黄体からのエストロゲンとプロゲステロンの分泌不全により,子宮内膜の脱落膜化が完全に起こらないもの,あるいはプロゲステロンの標的臓器である子宮内膜の黄体ホルモンレセプター異常,子宮の血流不全などにより黄体から産生されたプロゲステロンが子宮内膜に作用できないものが黄体機能不全である.
○以前は基礎体温(BBT)と黄体中期(黄体期7 日目頃)の血中プロゲステロン値から診断するとされてきた.またBBT で高温相の短縮(< 12 日),途中での陥落,低温(< 36 . 7℃または差< 0 . 3℃)がある場合,血中プロゲステロン値< 10 ng/㎖の場合などの所見があっても,黄体機能不全と診断されてきたが,現在ではこれらの所見にもとづく診断法はむしろ否定されつつある.
○これまで行われてきた子宮内膜日付診も,黄体機能不全の診断法として臨床的な意義は少なく現在ではほとんど行われていない.
○治療には黄体賦活療法と黄体ホルモン補充療法とがあるが有効性は確立されていない.
○高プロラクチン血症による黄体機能不全が疑われる場合には,高プロラクチン血症の治療を行うと良い.一方リスク因子不明不育症において黄体ホルモン補充療法の有効性を示す報告もある.
①黄体賦活療法:hCG 5 , 000~10 , 000 単位を数日から1 週間ごとに投与する.1 万以上は詳記が必要
②黄体ホルモン補充療法:保険上使用できる製剤には,注射剤(プロゲステロン,ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル)と経口剤(ジドロゲステロン,酢酸クロルマジノン,酢酸メドロキシプロゲステロン)がある.
※なお経腟プロゲステロン製剤は,生殖補助医療における黄体補充を目的として発売されており,本邦では,黄体機能不全は適応症にはなっていない.

(2)多囊胞性卵巣症候群

1)多囊胞性卵巣症候群,特にインスリン抵抗性と流産との関連性が報告されている.また不育症女性ではインスリン抵抗性が上昇している.
2)メトホルミンの妊娠中投与は本邦では禁止されている(FDA カテゴリーはB)が,多囊胞性卵巣症候群を有する女性に対する妊娠中のメトホルミン療法は,妊娠第1三半期の流産を減らす.