3.チョコレート嚢胞患者を高次医療機関へ紹介するタイミング:サイズ・エコー輝度・隆起性病変

Answer: サイズの増大、隆起性病変の出現、内容液が黒くなったら癌化を考える。
45歳以上、嚢胞サイズが大きいほど癌化しやすいという特徴はある。チョコレート嚢胞患者6398人を平均17年間追跡した結果、46人の卵巣癌の新規発生を認め、本邦におけるがん発生率は0.72%であることを報告した。
46人の患者の初診時と同一患者を卵巣癌と診断した時の嚢胞のサイズを測定したのが図1である。チョコレート嚢胞サイズが7-8 cm以上になると病院を受診している患者が多いことがわかる。これらの患者が発がんした時は、多くの症例が9 cm以上に増大し、10 cm以上の症例が最も多かった。多くの症例はサイズが増大することで卵巣癌と判断することができた。逆に、サイズが縮小して癌化した症例はない。

図1

次に、癌化前後の典型例を図2に示す。左のチョコレート嚢胞は、嚢胞内の赤血球にエコーが反射する影響でスリガラス状に見えるのが特徴である。一方、右の明細胞癌に変化した場合には、サイズの増大とともに隆起性病変が出現し、それとともに嚢胞内容液が黒くなっている。臨床的には、サイズの増大と隆起性病変の出現と嚢胞内容液の黒くなる変化に注目してほしい。嚢胞内容液が黒くなるのはドロドロした溶血液がサラサラとした漿液性の液体に変化したためである。この変化の生化学的特徴に関しては今後のシリーズで解説することにする。

図2

図3は別な症例であるが、左のチョコレート嚢胞内容液はスリガラス状に見えるが、癌化した場合には、サイズの増大とともに隆起性病変が出現し、それとともに嚢胞内容液が黒くなっている。さらに、隔壁の不整や肥厚が認められるのも特徴である。

図3

チョコレート嚢胞の隆起性病変はそのほとんどが血腫、凝血塊である。通常は表面平滑でサイズは2 cm以内のことが多い。しかし、図4左のように血腫であっても表面が不整であったり、右図のように2 cmを超えることもたまに遭遇する。もちろんこのような場合は高次病院へ紹介するか、近隣の病院で造影MRIを依頼する必要がある。その結果、血流があると判断されれば、悪性である可能性が高い。

図4

しかし、小さな隆起性病変すべてに対して造影MRIを撮影しても、卵巣癌と診断できる症例は少ない。では、経腟超音波検査で癌・非癌を鑑別することは可能でしょうか。図5の左側は癌の典型を図示したもので、隆起性病変が多発・多形を示し、その隆起性病変も縦長であり、表面が不整であることが多い。これに対して、血腫の場合は、単発・扁平形であり、横長で表面平滑であることが多い。ただ、まれに図4のような症例もいることに留意してほしい。一度、造影MRIを撮影する前に経腟超音波検査で自分なりに癌・非癌を推定してから、MRIの結果を見ていただきたい。この経腟超音波診断法だけでも、癌・非癌の鑑別は90%以上の感度・特異度で可能である。

図5

また、図6に示すように、閉経前であっても癌化する前には月経困難症が改善している症例が多いことも臨床的に特徴である。原因はわからないが、内膜症としての活性を失い、癌化のプロセスを歩み始めたと考えてほしい。

図6