10.PARP阻害薬による新規卵巣癌治療 ―卵巣癌初回化学療法の変遷―

2018年4月から卵巣癌新規治療薬としてPARP阻害薬が登場した。効能・効果として白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法として使用することになった。

 

<効能・効果に関連する使用上の注意>

1.再発時の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で奏効が維持されている患者を対象とすること。

2.臨床試験に組み入れられた患者における白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法終了後から再発までの期間(PFI)等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。

 

文字通り解釈すると、卵巣癌で初回治療に手術と抗癌剤による治療としてTCあるいはdd-TCを行ったあとに、6か月以上の間隔をあけて再発した場合(プラチナ感受性)に、プラチナを含んだレジメンで化学療法を実施し、奏効が維持された場合の維持療法としてPARP阻害薬を使用することになる。

 

卵巣癌初回化学療法の変遷

図に示すように、1986年にGOG47試験によりCAP療法の優位性が示された。1989年にGOG52試験によりCP療法が、1996年GOG111試験と2000年OV-10試験によりTP療法が、1999年GOG158試験と1999年AGO試験によりTC療法が、2008年JGOG3016試験によりddTC療法が、2010年GOG218と2010年ICON7によりTC + Bev.療法がおこなわれてきた。現在は、TC療法、ddTC療法、TC + Bev.療法が標準治療として施設あるいは患者により使い分けられている。

 つまり、再発まで6か月以上のプラチナ感受性の場合は、図の上段ように再発時もプラチナを含んだレジメンを行っており、施設によりBevをかぶせて使用している。一方、再発まで6か月未満のプラチナ抵抗性の場合は、図の下段ように単剤レジメンを基本とし、腹水・胸水のコントロールのためにBevを使用している。高血圧、タンパク尿や腸管穿孔に注意して使用している。

 

これからの卵巣癌治療の選択肢として、図のようにPARP阻害薬を維持療法として使用することができるようになった。

 

Bevの使用実績

近畿地区におけるBev.の使用状況をアンケートした結果を説明する。対象と方法であるが、

第133回近畿産科婦人科学会の第101回腫瘍研究部会においてBEVに関する発表を行った24施設を対象にアンケート調査を行った。アンケート調査内容は、

 (1)施設におけるBEVの適応

 (2)BEVを使用した初回治療患者の背景や併用レジメン・サイクル数

 (3)BEVを使用した再発治療患者の背景や併用レジメン・サイクル数

 (4)有害事象

調査項目の回答は患者個人ごとの情報ではなく、対象施設における患者数として情報を集計した。アンケートを送信した24施設中、18施設からの回答を得ることができ、回収率は75.0%であった。18施設においてBEVが使用された患者数は合計232例であり、卵巣癌の初回治療患者が107例(46.1%)、再発治療患者が125例(53.9%)であった。

BEVの有害事象であるが、今回のアンケート調査の結果を、GOG218、ICON7、OCEANS、AURERIA試験と比較した。その結果、図に示すように、本邦における有害事象は過去の試験と同等であった。

 

BEVの適応に関しては、図のように初回・再発、手術完遂度、プラチナ感受性などに関わらず使用する施設が多かった。

 

BEVを使用した初回治療患者例は図に示すように107例であり、組織型は漿液性癌が最も多く、進行期はⅢ期が最も多かった。

 

併用化学療法のレジメンはTCが最も多かった

 

BEVを使用した再発治療患者例は125例であり、組織型は漿液性癌が最も多かった。最終化学療法から再発の期間は1~6か月が45.6%と最も多かった。

 

以上から、Bevは、初回・再発、手術完遂度、プラチナ感受性などに関わらず使用されており、特に腹水・胸水のコントロールにはよく使用されていた。

 

BEVはPARP阻害薬とどのように使い分けたらいいのかが、今後の大事なポイントである。