(2)診断

1 )問診:自覚症状

・子宮腺筋症による自覚症状は,以下の3 つに分類できる.

①子宮出血     ⇒過多月経,不正性器出血
②疼痛       ⇒月経痛,慢性痛,性交痛,排便痛
③妊娠に関するもの ⇒流産,早産

・以下の項目を問診する.

・上記の子宮出血,疼痛,妊娠にかかわる異常の有無
・骨盤内の手術歴.D&C,帝王切開,子宮筋腫核出などの子宮内操作を伴う手術歴(子宮腺筋症のリスク因子)
・子宮内膜症や子宮筋腫の診断歴
・不妊歴
・流産歴,早産歴
・現在および将来の妊娠の希望の有無;治療法の選択に大きくかかわるので必ず確認
・これまでの薬物治療歴・その有効性および副作用

・月経困難,過多月経が子宮腺筋症の2 大症状.子宮腺筋症患者の79%が月経困難・過多月経の症状で受診したことを契機に診断されている.
・不妊で受診を契機に子宮腺筋症がみつかるケースは5 . 1%である.子宮腺筋症があっても必ずしも不妊になるわけではないが,体外受精・胚移植患者においては,腺筋症の存在によって,着床率・妊娠率が低下し,流産率が上昇する傾向にあることが最近のメタ解析で示されている.
・流早産の増加も指摘されているが,周産期に関する文献はまだ数少ない.

2 )診察

・内診では,通常子宮全体が硬く肥大して触知されるが,月経直前にはやや柔らかく圧痛を伴うことがある.子宮筋腫は硬い結節として触知され,変性を起こさなければ圧痛を伴わないのと対照的である.ただし子宮内膜症や子宮筋腫を伴うことも多いため,内診だけで診断は困難と考えられ,画像診断と合わせて診断を進める.

3 )血液検査

・過多月経による貧血を伴うことがあるため,血液学的検査にて鉄欠乏性貧血の有無を確認する.
・血清中のCA 125 は子宮腺筋症で上昇することが知られている.子宮腺筋症の診断における感度および特異度がいずれも低く診断マーカーとしては有用ではないが,治療効果判定の1 つの指標として用いることができる.

4 )画像診断

・臨床的診断は経腟超音波検査,MRI 検査により行うことが多い.
・超音波検査による診断の感度と特異度は72%と81%,MRI では,それぞれ77%と89 %であり,MRI の診断における優位性が示されている.
・日常臨床においては,最初に超音波検査が使用される機会が多いので,その典型像についてしっかり理解する必要がある.
・画像診断上での子宮腺筋症は以下の様相を示す.
①子宮筋層の不均整の肥厚
②子宮筋層内の不均質の増加
③筋層内囊胞
④子宮内膜に接した放線状の筋層像
⑤子宮内膜と子宮筋層の明瞭な境界の消失
⑥筋層内血流の増加

5 )超音波検査における子宮腺筋症の典型像

・子宮内膜直下筋層内の直径2~4 ㎜程度の低輝度小囊胞(図35a.c. 白色→)
子宮腺筋症組織そのものであり,異所性の腺管構造物であると言える.
月経期間中やその直後に認められやすい.
ドップラー超音波により血管像を映すと鑑別可能.
・子宮内膜下の高輝度小結節像(図35a.c. 黒色→)
・子宮筋層内を走行する高輝度の直線的な像(図35b. 白色△)
縦走する低輝度の直線像(図35c. 黒色▲)
・子宮内膜の形には影響を与えない境界不明瞭な低輝度領域の形成(図35b.c.白色⇨)
・カラードプラー法にて,子宮筋層内を走行する直線的な血管像を確認することができる(図35d. 黒色➡).子宮筋腫の場合は辺縁に血流を認めるため鑑別可能である.

・子宮腺筋症と最も鑑別を要する子宮筋腫につきその鑑別点について表15 にまとめた.子宮筋腫は,境界が明瞭な腫瘤である.石灰化を認めることもある.これらの特徴があれば子宮腺筋症と鑑別できる.

6 )MRI における子宮腺筋症の典型像

 超音波検査とMRI の子宮腺筋症診断のための画像上の特徴は,多くの部分で同一.
・不均等に肥厚した子宮筋層像,Junctional zone(JZ)12 ㎜以上の肥厚像(図36a. 白色→)
・JZ の厚みが子宮筋層の厚みの40~50%以上に増大していること(図36b.c. 黒色→)
・T 1 およびT 2 強調像の両者において子宮筋層内に存在する小円状のhigh intensity像(図36b.d.e. 白色△)
・T 1 強調像において造影剤を使用した場合,子宮腺筋症組織は,正常子宮筋層や正常子宮内膜と比較し,造影効果が低いと考えられる(図36f. 黒色▲)

7 )病理

 子宮腺筋症病巣は,肥厚した子宮平滑筋内に内膜腺様組織がみられる組織像を呈する.肉眼的には,白色調,弾性硬で境界不明瞭な腫瘤である.近年,腺筋症病巣は線維化を伴うことが指摘されている(図37,38)

8 )画像診断と病理像

 子宮腺筋症の超音波所見とMRI 所見は,子宮腺筋症の病理像を理解しておくと自然に理解ができる.画像所見と組織像の対応につき表16にまとめた.これらの対応を理解し画像診断により組織像をイメージできるようになれば,子宮腺筋症の画像診断は習熟されたものになっていると考える.

9 )分類

 近年,MRI により非侵襲的に腺筋症が診断される機会が増加している.このような背景の下,MRI 上の局在部位の違いによるSubtypeⅠ~Ⅳの腺筋症分類が提唱された.これにより分類されるSubtype には,それぞれ異なる臨床的な特徴がみられる.