3.何のための超音波検査?

日本の産婦人科では医院、病院問わず、高性能な超音波機器が身近にあることが多いように思います。産婦人科医にとって超音波機器は聴診器にように身近な存在であります。その一方、近年の解像度の高い超音波機器から得られる画像情報は、CTやMRIなどに劣らないものとなってきており、超音波検査によって多くの異常を診断することができます。
 しかしながら、そんな優れた超音波機器を聴診器程度にしか使ってないように見受けられるときがしばしばあります。折角の期会(器械)ですから、もっと有効に使えるようにしたいものですね。
 と、感じたのは、私が憧れる産婦人科の超音波医学の論文を多数出しているイギリスやイタリアの超音波センターを訪れたときでした。さぞかし、ハイエンドな超音波機器が沢山あって、日々高度な診断が行われているのだろうと思って行きました。しかし、超音波センターの中であっても、多くの医師たちがスクリーニングに使う超音波機器は何年も前のもので、日本だったら古いなぁと感じるような器械ばかりでした。センターの中には、数台のハイエンド機があるのみでした。

 日本の産婦人科では診察室毎に超音波機器があるので、超音波センターを利用することはあまり多くないかもしれませんが、海外ではそうではないようです。診察して、超音波検査が必要だと判断されたときは、超音波センター(診断部)への依頼がされるのです。診断部では、何の適応で、何を調べるのか?といった、目的をもった検査を行います。検査後、考えられる診断結果が患者に伝えられ、主治医のところへ報告書とともにもどるのです。 超音波所見をとって、記載し、EBMに基づいた診断根拠を示してレポート化するのです。日本で行なわれているMRIなど画像診断の放射線科医の読影と同じように、検査から超音波診断(臨床診断ではない)までを行うのです。その報告書、他の検査所見などを参考に、臨床診断は主治医が行うのです。

 日本で超音波機器が豊富にあって、身近に利用できることは良いことだと思いますが、若手などを見ていて、超音波でなんとなく見えた超音波所見などに振り回されているように思うときがあります。毎回、検査をする前に、何を調べよう、何をスクリーニングしよう、何と何を鑑別しよう。。。といった目的をもつことが超音波を使いこなすひとつの心構えだと思います。